陽人の疑問
レイト地方のアサガオ府の建物を次々と通り抜けながら飛びに行っている、沢山の木が見えるその下に、空洞化している穴があった……白い車が高速でその穴に入っていったら、アスファルトの地面で薄暗い中、影側にライトが点いているそんな空間のなかで、長身で肌が焼けた男性がステアリングを握りながら、一人の部下に話しかけていた……。
「『レイトミライフェスティバル3020』、開催まで一週間も経ちましたね……」
「はい……所で、陽人様……本日話した山麓様の提案をどうお受け取りいたしましょうか……」
「山麓君がおっしゃってた開催時期に関する提案の事でしょうか……山麓君には大変申し訳ございませんが、開催時期を変えることは難しいとお伝えいたしましょう……『レイトミライフェスティバル3020』の前売りチケットは販売初日にも関わらず100万枚以上の売り上げを記録しておりまして、アクセス集中やサイバーダウンなどが頻繫に起こっているレベルに沢山の方々が申し込んでいます……今更、開催時期の変更は来場者様の期待を裏切る事や運営の対応に大きく影響が出てしまいます……どうしても、外部の者による攻撃についての対策なら、我々が体制を強化すること他考えられません……」
陽人は低めな声で、部下に対して、どうしても開催時期をずらすことは出来ないと首を横に振っていた……そして、白い車はうす暗い空間から抜け出して、再び光が差して木が並びに生えている道路の上を走っていると、部下は山麓に対して、やや鋭い目つきをしていた……。
「それにしても、山麓様はやたらと来場者重視の思考をお持ちでございますが……陽人様は『ノック・ゼクス』や山麓様をどのような目でご覧になられるでしょうか……?」
「ノック・ゼクスは基本的に、誠実で安心できる企業だと確信できます。最高責任者である山麓様に関しては、目標達成の為に成果を積み重ねただけあって、部下からでも信頼できる方だと思いますよ。ただ……唯一の不満点を挙げるとどこからか、過去の事に捕らわれすぎる点でしょうか……『レイトミライフェスティバル3020』は『ミライとは何か』がテーマなのに……」
「確かに……山麓様は口を開くとブラック企業の頃だった兄弟会社の『タイムイズマネー社』やノック・ゼクスの一人の社員の事や内通者について話していましたね……彼にとっては大きな影響だったと見られます……」
「……もう少し、未来に目を向ければ……おっと、少し口を滑らせてしまいました……」
陽人は小声で呟きながら、森林を抜けた先に建物が沢山ある通りへと、飛びだって行った……目標は『レイトミライフェスティバル3020』会場へと道中に寄り道を一切せずに走っていった……。
――その一方で……。
私達は『ノック・ゼクス』の最高責任者である『陸奥川 山麓』の依頼で医療品保管ルームへ、ウイルス因子予防ワクチンを盗んだ犯人についての手掛かりを集めていた……。
そこで、私達はズィーヴェン星人とウイルス先遣隊の三人組の襲撃に遭うも、ウイルス三人組がズィーヴェン星人を倒してくれた為、大事には至らなかった……そして、紅葉家の娘の『紅葉 ゆゆ』が私達をベンツ車に乗せて、ノック・ゼクスの本社へと迎えに来てもらえた……到着した時、私達はすぐさまに山麓と合流して、会議室へと向かって行った……。
五百子は山麓に映像データが入っているメモリーを片手で渡していた……。
「改めて、手掛かりを掴んでくれてありがとうございます。まさか、我々のセキュリティシステムを突破してしまうとは……恐らく、『ノック・ゼクス』の事を知り尽くしている者だとより断言できます……」
「証拠を集めたのはいいんだけどぉ~……もっと肝心な所が出てきてないよ~~……犯人は誰なのかとか奴は何処にいるかとかさぁ~」
「防犯カメラの映像を詳しく視ると……姿がウイルスらしき陰なのは問題ありませんが、その後……ウイルスから白い白衣を着た人間の姿へと変わっていきました……しかも、灰色の車もあるという事で犯人は一人じゃないと断言できます……」
山麓は大型のモニターを通じて、監視カメラに映ったウイルスらしき陰や車を特定していた……どうやら、隠していた駐車場のカメラの方は無事だったらしく、犯人の手掛かりが掴んでいったらしい……。
すると、五百子は目を丸くしながら話していった……。
「あっ……よくよく見たら、調査員チームがよく使ってる車じゃんか~! でも、今すぐ行くってなると時間が……」
「それなら、ウチにお任せくださいな。随分と前、山麓はんから調査員チームに3人程、我が家の推薦のSPはんをいくつか送り込ませたえ~~。たった今、連絡を頂戴いたしましたで~」
ゆゆは端末を操作して、調査員チームにいるSPとの通信を繋げていった……すると、落ち着いた男性の声が聞こえてきたのだ……。
「お初目にお目をかかります。私は警視庁警備部である『黒沢 十院』と申し上げます。以後、お見知りおきをお願いいたします」
「ど、どうも……」
普段はレイト地方国家のSPに勤務している『黒沢 十院』、今回はゆゆの提案により調査員チームの警備体制を高めるため、ゆゆの親に依頼したのだそうだ……十院は私達に聞こえる程度の範囲の声量で情報を提供する……。
「現在、状況により音声のみで伝達いたします。実は、不審な行動を取っている調査員チームがいる事が判明しました……合計で四人……のちに三人は「ノック・ゼクス産のウイルス因子予防ワクチンは無意味だと」否定的な言葉を使って、調査員チーム内のノック・ゼクスに対する評判を落そうと企んでいる可能性があります……」
「……!」
私はアサガオ府のナデシコ通りに歩いていた時に起こったことを話した……調査員チームが三人組、山麓にクレームを言った後、羅城がやってきて止められ、捨て台詞を吐きながらどこかへと行ってしまった時の事を説明した……ラッキーは目を半開きにしながら――
「あのクレーマー三人組か? ワクチンであいつの友人がウイルスになったか否かで、山麓に文句ばっかり言ってたぜ?」
「面識があるご様子で……そして、もう一人……調査員チームの医師である、チームから『桐山先生』と呼ばれる者ですが……最近は忘れ物を取りに行ってくると言いながら、拠点に居ない時が多く、現在は他の医師がメインに活動している状態です」
「桐山殿……彼は調査員チームの中でも温厚で気前が良く、腕の立つ医師だ……彼は浩司やリトとも関係も良く、チーム内では大出世すると予想されていた程だった……しかし、何故この様なタイミングで姿を消してしまったのだろうか……」
羅城はその医師の事を顔が浮かんで、眉が垂れ下がったような表情をしていた……その、桐山はフューチャーファイターズでも信頼していた医師なのだろう……十院は「しばしお待ちを……」と言いながら、ゆゆの端末に着信音を鳴らした……。
「マップに示された場所が、彼が経営しているという病院の場所です……くれぐれも用心を……では、引き続き警備に戻ります……失礼いたします」
「ありがとう……そっちも気をつけてね……」
「おや……? 浩司からか……?」
十院は丁寧でも速やかに通信を切った……それと入れ替えに、羅城の端末から浩司から通信が繋がってきた……。
「羅城さん……おるかいな……?」
「この声は、浩司か……? 随分と慌てた様子だが……何が起きた……」
「調査員チームのメンバーのうち三人がアサガオ府に行ったっきり、戻ってこられてへんのや……」
セナは浩司が言ってたことに対して、目を見開いていた……。
「きっと……その桐山っていう人の場所へ行ってるばずよ……!」
「ああ、俺とリトとみかんでそっちに向かっとる。俺らも何処へ行くかは検討ついてっから、そこで合流せよ!」
「了解した……では、早速――」
「待って……ここは私達が行って来る……羅城は祐郎に連絡を……」
羅城は剣を構えながらも向かおうとした……しかし、彼女は戦ったばかりな上でエースファイターという身分である為、万が一怪我でもしたら……私は羅城に、祐郎に連絡するように説得を試みる……。
「了解した……しかし、君も先ほど戦ったばかりで、大丈夫なのか……」
「うん……思い出した言葉がある……李徴からの言葉で、『違う役割を果たすことで、我々は世界の平和を維持できている』……今は私とセナとラッキーが浩司達と行動するべきだよ……」
「……いかにも師匠が言いそうな……いや、師匠の口癖だったな。わかった、オペレーターに今すぐ連絡しよう……イリル殿、気をつけてくれ」
羅城は私達を期待の目で見ながら、ノック・ゼクスの本社に残り、すぐさまに端末を操作した……そして、私達は本社を後にし、浩司達と合流しにゆゆが送ってくれたマーカーに示された場所へと向かって行った……。
――その一方で……。
メイキョウ地方、ニュートラルシティにあるフューチャーファイターズの拠点内の何処かの部屋……イリルがレイト地方に旅に出てから数週間、戦士達の状況は結構変わっていた……。
シャドウ・コロナが消滅してから一か月を経とうとしていた、メイキョウ地方では、それぞれ戦士達はどれが得意か、どれが出来るかを自身で分担できるようになり、仕事や依頼をスムーズに進んでいたのだ……。
そんな中で、赤色のパーカーを着ていた青年が、部屋に戻ってきてテレビを点けようとしていた所、部屋に異臭に見舞われて、部屋中に臭いを嗅いでいた……。
「……? なんか変な臭いがするなぁ、汚い雑巾みたいな……」
駆は原因を突き止める為、推測していた……今日までの出来事を振り返りながら手を顎に当てながら考えていた……。
(……ベッドのマットはこの前干しただろ……? スナック菓子もつまみ食いしてないし、掃除も昨日したばっかり……ウルが嫌いなニンニクと納豆も食べていない……異臭を人一倍気にするからな……どこだろ……?)
そう考えていると、ルームメイトである狼獣人が帰ってくる足音が聞こえてきた……。
「駆……? 何してんだ……ってくせぇ! なんだよ、この異臭は……?」
「そうなんだよ……さっきから急に……」
「わりぃ……ちょっといいか?」
「えっ……?」
ウルは特技である嗅覚を使って、異臭の原因を突き止めた……すると、駆が今着ているパーカーに鼻を近づけていて指をさしていた……。
「ここか……お前、こないだならず者達を退治しに行った時、このパーカー来てただろ……? そん時、ならず者の汗くせぇ臭いがついてたんだ……! 洗濯するから、それをちょっと貸せ」
「ああ、うん……ありがとうウル……!」
「これぐらい大したことねぇ……ちょっと洗濯してくる……」
ウルは駆のパーカーを洗濯しに、洗面所へと向かって行った……駆は代わりのパーカーに着替えた後、一気に力を抜かしながらソファに腰を下ろした……そして、リモコンを操作したら見覚えがある顔が――
「ニュース速報です。本日未明に、レイト地方に――」
「……? ええ……?!」




