〈二章アウトロ:前編〉大魔法使いが解けない問題-4
ゆっくりと怪しい部屋の引き戸を、ガタつく音を立てながらも引いていった……すると、壁にお札を貼っている部屋に、四角い戸台に紫色の水晶が赤紫色のほのかな光を照らしながら、禍々しいオーラを纏っていた……。
「水晶……?」
「間違いなく、悪霊が閉じ込められているはずよ……! 封印が解け始めようとしているのかしら……?」
「可能性としては……おや……?」
治隆は水晶をじっくりと見たところ、首を傾げていった。水晶は間違いなく、禍々しい雰囲気をしており、赤紫色に輝いているのだが――
「妙ですね……封印が解けようとすると、この部屋から外へ、強い邪気を放つのです……しかし、それらしき状況は確認されていませんな……結界の寿命は約100年が限度ですが……何故か23年しか経っておらぬのにも関わらず……」
「23年……?!」
スフィーリアは突然、杖を繰り出し、後ろに向かってマジックを唱えていった……!
「そこだっ!!」
霊を封じ込めるマジック、『シルズ・スピリッツ』を唱えて、何かを封じ込めていった……! 封じ込めたのは、浮島に現れる悪霊らしからぬ雰囲気の、どこからかの壁画に描かれた人物のような魂だった……壁画のような魂は、スフィーリアが唱えたマジックに捕らわれるも、余裕の表情を見せていた……。
治隆は突然として出現した魂に対して、目を見開いた……。
「なんと……?! もう一体悪霊がいたとは?!」
「よく私が分かったな……」
謎の魂は、マジックで身動きが取れない状態にも関わらず、嘲笑っていた……スフィーリアは片手に持っていた杖を光らせ、宙にいる魂を封じ込めたまま、眼を鋭くしながら大声で話した……。
「こんな事をするのは、お前しかしないって思ったんだよ! 悪霊の封印が解けるにしては、あまりにも早すぎたから!!」
「この神社の手掛かりを掴んだかいがあったな……長年に渡り、『大魔法使い』に重罪として私を壁画に閉じ込めていった……所が、ある者が私に解放を許したのだ……! しかし、今のままでは機械程度しか操れない……私の力を完全に発揮するには、この神社の宝が必要なのだよ……」
魂は、土台にある水晶を物欲しそうにしながら、宙にとどまっていた……ラッキーは咳き込みながらも、魂の方を見る……。
「うえっ!! なんだこのドロドロしたの! 気持ちわりぃぜ! こいつが幽霊の正体か?!」
「10割、そのようですね~~?」
「……つまり、誰もいないはずの笑い声が聞こえたり、タンスを勝手に開いたり、この辺りのロボット達を操ったりしたのは全てあなただったのね? この水晶が狙いなの……?」
「水晶……? 私が今、欲しいのは『中身』さ……」
「中身……? 悪霊のこと……?」
「ここは、浮島やのうて、レイト地方のアサガオ府ですよ~~? タチが悪いお客様~~? お引き取りくださいな」
「帰る……? 笑わせるな……今は、機械でしか操ることはできないが、お前達を封じ込める事ぐらいはできる……」
魂は、何かのマジックを唱えてきた……! すると、部屋から絵の具のような何かに外を囲んでいき、私達を閉じ込めていった……。
その後に、一瞬で飛ばされていったかのような木がたくさん生やしている、どこかの山の近くに地に足を付いたのだ……。
「なんだココは?!」
「あいつの得意マジックの一つ……『フィルドー』だな。誰かの記憶を結界として閉じ込めるマジックさ……」
「……」
私の隣に立っている睡蓮は、浮かない顔で辺りを見渡していた……スフィーリアの口から、ここはあの魂が創り出した結界の中だと知ると、ラッキーは爪を繰り出そうとしていた……。
「結界の中なら、どっか壊せばいいんだな!!」
「いや……これはいくら攻撃しても、すぐに復元するんだ。どっかにヒビや裂け目があると思うから、そこを壊せば出られるはずだ……!」
「わかった……急いで弱点を見つけよう……」
スフィーリアはラッキーの攻撃を一回止めた後、私はこの辺りの結界を見渡した……木がたくさん生えている中で、白い服を着た幼い女の子の姿を見つけた……女の子はウイルスが出そうな、ワクワクしている表情で禍々しい穴へと入っていった……。
「あの女の子……禍々しい穴に入っていったわ!!」
「あそこは……お、追いかけましょう……!」
「おい、遠くに誰かいるぜ!」
ラッキーは遠くの崖にいる二人いる誰かの姿を見つけたそうだ……女の子にそっくりな白い服を来ており、もう片方の人間は顔を隠すほどにフードを被っていた……。
――「貴方様の役目を果たしました……これで、世界に平和が訪れるのでしょう」
「ええ……しかし、人の子は純粋で世間知らずですね……『自分は大丈夫だと』すぐに騙されてしまう……」
「『あいつにここで修行を行えば、兄上や姉上に追いつける』と装えば……あんな修行すらしないで遊んでばっかりの信者など恥でしかない……」
「ひ……酷い……!」
「まだ幼い女の子を、あんなとこに捨てるなんて……育児放棄にも程があるねぇ……!」
崖にいる、二人は後ろを向いて、女の子を見捨てるかのように去っていった……私達は先程の女の子の後を追いかけ、禍々しい穴に入っていった……。
禍々しい穴へと、突っ込むかのように入っていくと、薄暗い洞窟に僅かに照らされる、ヒカリゴケがむしている岩の道に女の子が体を震えながらも歩いていて、バッグに入れていた本を開いていった……すると、背後から肌寒く感じたような気がしていた……女の子は後ろをそっと振り向くと……何だか魂のような姿が見えて、魂たちはうめき声を放っていた……!
『憎い』――『滅びろ』――
『ここは境界だ』――『出ていけ』――
「な、なに……?! 来ないで……!!」
「何よ?! あの亡霊……!」
「……とりあえず、逃げましょう……!」
私達も、背後から迫ってきている記憶内の亡霊から急いで逃げていった……! 逃げ続けている先には、光があり女の子はその光に逃げ込もうと息を切らしながらも、走り続ける。
「はぁ……はぁ……ようやく出られた……あれ……? 身体が……」
「……! 大変……!」
等々、亡霊たちは追ってこない日が差している、のどかな街に到着したものの、女の子は息を切らした後、立ち眩みをして倒れていってしまった……。
すると、通りかかった女性が、女の子を見付けて、おんぶをしながら家に運んで行った……そして、後ほどに、女の子はあることに気付いた……リビングにあったボードには写真立てが飾られて入り、親子と兄弟の写真が入っていた。その中には女の子の姿もしっかりと写っていることが発覚し、女性は母親だと発覚していたが――
「私の……お母さん……?」
「ち……違うよ……」
「あっ……ごめんなさい……間違えちゃった……」
女の子は親子かと質問すると、その日はやたらと気まずかった……しかしある日の事、一本の固定通信がかかってくる……。
「もしもーし? お父さん……? お母さんに会えたよ!!」
「……睡蓮? 母さんはもう死んでいるって言っただろう……?」
――ガチャン!!
「お母さん……?」
「ごめんなさい、睡蓮……こんな弱虫なお母さんで……実は、死んだことは全部噓なの……お父さんは……いや、あの男は……ライフレス真理教を信仰していたのよ……」
「えっ?!」
「もう耐えられなかったのよ……あの男はもうやめようって訴え続けたけど、首を縦に振ってくれなくて……子供達に自由に道を歩み続けてほしかったのに、巻き込んじゃって……何もかも……あの宗教に奪われて……」
「……」
「睡蓮……見ないうちに大きくなったのね……」
女の子の母親である女性はそっと、幼い我が子を優しく抱きついて、涙を流していた……私は睡蓮に結界の記憶についてを話していた……。
「睡蓮……これって、もしかして――」
「はい、実は……これすべて、私の過去なんです……私の母国では、とあるカルト宗教が出現しており、父も、兄弟姉妹全員信仰していました……私のみはその宗教関心が持てずに好きなことをして遊んだり、学校に通って勉強や行事をして過ごしていました……」
「ほう……くだらん再開だな……! ずっとライフレス真理教に忠誠を誓えばいいだけのこと……周りの言葉に従ってればいいのだよ!! 無駄な時間を過ごしていたな」
どこからか聞こえる、仕掛けてきた魂の声を甲高くしながら貶していった……睡蓮は足を揃えて、攻める姿勢を素早く決めながら、話していた……。
「そのお言葉は……いけませんね……『好きなことをして遊ぶこと』、『学校に通って勉強や行事を行うこと』……私が過ごしていた時間はどれも無駄やないです! それにしても、無駄な時間を長い間過ごしていたのは、あなたの方やないですか~~?」
「無礼な……! 私は無駄な時間を過ごしてなどいない……!!」
睡蓮は魂に、無駄な時間を過ごしていないことを話し、エネルギーを蓄えて、ブラストを放とうとした……!
「あっ……! あそこに裂け目が……!」
私は結界の弱点である裂け目を見付けて、睡蓮にそこを狙うように仕向けた……すると、首を縦に振った後裂け目に狙いを定める――
「私は……時間がかかってても、自分の人生を自分で歩むんや!! 幼かった時の夢……『キャリアウーマン』になりたいと何度も言いながら、歩み続けたら……こうなりましたで~~!!」
「ああ……すごく立派な事ですぞ……睡蓮様……」
「『龍神・天舞拳』!!」
「何?! 結界がすぐ破れるとは……しかし、もう遅い……この悪霊は既に私の手にある……」
睡蓮は『Dragon』タイプの力を放ち、龍に模した波動で、結界の裂け目を攻撃した……! すると、結界は割れて元のお札だらけの部屋に戻る頃……あの魂に接近していた……!
「先ほどの機械らを操った後だからか……力が不十分だな……」
「待て!!」
魂は水晶を掴んで、一体化しようとしていた……魂は悪霊を取り込み、水晶は手放していった……。
「フン、今日はこの辺にしてやろう……明日が楽しみだ……」
魂はすぐさまにどこかへと消え去っていった……スフィーリアは歯ぎしりした後にため息をついた……。
「逃げ足だけはマスター級だな……あいつはギルドを追放されて、ちょっとは反省するかと思ったけどな……あの他責思考な野郎は考え方も昔のままだな……」
睡蓮は、あの魂のことについて、スフィーリアの方を見て話していた……。
「知り合いやったんですか?」
「当初のギルドマスターのな……奴は『生術士』の『ローデア』……あいつは『十大禁令マジック』の一つを頻繁に使って、ギルドマスターの座を狙っていたからな……」
「ま~~た、『十大禁令マジック』かしら? 『リザレク』や『リバーライズ』のどっち?」
「いや……人の心を操るマジック……『コントロル』だな……このマジックはただ、『マインドコントロール』が問題視されるって判断されて、すぐに『第二の地球』内から存在を消したんだ……」
「『マインドコントロール』……気付かないうちに相手にハメられたり、噓を信じ込ませちゃうことね……それで、そいつはどうなったの……?」
「懲役を喰らったさ……そもそもの話、マスターの座を降りることはなかったけどな……」
セナは険しい顔をしながら、スフィーリアは首を横に振りながらも『マインドコントロール』の問題について、軽く説明した……。
『マインドコントロール』は操作者からの影響や強制を気づかれないように、他者の行動・精神状態を操作者の都合に合わせた、特定の意思決定や行動へと誘導することだ……以前に話した『マルチ商法』や結界内に出てきた『ライフレス真理教』などの『カルト宗教』が例にあたる……一例にすると、怪しいもうけ話を紹介し、他者の不安を煽るような感じや言い回しで、だんだんと焦りを見せて、加入を決めてしまうというケースだ……万が一、怪しい話を振られたり、自分は操縦されているかもと思ったら、慌てずに視野を広げて、周りの人間に相談する事、操作者から距離を置く事を推奨すると、スフィーリアが話していた……。
説明はこんな所かな……ラッキーは水晶を見ていた治隆に話しかけた……。
「所で、治隆の爺さん……あのゴミ野郎が持ち去った悪霊はよっぽど恐ろしいもんなのか? 巫女や祈禱師、狐の神の使いですら倒せなかったのかよ?」
「はい……あの悪霊は、大昔にアサガオ府で発生した、強力な怪物でした……」




