⑰ H.G.ウェルズ
ソレはまるで、昔々、H.G.ウェルズというイギリスの作家が書いたSF小説、「宇宙戦争」に出て来る、火星人の乗り物のようだった。パッと見て、30台くらい居るが、まだまだ後から出て来る。明らかに侵略者だ。
すっかり水から上がると、その細い8本の金属製の脚の長さもおよそ10m程に見えた。
黒猫嬢と犬王が、どうしたものかと迷っていると、二人の左腕のデバイスに通信が入った。
「その種族は敵対勢力です。殲滅して構いません。」
ウアジェト女王からのお許しが出た。コレで思う存分ヤレそうだ。バステト嬢はほくそ笑んだ。
「じゃあ、行くわよ。準備はイイかしら?アヌビス君。」
ソレを聞いたアヌビスは、ジャンプスーツの左胸のボタンを押した。すると、小さく収納してあったナノシステムが展開し、身長2mの人型スーツになった。古代エジプトで身に着けていた、例のアレである。
犬王本体は、その頭部の仮面の中に収まるサイズなので、コレはモビルアーマーというより、モビルスーツに近いモノと言えるだろう。
そして彼も腰の左側に、オリハルコンの剣をひと振り、下げている。
ソレを確認した黒猫嬢は、先陣を切って敵に斬りかかる。オリハルコンの剣は、たいていの金属より硬いのだ。ソレに、彼女のチカラを上乗せしているのである。この世に切れないモノは……まず、無い。
敵はビーム兵器を使用し始めたが、彼女の電磁防壁も完璧だったので、ダメージはゼロだ。もちろん、同じ装備を犬王も使っていた。
二人はあっと言う間に、その辺りに上陸していた敵の乗り物の脚を、すっかり切り落としてしまった。
地べたには惨めにも、巨大な椎茸の傘だけが残された。しかし、中から乗組員が出て来る気配が無い。
バステト嬢は、おもむろにその一つに剣を突き刺し、そのまま傘のまわりを一周した。そして、まるで缶詰のフタを開けるように、その天井部分を持ち上げたのだった。
果たして中からは、水が溢れ出てきた。
そして船内にのたうち回るのは、体長2m程の頭足類たち……所謂タコたちだった。彼等は慌てふためいて、池の中に逃げて行く。
「……やっぱりね。」
バステト嬢が呟いた。
「まるで予想してたみたいなお言葉ですね。」
アヌビスが言う。
「何となくよ。海の知的生命体と言えば、イカやタコなどの頭足類、またはイルカやクジラなどの海棲哺乳類だからね。」
「……なるほど。」
「海棲哺乳類なら、シャチ以外はそれ程好戦的でもないし、征服欲も強くない。対して頭足類たちは、正直な話、ナニ考えてるのか、分かんないからね。」
「……確かに。」
「それに一説よると、ヤツラは地球由来ではないかもしれないのよ。」
「えっ、そりゃあまた……飛躍した説ですね。」
「まあ実際、彼等はこうして隙あらば、侵略行為をしている訳だしね。」




