一章おまけ ヒマリ教授の鉄道講座(?)その1
本編の熱気から一転。
どこからともなく現れたのは、マイクと台本が置かれたラジオブースのような謎の空間である。
「『YouTuberの旅行オタクと方向音痴の魔法少女』の読者のみなさん! ヒマリ教授の鉄道講座のコーナーへようこそ」
「ようこそ!」
ピンと背筋を伸ばし、なぜか白衣に身を包んだヒマリがカメラ(?)に向かって優雅にお辞儀をすると、その横からアサが元気よく飛び出してきた。
「私は、このコーナーの進行を担当をするヒマリです。よろしくお願いしますね」
「みんな大好き! メインヒロインのアサよ! よろしくねっ」
アサは胸を張り、カメラに向かってバッチリとピースサインを決める。
「さて、このコーナーでは、この物語のメインヒロインである私達2人で、要所要所の解説をおこなっていくものになっています」
「まあ、小説である以上、ネタバレを避けるために必要最低限の情報のみに絞らせてもらうわ。コラムでは、先の展開の匂わせとかも一切しないから安心してちょうだい」
「というわけで、今回この記念すべき第一回のコーナーでやるテーマは……『なぜこのコーナーを作成したのか!?』です」
「か!?」
ヒマリのやけに芝居がかったタイトルコールに、アサが目を丸くしてエコーのように復唱した。
「読者のみなさん、驚いたでしょう。本編が終わったと思ったら、どうしていきなりこんなわけのわからないコーナーが始まったのか、気になりませんか? 気になりますよね? というわけで初っ端である第一回目は、このコーナーの存在理由を解説していきます」
「……実は第一章の時点で、物語に関して語れることがまだ何もないのは内緒だよ」
アサが口元に手を当ててコソコソと視聴者へ耳打ちすると、ヒマリの冷ややかな視線が突き刺さった。
「はい、そこのオレンジ髪、静かに。……コホン。さて、このコーナー自体はもともと、物語内で登場した鉄道の豆知識を、ハルト君とそこのお転婆ヒロインで解説していく『ラジオ原稿風のコラム』になる予定でした」
「あら? なんかあっちからカンペが出てるわよ」
アサはブースの外、虚空に浮かぶスケッチブックを指差して文字を読み上げ始めた。
「えーっと……『もともとこの作品自体、個人でYouTubeアニメをやろうとして作った企画で、アニメやキャラクターを通して、鉄道の魅力を知ってもらう作品になる予定だった』……?」
「だけど個人でYouTubeアニメなんて作れるはずもなく、作者は一度この作品から離れていたそうなんです。しかし! そこから紆余曲折を経て、今こうして小説投稿サイトにて私達の物語がテキストとして描かれている! というわけなのです」
ヒマリは白衣を翻し、力説する。メタな裏事情の暴露に、アサはニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべた。
「実はこのコーナー名やそこの紫髪メガネヒロインも、作者がたい」
「サイレントビーム!」
「ムオッ!? ムッムッムゥ!?」
ヒマリの指先から放たれた魔法の光が直撃し、アサの口がピタリと塞がれた。物理的に声帯を封じられたメインヒロインは、抗議の声を上げることもできずにもがいている。
「ふぅ~。危ないところでした。あっ、読者の皆様は気にしなくて結構ですよ。そこのオレンジ髪によって、少し機密情報が漏れかけていただけですので」
ヒマリは眼鏡のブリッジを中指でスッと押し上げ、何事もなかったかのように微笑んだ。
「ムゥ……っ」
涙目で睨みつけてくるアサを完全にスルーし、ヒマリは台本に視線を戻す。
「実はこのコーナーも、本当は本編で語りきれなかった『鉄道豆知識の解説コーナー』をやろうとしていたのですが、大人の都合により、当面は作品の裏話を話すコーナーになったというわけなんです」
「ムゥー!」
「というわけで、今回のヒマリ教授の鉄道講座はここまで。それではみなさん、また次回お会いしましょう」
ジタバタと暴れるアサを背景に、ヒマリはにこやかに手を振り、記念すべき第一回のコーナーは強引に幕を閉じたのだった。




