メリーと女友達
は、は、はめられました!
はめられましたよ私!
だってだって、今朝工事の大工さんとご挨拶して、あれ?お父さんとお母さん、あれ?
え?じゃあ、ダニエル君まさか一人でお留守番?!
…すっかり忘れていましたが、私の両親、即断即決の行動派でした。
笑い声だけで養子決定する人達でした。
工事の方々も、皆さん事情をご存知で、本日から宿屋は両親の代理に遠い親戚の鍛冶屋夫妻が留守番と決まっているそうです。
…全ては、人脈は広く、根回しは深くが座右の銘の隣人、レイラさんの台本通りです。しくしく。
「そうでもないわよ?まず裏取りしなきゃいけないから、エメリヒ兄さんの旧知のつてを辿ってお手紙を書いて、
辺境伯がこちらにご滞在する時期に訪問の約束を取り付けるまでに書簡の往復に一ヶ月かけたし」
あとそれから、
レイラさんは私のおやつをモリモリと食べながら指をおります。
「本当は先週にでもメリーの口から吐かせてから馬車で向うはずだったけど、ジェームズさんのお嫁さんに馬車を貸してしまったでしょ?
行商人さんからの手紙が途絶えていたし、いつ徒歩で家出するかわからなかったから、ハラハラし通しよ?」
伯爵様と村長さんの証言を揃えた上で、私に吐かせたわけですね。
「あなたのお父様だけが心配でねぇ。
どのタイミングで吐かせるか難しかったわ。ダニエルからは毎晩の音読に力が入らなくなってきたって言われて、お母様もあれで焦っていらっしやったのよ?」
「レイラ、じゃあ、あたし帰るわね」
「はぁい、お疲れ様ミリエラ」
わたくしは今、森の外れにある、サルスベリの木に繋がっております。
両親の不在に慌てふためくも、兄兄のがっちり拘束で家まで連行されまして。
部屋に閉じ込められる際に、とりあえず説明はレイラがするからと聞き、
嫌な予感がしたので天井裏から屋根へ脱出。
木と木の間を飛んで、いる際に笛が聞こえた気がしましたが、パニックになった私はとにかく村の外へ出ようと走りました。
村民対抗・障害物競走かと思いましたか?
レイラさんの足からさえ逃げられれば、私ぶっちぎりなんですよ?
しかしですね、
まさかの友人、ミリエラさんが弓を引き絞ってご登場。
「ごめんねメリー。あなたのおかげでお父さんがお休みを取ってくれて、感謝してるのよ?
でもあと一日あるの。あなたのせいで緊急配備になったら、お休み返上しなきゃだし、ね?」
小首を傾げるミリエラはとても愛らしい。ただ首を傾げたのは同意を求めているからではなく、弓をキリキリ引き絞っての「ね?」は、恐ろしい。
ミ、ミリエラさん、落ちついて、ますけど、話をっ、
「今日は兎のシチューをお父さんと作るのよ?」
シュパンッ!私の足元に、矢が刺さります。
一歩下がると、一歩近づくミリエラさん。
「下準備は私がして、お父さんが火加減を見てくれるの」
笑顔で矢を放つミリエラさん。
一歩下がった私の足元に刺さる、矢。
…ラブラブ共同作業☆萌えて燃えてファイヤー…
「だから」シュパンッ!「私はこれから」シュパン!「兎の血抜きの後、解体をしてっ」タスン!タタスンッ!
「…肉を柔らかくするために、下準備しなきゃなの」
シュパンッ!は、私の足元に刺さる矢の音。
タスンッ!は、ミリエラさんの放った矢が私のこめかみを通り過ぎ、背後の兎を仕留めた音。しかも連続で3本射ってらっしゃます。
「邪魔しちゃイ・ヤ・よ?メリー?」
木を背に、退路を無くした私にあと一歩の距離に迫ったミリエラさんは、
矢の羽で私の喉をしゅるりと撫で、天使のように慈悲に満ちた笑顔。
やれる。この友は目的のためなら手段を厳選した上で確実に仕留める。
…ぴぃ。
メリーの喉から変な声が出た瞬間、
投網が降ってきた。
うぎゃあ。
…レイラさんから網ごと木にグルグルに巻かれながら説明を聞いている隣で
ミリエラさんはご機嫌で二羽の兎を解体し、鼻歌交じりのスキップでお家に帰ってしまわれました。
怖かった。ほんとのほんとに怖かったですレイラさぁん。
「村の男共どころか父親も騙されてるけど、あの娘はなんちゃって不器用だからねぇ。私やメリーと同世代で仲がいい時点でわからないものかねぇ」
彼女の笑顔は不器用じゃないです、武器用ですっ!
「素直になれないのが悩みとか普段言ってるけど、素直よね?」
嘘偽りなく欲望に忠実ですよね。
ところでレイラさん、パニックになって走り出してしまってごめんなさい。
反省してますので解放して下さい。
逃げません明日までは。
「どんだけミリエラに怯えてるのよ」




