↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宿屋のメリー告白大作戦  作者: ミツキ
47/48

タイラーさんはお兄さん


宿屋のタイラーさん。


一見、地味な風貌の青年である。

黒髪黒目、カスタード色の肌は村では珍しい。

平らな額と頬、さっぱりとした一重まぶたの目は細く、むしろ細すぎて黒目しか見えない。


メリーに拾われた当初、言葉がわからず、また衰弱のため歩けなかった。

保護される前の記憶も曖昧で、何度も熱を出すため数ヶ月はベッドと裏庭のベンチで療養を続けた。


華奢な身体と中性的な面立ち、物静かな空気をまとった黒髪の儚げな(見た目)少年だったタイラーさんは…


それはそれは村では有名な人になった。


タイラーさんは「頭を強く打った人」と呼ばれている。


仕事熱心で真面目、誠意に溢れ物腰も柔らかで身体も丈夫。


だけどタイラーさんはきっと頭を強く打ったに違いない。


ある日ある時ある家では母親が息子に、

「日がくれる前に帰っといで!滑って転んだら頭を強く打った人になっちまうよ!」

「なりたくねぇ!わかったよかぁちゃん!」


失礼極まりないが村人達はタイラーさんを嫌いなわけではないのだ。

ただちょっと理解が及ばなくて苦手なだけで…。




「うちの旦那が『あれ』になった理由ですか?へぇ~聞きたいですか?」


理由、原因、動機全てこの私!メリーですよね!わかってますとも!


「昔も今も今後も来世も、うちの夫はメリーお嬢様絶対主義。メリーお嬢様命。メリーお嬢様好きをこじらせてひねらせてアレですよ。…ふっ」


あぁ、うん。

私にとっては普通の兄という感覚なのですよ?普通に大好きですし、頼りにしているし、格好良いし。

勉強も見てもらったし、勉強以外の事も沢山教わったなぁ。


私にとっては穏やかで、物静かな兄なのです。いつも見守ってくれる鍛冶屋の兄兄(あにあに)と同じような感覚なのですよ?


「違いますお嬢様。普通の、世間一般の兄は臭くて下品でバカばっかりですよ!決して子持ちのおっさんなのに女装して鞭をふるったりしません!」


ひしと腕にすがりつくカホさんのうるうるとした瞳になんだか無性に謝りたくなります。ごめんなさい。ごめんなさい。


「まぁざっくり説明しますと、うちの夫はお嬢様への愛を追求するあまり完璧な変装術を身につけていたのですが、去年お嬢様がドレスをお持ち帰りになった後からでしょうか?

宿への問い合わせが宿泊ではなく、街へお嬢様のお呼び出しが増えて不審に思った夫が代理で女装して排除してました」


ざっくり説明ではなく、さっくり暴露ですね。

うるうるした瞳のまま遠くを見つめるカホさんの視線の先で四ツ子ちゃんがこちらに手を振ってます。


「あぁ、ちなみに夫の女装姿は概ね子達には好評ですのでご心配なく。ふふっ」


村の人達も見慣れてますしね。と呟いたカホさんの棒読みに嫌な予感。

昔から神出鬼没だの藪からメリーだのと好き勝手言われてましたが、もしやタイラーさんはそんなに昔から?

私のあずかり知らない所で女装趣味が?

いやいや、趣味は人それぞれだけどまさかのタイラーさんがっ!

私の中では小さな頃から優しくて穏やかでちっとも怒らなくてお願い事は何でも聞いてくれるそれはそれは優しいお兄…。


…うわぉ。頼みました。いつかは分からないけどものすっごい昔に身長が近いのをいい事に身代わりを頼んだ記憶が…


『お嬢様、どうされました?』

『今夜は森の丘でお友達とお月見しようって約束したのにお父さんが夜は外に出ちゃいけないって』

『あぁ、大丈夫ですよ』


にっこりと微笑んでくれたタイラーさんに私の夜着を渡してお布団にはいってもらいましたね!ましたよ!


他にもレイラさんに追われて逃げてる時に『それは大変ですね。では二手に別れましょう。大丈夫ですよ』とにっこり。

あと前村長に追われている時とかケニスさん家のお婆さんを追っている時にもタイラーさんが現れてましたね!ました!


「通りでここ数日皆に簡単に捕まっちゃうわけだ…」


「そこですか、お嬢様」


いやはや、あわわ。


ふぅとため息をつくカホさんは「まぁ暴露ついでに報告しますと」と順序が正しいんだか正しくないんだかの前置きをつけると、


「王都で話題のヒロインを見たさに物見遊山で村に来ようとしていた貴族のアホどもを旦那様や奥様に黙って蹴散らしてましたが、今回に限って撃ちもらしました。お目汚ししてしまって申し訳ありません」


ぺこりと頭を下げると続けて


「大丈夫。すぐに消します」といい笑顔で窓の外の四つ子ちゃんに合図を、


「送っちゃだめぇぇ!」


窓の外ではいつかどこかで見た暗器を手にした7歳児達が『まだぁ?』とつぶらな瞳で問いかけてました。


まだじゃなく、待った!です!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。