メリーと見守る人々
どうも。草刈り中のメリーです。
村から外れた場所にある共同墓地は景色は良いのですが、人の往来が無いと雑草が生い茂ってしまって。
当番で掃除するはずなのですよ?
でもおサボりする人が多くて困ります。
そんなに重労働でもないのに。
さて、雑草はまとめて焼いてしまわないと。
「ゴホッゴホッ。わかったからメリー、煙を墓石に向かって仰ぐのはやめてちょうだい」
む。カレン婆ちゃんですか?若作りはしてないですね。よろしい風上へどうぞ。
「やめてくれメリー!俺だジャンだ!
なんだこの煙、目に染みるぞ!」
「どいてよジャン!そこは私のお墓よ、メリー、ナターシャよ覚えてる?」
ジャン、ナターシャ、エルゴ、ポール、クルト。ふむふむ。皆さん生前の懐かしいお姿でご登場ありがとうございます。
数が少ないようですが、まだ煙が足りませんかね?
「いやもう十分だから。今ここにいない連中は村を巡回してるか、家族の近くにいるよ」
ブルーノ村長は頑固にも若い姿のままですね。往生際の悪い。
「往生際が良ければ成仏してるさ」
でも、ここにいる皆さんは、大往生された方々ばかりですね。ナターシャ婆ちゃんは亡くなる当日までお肉好きだったような。
「幽霊になる基準は曖昧だけどね、
田舎では死に際に苦しまず、寿命を全うした爺婆はよく幽霊になるのよ。
子や孫が万一病気や事故で亡くなった時に迷わないように、残るのよ」
…夫婦で、東の花園には行かないの?
「あらあらメリー、どうしたの泣きべそ顔して」
カレン婆ちゃん。婆ちゃん、爺ちゃんに会いたいってずっと言ってた…。
「長く連れ添った夫婦ほど役割分担できるものでね。あの人は幼子の魂を連れて先に行っただけ。役割を果たしたんだ。寂しくはないよ。暇だけど」
「それにね、メリー。私のように生涯独身だったり、子孫が繁栄しなかったジャンのような暇人もね、迷い人が村に来れば一緒に旅立つのよ。テオもどこかの町で友達を作りながら旅を楽しんだと思うわ。暇だし」
カレン婆ちゃん、ナターシャ婆ちゃん。ありがとう。
でも暇だからって、クローゼットに忍び込むのはやめて欲しかった。
「ごめんなさい」
「もうしません」
謝ったからって許しませんからねっ
メリーは幽霊には毅然とした態度で対応すると決めているのですよっ
「メリー、顔が緩んでるわよ。あと花の種を投げないで。婆ちゃんあなたの照れるポイントがわからないわ」
「それに、そろそろハゲ達の相手をしてあげなくちゃ、寒々しいわぁ」
おっとそうでした。
ご協力ありがとうございます爺ちゃんず。懐かしいお姿を再び拝見できてメリー感無量です。
本日集まって頂きましたのはですね、
この手紙が原因でして。
「…ブルーノ、ワシが生きてる時より王家は随分愉快になったのぅ」
「いきなり爺さん口調やめなよポール。メリー、水車小屋の裏でいつも脅かしてたのはコイツだよ。孫のボブに告げ口しちゃえ」
「ワシ、耳が遠くてのぅ」
…ゴホン。それはまた後で。
ザーラさんはお手紙の通り、去年王都ではお会いできなかったのです。
それでですね、よくわからない表現が不安になりまして。
「そのままじゃよメリー。馬鹿な王子をレプス商会の代表がとっ捕まえて、
髪も髭も剃ったのじゃろ。あと眉毛も」
「あら、テオ君って私生前会ったわよ。代表が末の弟だって可愛がってたわね」
いやいやいや。
殿下ですよ!この国の王位継承者であらせられる方ですよ!
大丈夫なのですか?反逆罪とか、そんなっ、大丈夫なのですか?
「大丈夫じゃよ。代表は元は貴族の出で、バカ王子とは学友のはずじゃ」
もしかして、もしかしなくても、私が原因ですよね?王子様に絵を奉納しちゃった事を代表は怒って?
「んにゃ。騒動の原因を作った事、それと収集できずに、代表が可愛がっていたメリーの安全を守れなかった罰じゃろな。笑える」
五体無事ですのに。滞在中も何かとご配慮頂いて、逃亡の際も手を回して頂いたのに。
どうしましょう、代表さんとテオさんに送った手紙が届いてなかったのかな
でもお返事は届いたし。
辺境伯からのお手紙には何もなかったのですよ?
なんでしょう、じわじわと不安が。
エルゴ爺ちゃん、「テカリこそポリシー」だっていつも剃ってましたよね?
王子様大丈夫でしょうか、お若くないのに、ちゃんと生えるでしょうか。
「…無理じゃね?」
えぇ~!眉もですか?眉は生き残れますか?
クルト爺ちゃんはずっとお薬とマッサージしてましたよね?
「…無駄な抵抗じゃった。息子には悪あがきするなと伝えてくれ」
遺言を今更残さないでくださいっ
ケニスさんはまだ頑張ってらっしゃいますよっ
「いや、あいつカツラだし。眉毛書いとるぞ。父ちゃん恥ずかしいわ」
「あら。うちのロバートと歳変わらないでしょうに」
「若い頃に洒落っ気出して眉抜いてたからな。奴の毛根は既に死んでいる」
…王子様とケニスさん用に薬の開発しなきゃですよね?
「メリーや。ポール爺ちゃんがえぇ事教えたる。眉毛は髭とは違うからなぁ。毎日剃ると肌が負けるかして生えづらくなるんじゃよ。
あと頭髪と眉毛ないと、汗が目に入ってめっちゃ痛い」
…えぇ事ですか?
「王子が髭伸ばしとったんは、童顔じゃからじゃ。もうおっさんやし、ハゲでもえぇやろ」
話をまとめただけで、良い情報じゃない!
「髭伸ばすのは、剃刀負けする男の人に多いわよね。ロバートもそうだし。
メリー、ハチミツパックを送って差し上げたら?」
お肌ツヤツヤになりますね!
「はぁい、皆落ちついて。メリー、ハチミツパックは王妃様に贈りなさい。
爺はテカリ対決しないっ。
カレン、ナターシャはメリーに大切な事をちゃんと教えてあげて」
なんですかヒラヒラのブルーノさん、今メリーは色々大忙しなのですよ。
「メリー、まず伯爵様にもう一度お手紙を書きなさいな。バカ王子は無視していいから。テオ君のことを聞きなさい」
カレン婆ちゃん、テオさんにやっぱり迷惑をおかけしてしまったのでしょうか?
「わからないけれど、『面会』と書かれていたのが気になるわ。殿下とお会いするなら、『謁見』よね?」
面会、あれ?面会って何でしたっけ。お面会?お面の会?テオさんは麺類好き?
「話の流れ的に、入院でもしているんじゃなくて?」
「ナターシャッ!」
「でもほら、文面を読むと、このザーラさんって人はメリーが知ってる前提で書いているけど、テオ君に何かあったんじゃなくて?
レプス商会や伯爵からも任せるようにって手紙が最後よね?あぁ、メリー宛の手紙は盗み見してないわよ。あなた毎晩音読してたから。
だってそうじゃないと、1年も村に来ないなんて」
「ナターシャ、ナターシャそこまで!」
……。
「あらやだメリーったら。座ったまま寝てるわ」
「ナターシャ、気絶してるのよ」
「…皆で手分けして、金物屋の犬、チャロを探すとするかの。チャロに会ったら弟達も連れて来てもらえるように頼むとしよう」
「ワシャ犬と会話できんぞ」
「メリーの悪口を言えば追いかけてくるさ…」
……うーん。うーん。幽霊嫌いぃ。




