⑪ 森のポータル
「残念だわ。この子たちとは、意志の疎通が図れない。」
由理子は、そんな事を呟いた。
実を言うと、鷹志はずっと以前からそんな気がしていた。
昆虫を始めとする、所謂外骨格の虫類たちは、甲殻類を含めて、精神構造的に、我々脊椎動物と相容れないモノが有ると、常々思っていたのである。
ソレは、イカやタコなどの頭足類より、更に難しく感じられるのだった。
宇宙を探索する、某SFドラマで昔語られていたように、彼等は、個々の意志よりも、集団の意識を優先するような…そんな印象を受けるのである。
ソレは、例え昆虫どうしの争いの場面においても明らかで、一匹のスズメバチより、集団のアリの方が強かったりするのである。
残念ながら、我々には決して彼等の考えは読めない。
そして恐らく彼等も、個人の考えを尊重する我々の事は、理解不能であろう。
だから流石の由理子のチカラも、及ばないのが当然だと、鷹志には思えたのだった。
むしろ鷹志は、外骨格類の祖先は"地球由来ではない"のでは?とさえ、常々疑っていたのである。それはクマムシなどの環境適応性を見ても、明らかなのである。
そんな事を考えながら歩くうちに、鷹志と由理子は、とある穴の前に辿り着いた。
どうやらコレが、先程ケツァルコアトルスに教えてもらった、ポータルの入り口らしかった。
二人がおもむろに中に入ろうとしたその時、逆に中からコチラへ出て来るモノが有った。
最初に、大きななハサミが二つ見えて来た。しかしそれは、ザリガニでもなければカニでもない。やがて尻尾の先まですっかり全貌が見えると、それは、ニンゲンサイズの巨大なサソリだという事が分かった。
ソイツが尻尾の毒針をチラつかせながら、次々に穴からコチラに出て来る。
やがて二人は、穴の前で、10匹程の大サソリたちに、すっかり取り囲まれてしまった。
「友好的には…見えないよねえ?」
鷹志はそう言いながら、隣の由理子を見た。
由理子も困り顔だった。
「…彼等は"中に入れ"と言っているわ。」
「…罠のニオイがプンプンするなあ。」
「それでも…行くしかないでしょうね。」
「ユリちゃんは勇気あるなあ。」
鷹志は半ば呆れながら、由理子と一緒に穴の中に入って行く。すると後ろから、ゾロゾロと大サソリたちがついて来た。
もしも前からもサソリが出て来たら、文字通り" 挟み撃ち"だなと、彼はふと考えて、少し笑ってしまった。




