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Youtuberの旅行オタクと方向音痴の魔法少女  作者: エアポート快特
第七章

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105話 決別

「――ハルト君、アサ。二人は、そらを」


ヒマリの声は、震えながらも、驚くほど静かだった。


「デストロイは、私が」

「でも、ヒマリ……!」


アサが、思わず声を上げる。

だが、ヒマリは、剣を構えたまま、一歩も引かなかった。


「これは、私の役目です」


そう言い切った横顔に、迷いはなかった。

漆黒の甲冑を纏った異形が、地響きを立てながら、突進してくる。


「――くっ……!」


ヒマリは、その一撃を紙一重で躱し、体勢を低く保ったまま、間合いを見極めた。

拳が、コンクリートの床を叩き割る。

破片が、頬をかすめて飛んでいった。


(お父さん)


胸の奥で、その言葉が、静かに反響する。

デストロイと呼ばれるこの存在が、かつての父の姿と、どこまで重なるものなのか。

そのすべては、もう、確かめようがない。

だが、あの日――過去と決着をつけた、あの瞬間から、ヒマリは知っていた。

この痛みは、敵ではない。


「――ソード・グローリー」


静かな声と共に、ヒマリの体を、澄んだ青白い燐光が包み込んだ。

そらとの戦いで初めて引き出したその力は、今、以前よりも遥かに滑らかに、彼女の意志へと寄り添っていた。


「――ぐ、るぁあああ……!」


デストロイが、咆哮と共に、両腕を大きく振りかぶる。

だが、その一撃が振り下ろされるよりも早く、ヒマリの姿は、既にその懐に潜り込んでいた。


「これで、終わりにします」


呟きと共に、光を纏った剣が、一閃する。

甲冑のような黒い装甲に、幾筋もの光の線が走った。


「――ッ!」


反動で弾かれたヒマリが、後方に大きく跳び退る。

デストロイの巨体が、大きくよろめいた。


「まだ……!」


ヒマリは、剣を構え直し、もう一度、正面から向き合った。


「これが、最後です」


その声には、憎しみも、恐れもなかった。

ただ、静かな、決別の響きだけがあった。


「お父さん。……ずっと、憎んでいいのか、わからなかった」


剣先に、これまでで最も強い光が、集まっていく。


「でも、今なら言えます。私は、あなたが、大嫌いです!」

「――ぐ、るぁ……!」


デストロイが、最後の力を振り絞るように、突進してくる。


「だから、もう」


ヒマリは、その突進を真正面から受け止め、剣を、深く突き立てた。


「安らかに、眠ってください」


光が、爆発的に弾けた。

漆黒の装甲が、内側から罅割れ、まるで砂のように、静かに崩れ落ちていく。

その中心――巨大な異形の輪郭が消え去った後に残ったのは、何もない、ただの光の粒子だけだった。

そこに、人間の姿は、もうなかった。

ただ、最後の光が、ふわりと空へと昇っていくのを、ヒマリは、剣を下ろしたまま、じっと見つめていた。


「――お疲れ様、でした」


小さく、それだけを呟く。

頬を伝う涙を拭うこともせず、ヒマリは、崩れ落ちる寸前の体を、なんとか支えて立ち続けていた。

離れた場所で、その一部始終を見ていたそらの目に、ほんの一瞬――何かを堪えるような、複雑な色が過った。

だが、それもすぐに、いつもの静かな無表情の下に、覆い隠されてしまう。

状況はまだまだ変わらないからである。

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