〈二章アウトロ:前編〉大魔法使いが解けない問題-3
『キツネ神ノ神社 アサガオノ神』の宮司である、治隆に案内されるがまま、次々と現れる赤色の鳥居を潜り抜けながらも、私達は当時に不気味な声を聞いたという場所に辿り着く……睡蓮曰く、この神社は商売繫盛や衣食住のご利益があると有名だそうだが、現在は『怪奇現象騒ぎ』によって客足も減ってしまっているそうだ……先程の行事も失敗できないって言ってきたんだ……。
そして、治隆は神様に挨拶をしながら、他の関係者を呼び、鉄の門を力一杯開けていった。中は普段一般人は入れることはできないが今回は『異変調査』のためだと、特別に許しを得たそうだ……セナは辺りの古い木造を見渡しながらも考えていた……。
「ここで、変な声を聞いたのね?」
「はい……キツネ神ノ神社の拝殿は、アサガオノ神の『お狐様』が重大なお役目を果たすために、建てられたと言われています……」
「『お狐様』……?」
治隆は、この神社の名前の由来である『お狐様』について詳しく説明をした……。
「『お狐様』はかつての地球から、先祖代々に伝わる、農耕神のお使いの一族であり、そのお方の血を継ぐ狐の方々でございまする。その農耕神は、大昔に五穀豊穣を司る神でございましたが、時代が変わるにつれ、商売繫盛・家内安全・交通安全などの生活面でのご利益があると人々から信仰されるようになったと言われております。その伝統を『第二の地球』に引き継ぐとの思いで、一番最初に浮島『TUKI』に建築された、『キツネ神ノ神社 浮島ノ神』、後にレイト地方アサガオ府で建築される『キツネ神ノ神社 アサガオノ神』でございます……」
治隆は目の前にある、小さくて白い狐の像をじっと見つめて、持っていた杖を握りしめながらも『キツネ神ノ神社』について説明をしていた……。
「なるほど……『キツネ神ノ神社』は、かつての地球から……」
「ええ、稲作の豊凶は現代でも、我々の生活に左右されるのです……『日々の生活』はいずれも貴重な時間となる……私も『お狐様』も農耕神様ですらも、そうお考えです……特に子供の頃は時間が貴重だと散々言われまして……今の現代人に取っては、この現代をどう使うか……改めて考える時間が必要じゃと……私はそう思いまする……」
「この現代をどう使うかですか……」
睡蓮は、呟きながら両眉を寄せていた……セナは耳に手をかざしながら何かを感じた表情を見せる。
「あっ! みんな、耳を澄ませて……!」
セナは入り口の方をじっくりと見ていた、するとどこかしら客人を呼び寄せる機械のような曲調が聞こえてきているような気がする……その上で、時間が経つに連れてどんどん大きくなっていき、ようやくその正体がハッキリと表れる。
「なんだい……? よくスーパーで聞くような音楽そっくりじゃないか」
「あちらは我が社の技術チームが、財産を守るためによういしてもろた防衛ロボットでございま~~す! 財産に近づくと……自動で攻撃するプログラムになっておりますんが~~……」
ホイールが搭載されている白い防衛用のロボットは、私達を侵入者を見るかのような目をしていた……その後、ロボットは腕から出てくる銃口からエネルギーを溜めてきた……!
「……! みんな……隠れて!!」
ロボットは紫色の目でビームをこちらへと放ってきて、私達は速やかに壁や頑丈な柱の後ろへと隠れていった!
治隆は警備ロボットに強く大声を出していた……。
「これ! この者達は客人だ!! 盗人ではない!!」
奥の方からラッキーの声がハッキリと聞こえてきた……! いつの間にか周りからいなくなっていたけど、話している間に歩き回っていたのかな……。
「ぎゃぁぁぁぁあああ!! 動けねぇ!!」
ラッキーは大の字で寝そべりながら、倒れこんでいた……奥から、警備ロボットの姿があって、奴に攻撃されて動けなくなっていたそうだ……スフィーリアは防御マジックを展開しながらもラッキーに近寄る。
「ラッキー……金に目を眩んだのか?」
「盗人になるまでは眩んでねぇよ!! ただ、じっくりと見たら襲ってきただけだし!」
「ひょっとして……私達を敵だと思われているのかしら……? 睡蓮……?」
睡蓮は首を傾げながら、頭を悩ませている……今回のケースは想定外の事だろうか……。
「あのタイプのロボットは、オーナーや関係者の者、それ以外でも罰当たりな行為をしない者は攻撃しないシステムですがね……万が一そのようなことをしたものには、痺れビームを撃つシステムとなっております~。ビームは建物に損害は一切ございません」
「神社にしては、ちょっと派手な機械チックだな……吹き矢とかはダメだったのか?」
「吹き矢だと、伝統ある建物に穴をあけてまうんで……やめてくだはいとゆゆお嬢様にクレームを言われまして~」
治隆は警備ロボット達のシステムを停止させようと、警備ロボット達に近寄った……しかし、すぐさまにビームを放ったため、治隆は真っ直ぐに倒れていった……。
「なぬ……!! バカ者!! 宮司を襲う機械がおるか……!!」
「変やね……以前にも無差別に襲うことがありましたか?」
「いや……今回が初めてです……一昨日は無謀な盗人を封じてくれたぐらいしか……」
「やっぱり……ロボット達は誰かに操られているんだな……!! あっ!!」
スフィーリアは杖を示していた……すると、複数体の紫目の警備ロボットの姿があり、ビームを放とうとしている……。
「あんなに……!」
「第一、幽霊はこんなの操ってどうすんだ?! こいつら使って、神社の宝なんか盗んでも罰があたるだけだろ!! もう壊すしかねぇのかよ?!」
ラッキーは警備ロボットは直せないかと思い、戦いは避けられないと悟ったが……スフィーリアは顎を手に当てた後、みんなに提案をする……。
「宝……待ってくれ、壊すのはナシだ……! 機械に詳しい奴を一人知っているよ!」
スフィーリアはセナに頼んで、ある戦士に協力を要請しようと通信で呼び出した……すると、久しぶりに見た顔が映し出される……。
「桃……?」
「ああ、親愛なるトキワタリ君……いや……何でセナ君から寮母の声……? どうやら、状況が麗しくないみたいだけど……どうしたんだい……?」
「ちょっと手短に話すが……実は――」
スフィーリアはこれまでの経緯を桃に手短に話した。桃はキーボードを繰り出しながら、眼を鋭くした……。
「なるほどねぇ……アサガオ府での怪奇現象騒ぎか……暴れているロボットを落ち着かせて欲しいのか……りょうか~~い……少し時間がかかるから、ちょっと待っててくれ……!」
「ああ、恩に着るぜ!」
桃は暴走するロボットを食い止めようと、素早いタイピング音を鳴らしながら、作業を始めた……それまでは時間を稼がないと……。
「それまでは……私が弾くよ……」
私は、ハンマーを繰り出して、大群の警備ロボットを食い止めることにした……。
どこぞの呼び込みの音楽に合わせて。放ってきたビームをバリアで弾いていった……2ヶ所3ヶ所から放ってくるビームも同時に防いでいき、ロボットの周りには緑色のホログラムを纏っていった。
「そこだねっ!!」
桃は、強くキーボードを押した後、ロボット達に纏っていた緑色のホログラムはおかしくなった原因である紫色のオーラを包みながら、消え去っていった……。
「警備ロボットが全員大人しくなりましたね~~! ご協力、感謝してます~~」
「遠慮しなくていいよ~~それじゃあ、また何かあったら言ってくれ~~」
桃は頼りにしてくれて、満足気に通信を切った……大人しくなったロボット達はすぐさまに、自分の持ち場に戻っていったのだ……睡蓮はソワソワしながら何かを悟っている……。
「……さっきの感じ……何だか、一番最初の『クレーム』にそっくりです……」
「一番最初のクレーム……?」
「私はこの仕事に勤める随分と前の時はこことは別の国に住んでいて、父と二人暮らしでした……先程のロボット達の様に、人の大群に襲われた事があって……泣きそうになりながらも全力でよう逃げてはりました……その人達は、確か……『憎い』や『滅べ』とか言いながら追いかけて来ました……」
「結局はどうなったんだ……?」
「なんとか光を抜けると、その大群の姿はありまへんでした……しかし、抜けた先には見知らぬ世界に……私は元居た国に帰りたいと泣きじゃくれていましたね……すると、奇跡が起こりまして……見知らぬ女性が私の目の前に話しかけて来ました……その上で後ほどに、私の実の母親だと判明しました……嬉しさのあまり、父に連絡しましたが……父は『母さんはもう死んだ』って言っておりはりました……」
「睡蓮……」
睡蓮は、体を震えながらも子供の頃の記憶を話していた……ちょっと引っかかる気がするけど……今は、依頼の件について集中しよう……。
「この部屋……何だか怪しい雰囲気ね……」
「こちらは、お狐様のみが入るのを許されている部屋です……この部屋には100年前に封印した悪霊が眠っています……」
「……悪霊?」
私はゆっくりと怪しい部屋の引き戸を引きながら、お狐様に挨拶をしながらも入っていった……。




