〈二章アウトロ:前編〉大魔法使いが解けない問題-1
レイト地方のヒマワリ府、眩しい陽の光に照らされながら、芝生に覆われた地面の上で、私達は穏やかに過ごしていた……いや、過ごすべきだった……。
レイト地方の大規模な博覧会、『レイトミライフェスティバル3020』での、戦いと満喫の同時進行で、私達はフューチャーファイターズ、レイト部隊拠点内で休息を取っている所、セナとラッキーは、私の目の前で何か言い争っていた……。
「今は足休めだろ?? 何で依頼受けなきゃなんねぇんだ!!」
「ラッキー、この前の出来事を忘れたとは言わせないわよ……」
セナはまるで殺気を放つ機械のような表情で、ラッキーを問い詰めていた……。
「どこかのAIアシストロボットが、遊園地に行って……美味しい物を食べたいだけ食べて……」
ここ数日、平和となったレイト地方の観光や散策などで、しばらくの間、依頼に手を付けていなかったのだ……そのせいで、所持金が底が尽きそうな状況でいたのだ……その上で、進行していたのはラッキーであり、彼が行きたいところをあちらこちらへと行き、食べたいものを食べていた……さらに、厄介なことに、観光ブームの到来により列車や飛行機の予約が大混雑しているという……。
ラッキーはヒア汗を流しそうな表情で、目が笑っていないセナを抑えようとする……。
「あ~~……えっと、ほらアレだ! 平和が訪れた後はご褒美が欲しくなるだろ……?」
「ラッキー、もうお金がないわよ……このままだと私達は帰れなくなるわよ……凛星が迎えに出した列車は観光客が一杯で手配しづらい状況だからって言ってたの……」
「ああっ!! もうわかったっての!! 受けりゃあいいだろ!!」
……そういうわけで、私達はフューチャーファイターズの拠点のロビーにて足を運んで行った……カウンターの前には堂々と立っていた、生命機械人と見知らぬ女性が向かい合いながら何かを話している……こちらの姿が見えると、私達の方じっと見つめていた……。
「ちょうどいい、お前たちを呼ぼうとしていた所だ」
「私達に……?」
「今回依頼を申し上げた方は、政治の方だと言う。くれぐれも無礼がないように」
祐郎は、軽く片手を挙げて、そのまま去っていった……そして、政治の方だと言う黒髪の女性は私に対して、ゆっくりとお辞儀をした……。
「皆さん、初めまして、『翡翠 加江』と申し上げます。貴方様が檜木様率いる、天閃野家ご一家と凛星様率いる国立家ご一家が認めた、トキワタリだと聞いて、貴方様にご指名で依頼させてもらいました」
「おおっ! 分かってくれてる方がいるもんだな!」
「……ラッキーはトキワタリじゃないでしょ……」
政治の役員である、加江はカバンから取り出した資料を開いて、私達に見せてきた……。
「ご依頼と言うのは、アサガオ府のアサガオ市内全域で発生している『怪奇現象』の件についてです……数日間、『誰もいないはずの部屋に笑い声が聞こえる』や『タンスが勝手に開く』、『ロボットが意味不明な行動を起こす』などの原因不明の現象が相次いでいます……解決方法が至っていないため、国会でも頭を抱える程の大きな問題視になろうとしています……ただでさえ、国会の状況が芳しくないのですが……」
加江はため息をつきながら首を横に振っていた……。
「そして、『魔法使いギルド』の元メンバーの方が自ら参加したいと自身から声を挙げていました」
「『魔法使いギルド』……か……」
確か、美菜は『魔法使いギルド』のメンバーに育てられたって言ってたような……美菜から聞いていた話だと……マジックや魔術に特化した者が集まり、怪奇現象やマジック絡みの相談を解決してくれる、不思議な集団だと言っていた……現在は解散してしまっており、ほとんどの一員がフューチャーファイターズや戦闘法人に移籍していたらしい……。
加江は端末を操作して、怪奇現象が起こっている場所をマップアプリに転送した……。
「また、『ノック・ゼクス』の睡蓮様にも先ほどご挨拶いたしました。何やら、キツネ神ノ神社でのクレーム対応をしてくるとやらで、忙しそうにしていました……怪奇現象騒ぎの範囲内になっているので、話のみでも聞いてあげてください。報酬は、指名料も上乗せしておきますので」
「わかった……ありがとう……」
加江は次の仕事へと向かいに、拠点を後にした……すぐさま私達は、アサガオ府へと出発した……電車に揺られながら、私達は怪奇現象の発生地から近い、アサガオ駅の改札を潜り抜けた。
ナデシコ通りに比べて、現在のような街並みが見えるが、所々に和風の街灯が立っている。
「加江が言っていた場所は、この辺りね……」
「あ? あそこで喋ってんのは睡蓮じゃねぇか?」
ラッキーの言葉通り、資料を片手に沢山の端末を喋りながら操作をしている、ノック・ゼクスの社員が早歩きで進んでいた。
「もしもーし? どのようなご用件で……エアコンが壊れてもうた……? わが社はエアコンを開発していないので、業者様へとご連絡くださいな……お待たせいたしました~~本日はどのような――」
「キツネ神ノ神社にいるはずよね……ひょっとして、この辺りにあるのかしら……?」
睡蓮は、一度に沢山の端末の通信を切った後、すれ違ったときに私達の姿を見て、不機嫌そうな表情から一転して明るい表情となった……。
「あら? このお姿は、レイト地方を救ってくださった戦士様ではありまへんか~~!!」
「やぁ……『レイトミライフェスティバル3020』以来だね……」
睡蓮は、手を合わせて微笑みながら再会を喜んでいた。セナは首を傾げながら、気になる事を話した……。
「なんで、こんな所にいるのかしら? 確か、キツネ神ノ神社にいたはずじゃ……?」
「それが、数日前から……クレーム対応に追われてまして~~どれもこれも、我が社のロボットに対するクレームなんです~~……そこで、私は証拠を確かめに、この辺りで調査したんですが……本当に調理ロボットが自分勝手な行動を起こしおったんです……! 一体止めたんですが、原因不明……更にもう一体追いかけている所、お得意様に出くわしたってことになります~」
「原因不明……? 怪しいスクリプトじゃないなら、加江が言ってた、『怪奇現象』ね? でも、詳しくは知らないから――」
「どうやら、お困りのようだな!」
「……?」
後ろから聞えた、長杖を片手に持っていた女性が私達の所へとやって来た……ラッキーは、すぐに私の後ろに隠れていた……知り合いなのかな……?
「アタシは『スフィーリア・ブラウン』、ギルドがまだあった時代は『黒魔導士』と呼ばれてたんだ。妖術に詳しい奴がいなくて困っているんだろ? アタシなら力になれるはずさ!」
「ゲッ……魔法使いギルドの元メンバーって、寮母の事だったのかよ……! そもそも、なんでアサガオ府にいるんだ!」
「依頼の為に決まってるだろ? ラッキーだって、勝手にレイト地方についてきて、みんなやトキワタリ達を困らせてるんじゃないか」
メイキョウ部隊の寮母で『魔法使いギルド』の元メンバー、スフィーリアは眉をひそめながら言う……セナはラッキーに対して、笑顔でこう褒めていた……。
「……まぁ、その結果として、実は結構成長したのよね~! 助言を言ったり、他人の意見を聞き入れたりね!」
「……」
「おおっ! 短気かつひねくれ者にしては立派な事だと思うぞ! これからも支えてやってくれ、勇者様!」
スフィーリアはラッキーに対して、セナに続けて褒めていた……ラッキーは顔を赤くなりながらも、足で頭を掻いていた。
「チッ!! 体が痒くなってきたぜ!! 睡蓮……早く本題を言え!!」
「はいは~~い、皆さんそろそろ本題に入ります~~加江さんから聞いたかと思いますが、この辺りで、幽霊やて怪奇現象やて騒ぎになってもうてるんです……幽霊や怪奇現象は、アサガオ府内では滅多に起こらず、浮島諸島で起こり得るんですが……更に不可解なんは、一般人に取り付き、集団で襲ってる事例もあったんようです……これは、深刻な問題やと思い調査に参りました……」
「つまり……浮島からやって来た幽霊がアサガオ府にやって来たって事かしら……?」
「その可能性は低いようです。万が一、神社の祈禱師さんが除去してくれているので~」
睡蓮は、怪奇現象騒ぎの件について的確かつ詳しく話していると、その途中で――
ボバーーーーーン!!
「わっ、なんだいなんだい!!」
「……お喋りしている場合じゃありまへんね……あっちがキツネ神ノ神社でございます~~! 行きましょう!」
急に何かが破裂する音が大きく響き、辺りの人々は何だろうと言わんばかりに、音が鳴る方向へと見ていた……私達は先行する睡蓮の後を追いながら、キツネ神ノ神社へと向かっていった……。




