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Youtuberの旅行オタクと方向音痴の魔法少女  作者: エアポート快特
第七章

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102話 緊急速報

総務省本庁舎、異界管理局の執務室。


土方の机には、新宿駅の構内図が広げられていた。改札、通路、コンコース――赤いペンで幾つもの印がつけられている。


「――ファーベルの本拠地は、新宿駅構内に生成された異空間内。これで、間違いないんだな」


土方の問いに、ハルトは頷いた。


「はい。……その、うまく説明できないんですけど、確信があります」


一週目の記憶。

そらに案内され、そのまま足を踏み入れた、あの円形の広間。

『今』の自分は、まだそこに一度も足を踏み入れていない。

それでも、未だ確信だけは鮮明に残っていた。


「ハルト君の勘、これまで何度も当たってますからね」


ヒマリが、静かにそれを補強するように言った。


「異空間への入口は、小田急線改札付近――以前、そらに案内された場所と、ほぼ同一の座標だと考えられます」

「入口の座標が特定できているなら、話は早い」


土方は、構内図の一点を指で叩いた。


「問題は、内部の防衛体制だ。カイトから得た情報によれば、そらを含む複数の"手駒"が、まだファーベルの下に残っている」

「そらは……」


アサが、小さく声を落とす。


「アサ。無理に、割り切らなくていい」


ヒマリが、その肩にそっと手を置いた。


「でも、いざという時、私が足を引っ張るわけにはいかないから」


アサは唇を引き結び、まっすぐに土方を見た。


「――続けてください」


土方は小さく頷き、資料をめくった。


「栗島邸の一件以外にも、悪魔化した人間達への対処で、こちらの戦力も消耗している。浅野みゆきの目覚めもまだ先になるだろう。本来なら万全を期して、あと数週間は準備期間を置きたいところだが……」

「でも、悠長にはしてられない……ってことですよね」


ハルトが、その先を引き取るように言った。


「カイトの言葉を借りるなら、"そう遠くないうちに"、だ。ファーベルが先に動くのを待つより、こちらから機先を制する方が、まだ勝算がある」


土方が、そう言いかけた、その時だった。

執務室の壁際に設置された、業務用の通信端末が、けたたましい警報音を鳴らし始めた。


「――なんだ」


土方が、即座に端末に手を伸ばす。

画面に映し出されたのは、緊急事態を示す赤い文字と、都心部の地図だった。


「新宿駅……!?」


ハルトが、思わず声を上げる。


『こちら現場対応班! 新宿駅構内、南口付近にて巨大魔力反応を検知! 複数の一般人が"悪魔化"の様相を呈しており、既に負傷者多数……!』


無線越しの声は、明らかに焦りを帯びていた。


『繰り返します! 新宿駅構内で、悪魔化した人間による暴走が発生……! 該当エリアの一般人避難、急ぎ進めていますが、対応が追いつきません……!』


一瞬にして、部屋の空気が凍りついた。


「悪魔化、した人間……?」


アサが、青ざめた顔で呟く。


「まさか……ファーベルが……!」


ヒマリの声にも、隠しきれない緊張が滲んでいた。

土方は、無線機を握りしめたまま、鋭くハルトたちを見た。


「――予定を早める。準備が整うのを待っている猶予は、もうない」

「行くしかない、ってことですね」


ハルトの声も、既に震えていた。

恐怖と、そして――ようやくこの時が来た、という覚悟の入り混じった震えだった。


「土方さん。僕らを、行かせてください」

「……ああ」


土方は、短く頷いた。

窓の外、都心のビル群の向こうに、ハルトの目には見えないはずの禍々しい光の柱が、確かに立ち上っているような気がした。

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