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山麓の目標


 私達はゆゆがマークした、桐山と呼ばれる医師が経営していると言う病院の、動くことのない自動ドアを力一杯引いて中に入っていった……中に入ると、照明の明かりが一切照らされておらず、物静かで水が垂れる音がハッキリと聞こえている………。 


 目の前に唯一光が見えてきた部屋に私は剣を構えながら行くと、医師らしき陰は見えずにただ白い机と照明スタンドが置かれているだけだった……。


 「……手遅れだったわね……」

 「いや、ある意味で手遅れやない……山麓さん、聞こえとるか……?」

 「はい、ゆゆさんが示した目的地へ到着したようですね……」


 山麓は、浩司の端末を通しながらこちらの状況を確認した……すると、みかんは白い机の上にある小さな薬の瓶を手に取った……。


 「なんやコレ……? 見かけへん薬やな……あんまり色々と書かれてへんし……」

 「ちょい、みかん! あんまベタベタと触んないといてな!」

 「私がちょっと調べるわね……!」


 セナはスキャナーアプリを使って、みかんが手に取っていた薬瓶をスキャンしていった……その間、みかんは机の隣に何かあることに気づいていった……。


 「積まれたカゴになんかある……!」


 みかんは積まれたカゴを両手で掴んで、持ち上げていった……持ち上げた空のカゴの下に注射器がズラッと並んであったのだ……。


 「これは……盗まれたワクチン……?」

 「……で、間違えございません……しかし、なぜこんな所へ……?」

 「この薬に含まれている物質、『トロイの木馬』因子が確認されたわ!」

 「とろいの……なんや……?」

 「みかんに分かりやすく言うとな……『大企業の荷物を運んだ、配達員に扮したスパイがこっそりと企業情報をばら撒き、破産を追い込ませる』ってやつかいな……」

 「リト……随分とリアルすぎるが上、分かりづらい例え方やな……『トロイの木馬』因子は詐欺師と同じやで! 何にも害がないあらへんように偽かけ、裏では情報をかっぱらう上、コンピューターを壊してまう『マルウェア』言う奴や!」


 瓶に入っていた、錠剤には『トロイの木馬』因子が含まれていることがセナから告げられた……!


 浩司が言う通り、『トロイの木馬』は何も害がないようなファイルやアプリに偽装し、裏ではスクリーンの盗撮、パスワードや個人情報を抜き取られてしまう、マルウェアと言うコンピューターの安全を脅かす有害なプログラムだ……。

 トロイの木馬はアンチウィルスソフトウェアやメディアプレイヤーなどの名に偽装し、ダウンロードやインストールを促す。

 対策としては、マルウェア全般に言えることだが、怪しい広告やサイトなどにアクセスしない他、市販のセキュリティソフトを導入する事を推奨される……。


 山麓の話によると、『ダークウェブ』の技術では、人類にも害を及んでしまうマルウェアも出回っており、日用品にウイルス因子を仕込ませたり、商品の偽装品を買わせて被害者をウイルスの被害に遭わせたりとウイルスにされてしまう物も存在しているらしい……。


 ラッキーは診察室の角にある円柱のボトルを発見して、水が溜まっている事が分かったらしく、白い机の上へと持って行った……。


 「雨漏りの水がボトルにあるぜ! これに入れてみろ!」

 「おう」


 リトは白い机に置いてあったピンセットで薬瓶を摘まみ、ラッキーが持って来たボトルに一錠を入れた……しかし、丸い錠剤は水が沈んだまま溶けるだけで白く濁るだけだった……。


 「……何も反応しない……」

 「ご提案ですが……その水に、ワクチンを一滴垂らして見てください……」

 「ワクチンか……? 一滴垂らしてみるぜ!」


 ラッキーはワクチンが入っている注射器をほんの少しだけ、円柱のボトルの口に注入した……すると、白い錠剤から考えられない禍々しい色に変化していった……!


 「うわぁ変わっとる!!」

 「やっぱり、ウイルス因子予防ワクチンにのみ反応プログラムが仕込まれているようですね……この仕組みは『ダークウェブ』から持ち運ぶのは許されていない技術のようですが……」

 「……知ってるの……?」

 「かつて、ノック・ゼクスが倒産に追い込まれた頃でしょうか……内通者が『ダークウェブ』からウイルスを持ち込み、我が社のコンピューターをウイルスに変えていき、資産や企業情報をばら撒いていきました……その上で、証拠も何一つ残されておらず、前の最高責任者は冤罪にも関わらず、懲役を喰らいました……」

 「その言い方やと、前の最高責任者はええ人やったの?」

 「はい……当初は行き場を失い、放浪としていた私を受け入れてくれました……自我に芽生えた頃から親の顔も知らずに軍隊へ入りざる負えない状況でした……血を飛び交う中、私は上の命令により、逃げることに必死でした……「もう、小さき住処で大きな戦は避けよ」と言い残しながら……」

 「……」


 山麓は通信先でも、目をつぶりながら拳を握りしめる音がしてくるのだ……。


 「そこで、逃亡していた最中に私は、一人の人間に出会いました……そう、まだ旧名社だった頃のノック・ゼクスの前の最高責任者でした……彼は大らかな性格で社会経験が浅かった私を優しくも厳しくも、社員として受け入れてくれました……もし、世界全体が許せるのなら……その者をあの世に送ってやりたいぐらい、やるせない気持ちでいっぱいです……しかし、この世界は私刑をしてしまっても、なんも成果が得られる事はありません……ただ前科が手元に残ってしまうのみです……」


 山麓からは冷静にながらも、怒りを我慢しているような言葉を発していた……浩司は山麓の悲しみを分かっているかのように、自分の胸をさすっていた……。


 「山麓さん……気持ちはわかるんやけど、あんたまで法を犯したらこれまでの成果がパーになってまう……俺の親父も、何も悪かないのに無責任に悪名が広まり、俺らを別の所へ引っ越す羽目になったんこと……でも、今はこうして幼馴染のみかんとリトと、フューチャーファイターズを通して知り合った、イリルとセナ、ラッキーに羅城と祐郎の爺さん……あっ爺さんはガキん頃に知り合ったな……俺は少なからずとも協力関係がおる事で、親父の冤罪を晴らすだけやのうてこの『第二の地球』の文明に興味を持つが出来たんや……あんたも……今のノック・ゼクスをええ方向にしたいんやろ? それなら、あんたらしいやり方でノック・ゼクスを立ち上げて行けばええんちゃう?」

 「……」


 浩司は優しい声で山麓の顔をじっくりと見た……浩司の言葉を聴いた山麓は沈黙の後、長い鼻息を吐いた後、普段の冷静さを取り戻したようで――


 「確かに浩司さんの言う通りですね……今までは『フィーア星人』の件で色々と言い合いで、時間のみが過ぎ去っていく状況でした……しかし、現在はアサガオ府が危険にさらされる状況下で、衝突している場合ではございませんね……」

 「ああ、共にごっつい胸糞悪い状況を晴らしたるで! 俺らにとってはあんたの手が必要なんや! 急いで、位置を突き止めるで! 多分、俺らが来ることを察したから、前もって準備したんやと思う」


 浩司は改めて、ノック・ゼクスの最高責任者である山麓に気合いが入った眼差しで協力を申請した……山麓は深くお辞儀をした……。


 「でもよぉ……桐山って野郎は何処にいるんだ?」


 すると、セナは私達を呼び寄せるかのように手を振り、部屋の壁の方へと指をさした……。


 「……? みんな……スキャンした時に出てきたんだけど……壁にウイルス因子で書かれた文字が浮かんでいるわ! なになに……?」


 セナが指さした所へ調べると、禍々しいウイルス因子で書かれた文字で壁に書かれていた……普段は人の目では視えないが、スキャンアプリのおかげで私達に見えるようになっている……。


 ホンジツ アサガオ御所 タト ホクホクトウ 


 「アサガオ御所言うたら……わびさびな文化がいっぱいあるところやろ~? 観光客が多い所で怪しい奴が近寄るんかいな……?」

 「外の北北東って書いてあるわ」

 「睡蓮さん、私はイリル様方と合流いたします。羅城さん、申し訳ございませんが一時的に本社の防衛をお願いいたします……ごほん……アサガオ御所には一部未完成な部分がありまして……恐らく、桐山さんはそこへ何者かと取引しているでしょう……その場所に少し心当たりがありますので……マーカーに示した場所へと合流いたしましょう……」

 「ああ! あの三人の身もあかん! 急いで行こ!」


 私達は速やかに病院を後にして、リトは携帯式テレポーターにアクセスして、キューブ状の機械を目の前に投げていって、テレポーターを出し、一気にアサガオ御所へと向かって行った……。



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