⑭ マレーシア航空370便
見ると、件の機体からは、脱出装置を使って、非常出口から乗客たちが、次々に滑り降りて来るところだった。中国人が多いようだ。後はマレーシアや、インドネシアの人々。その他色々な人種が居る。
ウアジェト女王の城からも、何人か出て来た。
例の背の高い金髪の、ニンゲンの皮を被っている。やはり初心者相手では、トカゲニンゲンの姿は、具合が悪いからだろう。
彼等は避難する人々を、どんどん城内に案内していた。雪村たちも、ついて行く事にした。
乗客たちは皆、一階のホールに集めれていた。
やがて中央の階段から、ニンゲンに化けたウアジェト女王が、降りて来た。
すると、200名ほどの避難民の中から、60歳前後に見える、制服姿の人物が前に進み出た。恐らく彼が機長であろう。
「この度は、急な避難民の受け入れを、ありがとうございます。私は機長のザハリエ・アフマド・シャーです。」
彼の言葉は英語だった。
女王は、チラリと雪村の方を見た。
雪村はヘブライ語で、「通訳しますよ。」と言った。
それで安心したように、彼女は話を始めた。
雪村が英語に同時通訳する。
彼女の話の概要は、以下のようだった。
「私はこの世界のマスター、ウアジェト女王です。ここは、あなた方の居た場所から、遠く離れています。私たちは、あなた方全員を、難民として受け入れる事が可能です。ただし、機体を修理して、元の世界に戻す事は出来ません。ですから、私たちと共に、ここで生きていただく事になります。」
この話が伝わると、乗客・乗員だった人々に、一斉にどよめきが走った。誰もが皆、家族の元に帰りたいのだろう。無理もない事である。
しかし、余りにも人種が雑多すぎる乗客である。
無事に返したら、この世界の秘密は守れないだろう。
そして機体の修理は、恐らく女王たちにとって、ローテク過ぎて無理なのだろう。彼女の言葉に、嘘は無いと雪村は思ったし、テレパスの弓子もそう言った。
その後、避難民の人々は、関係者ごとに分けられて、それぞれの部屋に案内されて行った。みんな命は助かったが、二度と家には帰れない。
「彼等が落ち着いたらまた、根気良く事情を説明してあげる必要が有るわね。」
香子がそう言った。三人とも、何とも言えない気分だった。




