⑮ 詳しい記録
以下は雪村たちが、後に機長から聞いた、事件の詳しい情報だ。
不時着した機体はボーイング777-2H6ER。
マレーシア航空370便だった。
乗員は機長以下12名。
乗客は、次に記載した227名だった。
中国人………………………152名
マレーシア人………………38名
インドネシア人……………7名
オーストラリア人…………6名
インド人……………………5名
フランス人…………………4名
アメリカ人…………………3 名
イラン人……………………2名(盗難旅券を使用)
カナダ人……………………2名
ニュージーランド人………2名
ウクライナ人………………2名
オランダ人…………………1名
ロシア人……………………1名
台湾人………………………1名
香港人………………………1名
因みに二人のイラン人は、亡命目的だったらしい。
テロやハイジャックの類は、無かった。
同機は西暦2014年3月8日00時41分に、クアラルンプールから、北京に向けて出発した。
01時30分を過ぎた頃、ベトナム南部の海上で、突然、巨大な鳥に遭遇、接触した。
この際、翼の一部のフラッペロンという部品と、エンジンの一部を破損した。
恐らく相手は、例のケツァルコアトルスだろう。
彼女は、この辺りに有る空中のポータルを、多分ソレと知らずに、いつも利用していたのだ。
(第14巻 参照)
よってコレは、双方にとって不幸な事故だと言えよう。
その後、機長は、何とか機体の態勢を立て直そうとしたが、ソレも叶わず、気がついたら見知らぬ空間に突入していた、という訳だった。
雪村たちにとっては、機体の出発日時が、未来の日付だった。やはりこの地下世界は、あらゆる時空を繋いでいるようだ。くれぐれも、今後の扱いは慎重にしなければ…。雪村は改めてそう思ったのだった。
可哀想だが、乗員・乗客の239名は、全員遭難者として、元の世界では死亡扱いになるだろう。
弓子も香子も、避難民たちを、クアラルンプールに戻すべきだと言った。雪村ならソレが出来るだろうとも…。
もちろん、出来るか出来ないのか、と問われれば、自分なら出来るに違いない。たった200人か300人のニンゲンを元の時空に跳ばすくらい造作も無い事だ。雪村はそういう自負もある。
しかし我々は、この地下世界の平和も、守らなければならない。もう、サン・ジェルマンのチームも、"コチラ側"なのだ。
例えそれが、アラハバキ一派やナチスの軍勢のような、危険なヤカラではない、一般市民が相手でもだ。
世界のバランスをとるとは、そういう事なのだ。
こうなると、いよいよナニが正義なのか、分からなくなってしまう。
ますます悩める、真田雪村なのであった。




