⑩ 生き残り
「…ちょっと待って。アレは…何かしら?」
由理子が、ふと何かに気がついた。
彼女が指差す先、森の中央辺りの、ひと際高い木の上に、何やら白っぽい球体のようなモノが、いくつか見えて来た。
「あれは…卵だね?それにしても大きいな…。」
鷹志にも、ソレと分かった。
樹上に大きな鳥?の巣らしきモノが有るのだ。
すると…親は一体何処に?
彼がそう思った瞬間、突然、窓の外が薄暗くなった。
彼等の乗る円盤の直上に、ナニかが現れたのだ。
「やっぱりケツァルコアトルスだわ!」
由理子が嬉しそうに言った。
彼女は、操縦士に円盤の上部ハッチを開けて貰い、いそいそと外に出ると、早速その大きな鳥とコンタクトを取り始めた。
もちろん、今目の前に居るのは、彼女が友だちになったモノとは、違う個体だろう。しかし彼等には、友人の情報を共有する能力が、どうやら有るらしいのだ。
由理子と怪鳥との間で、その後しばらく、無言の遣り取りをしていたようだった。いわゆるテレパシーというヤツである。コレも鷹志にとっては、うらやましいチカラだった。
そんなモノがみんなに有ったら、世界はとっくの昔に、平和になっているだろうに…いや、むしろ、もっと揉めるのか?鷹志は一人で苦笑いしていた。
「O.K.だいたい分かったわ。」
そう言いながら、上部ハッチから戻った由理子は、操縦士に頼んで、近くに着陸してもらう事にした。
「森の中にも、ポータルが有るみたいだから、見に行きましょう。」
彼女に誘われるままに、鷹志も船を降りた。
操縦士は、行きたくないと言った。
彼は、船内で留守番するらしい。
そんな訳で、二人で歩き出した。木々のあちこちから、様々な生き物の鳴き声が聞こえて来る。それに一段と湿度が高い感じになり、何だかジメジメしている。まるで、ちょっとしたジャングルだ。こういう場所にはきっと…。
鷹志がそこまで考えた時、目の前にソレは現れた。
ただ思っていたのとは、少しばかりサイズが違っていた。
まずはダンゴムシ。ただし、まるでダイオウグソクムシのように、無駄に巨大だ。
次にムカデの仲間だろうか。こちらも、下手なアナコンダなんかよりデカい。
そして、頭上には猛禽類サイズのトンボだ。どれも子どもの頃、学研の図鑑で見た事のある、"大昔の生き物たち"だった。
確か時代は、3億年前の"石炭紀"だったか?その頃に繁栄した昆虫たちの生き残り、という訳なのだろう。
そんな事を考えながら、鷹志は並んで歩く由理子の顔を見る。どうやら彼女は、困惑しているようだった。




