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Youtuberの旅行オタクと方向音痴の魔法少女  作者: エアポート快特
第7.5章

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7.5章閑話2

窓の外に広がる茜色の空を、うみは、ベッドの上から静かに眺めていた。

消毒液の匂いと、廊下の奥から響くナースコールの音だけが、病室の時間を刻んでいる。


ふと、窓ガラスに映り込んだ影に、うみの視線が止まった。

反射越しに映るのは、ベッドの陰に隠れるようにして佇む、線の細い青年の姿。


「……いつまで隠れてるつもり?」


うみは、振り返りもせずに、そう声をかけた。


「……ばれてた?」

「バレバレよ。あんたの気配、忘れるわけないでしょ」


そらは、観念したように、物陰から姿を現した。


「座ったら? そこに突っ立ってられると、目障りだわ」

「相変わらず、素っ気ないね、お姉ちゃんは」


そらは、苦笑しながら、ベッド脇の丸椅子に、浅く腰を下ろした。

うみは、ちらりと弟の顔を見やると、すぐにまた、窓の外へと視線を戻す。


しばらくの沈黙のあと、うみが口を開いた。


「ねえ、そら」

「なに?」

「どうして、お母さんを封印したの? そして、どうしてファーベルのところに行ったの?」


そらは、一瞬だけ、表情を強張らせた。

けれど、それもすぐに、いつもの飄々とした笑みの下に隠れてしまう。


「――お母さんは、お姉ちゃんばっかり可愛がってたでしょ?」


そらは、窓の外に視線を投げながら、静かに言葉を続けた。


「しかも、お姉ちゃんは強くて、優しい。いつも、僕を守ってくれる。……だから、羨ましかったんだ。嫉妬してたんだと思う」


その声には、悔しさとも諦めともつかない、複雑な色が滲んでいた。

うみは、何も答えず、ただ、弟の横顔を見つめていた。


そらは、ふと、思い出したように尋ねた。


「――ハルトさんのこと、聞いてもいい?」

「なに」

「お姉ちゃんにとって、あの人は?」


うみは、少しの間を置いて、静かに答えた。


「あいつは、私の大事な相棒よ」


その言葉に、そらは、小さく頷いた。


「……そっか」


そう言うと、そらは、椅子から静かに立ち上がった。


「もう行くの?」

「うん。ファーベル様が、待ってるから」


うみは、小さく息を吐いた。


「はぁ。あんた、結局、何も変わらなかったのね」

「――いいや」


そらは、うみの目を、まっすぐに見た。


「変わったよ」

「……そうかもね」


二人の間に、静かな沈黙が横たわる。

窓の外では、茜色だった空が、少しずつ、群青色に沈み始めていた。


「――また会ったら」


うみが、ぽつりと、口を開く。


「今度は、コテンパンにしてあげるわ」

「うん。期待しておく」

「……だってそら。あんた、私も殺そうとしたでしょ?」

「うん」

「『うん』じゃないわよ。……ほんと、生意気な男に育ったわね」


そらは、くすりと笑った。


「お姉ちゃんだって、だいぶ野蛮になったんじゃない?」

「そんなことないでーす!」


うみが、むっとした顔で言い返す。

その、いつもの調子に、そらは、少しだけ泣きそうな顔で笑った。


「――またね、お姉ちゃん」

「ええ。また会いましょ」


そらは、最後にもう一度だけ振り返ると、静かに病室のドアの向こうへと消えていった。

一人残されたうみは、しばらくの間、弟が座っていた丸椅子を、じっと見つめていた。

やがて、視線を窓の外へと戻す。

群青の空には、いつのまにか、小さな星が一つ、瞬き始めていた。

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