⑱ 頭足類たち
地べたに落ちている、巨大な椎茸の傘のうち、よく見ると一つだけ、金色のモノが有った。
「アレを拿捕しましょう。きっとコマンダーの船よ。」
バステト嬢がアヌビスに提案した。
犬王の返事を待たずに、彼女は、その周りを電磁防壁…いわゆる結界のようなモノで覆ってしまった。見ていると、他の傘からは、次々にタコたちが出て来て、池の方へと逃げて行く。
「アイツらは…追わなくてもイイんですか?」
犬王が尋ねる。
「何よ。無闇に殺生するなと言ったのは、貴方でしょ?それにアイツらには、宣伝してもらう役目があるのよ。」
「…何ですか、ソレは?」
「地底世界には、恐ろしいヤツが待ち構えているから、攻め込むのは無理ってね。」
「ああ、なるほど。」
やがて、城から捕虜を連行するメンバーがやって来て、金色の傘ごと、タコたちを運んで行ってしまった。この後彼等には、城で尋問が行なわれるのだろう。願わくば、ソレが人道的なモノで有りますようにと、犬王は祈るばかりであった。
それを見送りながら、黒猫嬢が犬王に話し掛ける。
「ねえ、アヌビス君。」
「何です?バステト嬢。」
「ニンゲンの世界で、最近囁かれている、地球温暖化現象で、一番得をするのは、一体誰なのか分かる?」
「…ちょっと、分からないですねえ。」
「地球温暖化で南極や北極の氷が溶けて、海が広がり、やがて全ての陸地が、水の底に沈むと…喜ぶのは海棲生物たちよね?」
「ああ、確かに…。」
「…だから私は以前からずっと、頭足類…特にタコの仲間が怪しいと思っていたのよ。」
「でも、タコ壺にうっかり入って捕まるような、マヌケなヤツも居ますよね?」
「あら、ハダカ猿族だって、ピンからキリまで居るじゃない?それとおんなじよ。」
「なるほどね。」
「私なら、頭足類の地球外生物由来説に、一票入れるわ…都市伝説扱いらしいけどね。彼等は今この時も、海の底で密かに、地球征服を目論んでいるのよ。」
何故か瞳をキラキラさせながら、黒猫嬢はそう言った。
「何だか嬉しそうですね?」
思わずツッコミを入れる犬王。
「だって…ワクワクするじゃないの。全力で闘える相手が、この世に居るなんて、素敵な事でしょ?もしかしたら、生涯の好敵手になるような者が、現れるかもしれないし…。」
「オカシイなあ。猫族は本来、そんなに好戦的じゃないハズなのに…。」
「猫にだって、ピンからキリまで居るのよ!因みに私はピンの方だからね!」
「はい、はい。もう帰りますよ。」
何はともあれ、こうして、二週目の月曜日の担当は、終了したのである。




