第12話 今週末、行く?
とある放課後、美月が裸のカセットが並ぶ写真を見つけ、画面を拡大した。
「こういう昔のゲーム、実物がいっぱいある店に行ってみたいな」
「中古屋なら結構あるぞ。古いソフトも本体も置いてる店」
「連れてって!琴ちゃんも行こうよ」
美月が軽く誘った直後、白石は珍しくあっさりと答えた。
「今週末」
「え?」
白石自身も口に出してから止まっている。
美月ではなく、おれの方へ切れ長の目が向いた。
「今週末、行く?」
「いいけど。美月の予定は?」
そこで美月が「あ」と声を上げた。
「私、今週は無理だ。予定ある」
白石が残念そうに目を伏せる。
「じゃあ別の日にしようか」
「行く」
言ってる意味が分からなかった。
美月が行けないって言ってるのに、どこに行くんだろう?
「じゃあ。二人で下調べしてきてよ。良かった店、あとで私にも教えて」
「美月が行きたいって話だっただろ」
「だから下調べ。お願い!」
店を知っているおれと、レトロゲームに詳しい白石なら、見るところには困らないかもしれない。
白石へ確認すると、小さくうなずいた。
「家に古いゲーム機がある。今は使ってないけど、動くと思う」
「じゃあ対応するソフトも探すか」
「二人でできるのがいい」
白石がそこまで言うと、美月の笑顔が一段大きくなった。
「下調べ、よろしくね」
「何でそんなに嬉しそうなんだよ」
「別にー」
*
今日はミヅキが上がれないということで、爆弾を使って相手を倒すアクションゲームの対戦をしていた。
《タク:シイコ様の火力がどんどん強化されてく》
《ユズ:なおナオの火力はざこ》
「うっせぇ!火力だけが勝負を決めるわけじゃないって見せてやる」
おれのキャラクターは火力はない代わりに、スピードは大きく上がっていて、画面内を高速で走り回る。
『早ければいいってもんでもないよ?ナオは自滅しそう』
「んなわけないだろ!速さは力だ!」
その言葉通り、シイコのキャラの前を駆け抜けて爆弾で挟み込む。
『あっ!』
「見たか!」
《タク:おお!珍しくナオがやった!》
そして、シイコに気を取られたおれは別の爆風に当たって死亡したものの、シイコもそれに続いて死亡し、コンピューターの勝利でゲームを終えた。
《ユズ:さすが、期待を裏切らない》
『ざぁこ』
「そのざこにお前はやられたけどな?」
『うるさい!油断しただけ!』
そんな感じで十戦ほどして、大半がシイコの勝利で配信を終える。
その後はいつも通り二人での会話の時間が始まる。
「そういや今週末、隣の子とレトロゲーム見に行くことになった」
『二人で?』
「ミヅキが行きたい店の下調べ。あいつは予定あって来ないけど」
『普通は延期しない?もうデートじゃない?』
画面ではデモプレイが始まり、あちこちで爆風が轟いている。
それを眺めながらシイコの言葉を反芻する。
デート?
いや、白石がまさかそんなつもりなわけないよな。
「違うって。ただゲーム探しに行くだけ」
『でも、二人きりでしょ?じゃあデートじゃない?』
否定してもシイコはデートで押してくる。
「でもなぁ、デートするってイメージ無いんだよな」
『実は意識してるかもよ?良かったじゃん』
「いやいや、ないって」
そうは言いつつも、一度言われてしまうとどうしても意識してしまう。
あの白石とデート?
「シイコと二人ならデートってイメージも湧くんだけどな」
『ざこ!なんでそこで私が出てくんの』
「シイコとなら、一日中話し続けられるし、何しても楽しめるだろ?」
画面の向こうで息を飲む音が聞こえる。
よく考えたらすごいこと言ってんな……
急に恥ずかしくなってくる。
『いまは、隣の子とのデートの話でしょ。私とのデートの話はまた今度!』
「隣の子は話さないから、一日中ほぼ無言でもおかしくないんだぞ?」
白石と休日に二人きりとか、会話続かなくて苦痛な可能性まであるぞ。
『そこは、ナオが頑張って話しかけなさいよ。私が保証してあげる。それはデート!』
「いや、シイコに保証されても仕方ないだろ?」
『いいから、これはデートだからオシャレくらいして行きなさいよ!』
デートか。
まぁ、違ったとしても身だしなみくらい整えてバチは当たらないか。
「で、どんな格好すればいいと思う?」
『そんくらい自分で考えなさいよ。ざこ』
通話が終わっても、デートという言葉が頭から離れない。
白石とデート?
ずっと、かわいいと思っていて、最近ようやく少しだけ話せるようになったあの白石と?
いや、下調べだ。たぶん。そういうことにしておいた方が楽だ。




