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Youtuberの旅行オタクと方向音痴の魔法少女  作者: エアポート快特
第六章

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99話 再び

咆哮が、書斎の残骸を震わせた。

崩れた天井から差し込む光が、瓦礫の中に横たわるハルトとチハルの姿を、青白く照らしている。

アオイは、震える両足を叱咤しながら、二人を背に庇う位置に立っていた。


「――来い」


低く、それだけを呟く。

獣と化したアキラが、咆哮とともに腕を振り下ろす。

アオイは、咄嗟に展開した光の盾で、その一撃を受け止めた。


「くっ……!」


腕に伝わる衝撃が、骨まで軋ませる。

盾の表面に、亀裂のような光の筋が走った。


――もう、三度目だ。


一撃ごとに、盾の強度が削られていく。

魔力の残量も、目に見えて減っていた。

指先が、かすかに痺れ始めている。


「ハァ……ハァ……」


肩で息をしながら、アオイは、それでも足を引かなかった。

背後で、ハルトとチハルが、まだ目を覚まさない。

二人を巻き込むわけにはいかない。

ただ、それだけが、今のアオイを支えていた。


「ぐるるるるるッ……!」


アキラだったものが、再び腕を振り上げる。

今度は、先ほどよりも明らかに速い。


(間に、合わない――)


アオイの頭の中で、冷たい確信が過った。

盾を張り直す時間はない。

かといって、避ければ、後ろの二人が無防備になる。


爪が、振り下ろされる。


――その時だった。


「――間に合えぇー!」


掠れた声とともに、光の壁が、アオイの前に割り込んで展開された。

爪の一撃が、その壁に叩きつけられる。

轟音とともに、壁は砕け散ったが、衝撃は、確かに殺されていた。


「ハルト君……!?」


アオイが、驚いたように振り返る。

そこには、片膝をつきながらも、右腕を前に突き出したままのハルトの姿があった。

顔色は、紙のように白い。

それでも、その目には、先ほどまでの朦朧とした色はなかった。


「悪い……。ちょっと、寝過ぎた」


軽口を叩きながらも、立ち上がる足は、小刻みに震えている。


「無茶です……! まだ、その身体で――」

「無茶なのは、お互い様でしょ?」


ハルトは、痛みに顔をしかめながらも、笑ってみせた。


「アオイだって、もう魔力、ほとんど残ってないんじゃない?」


アオイは、何も言い返せなかった。

図星だった。


「……僕は、さっき、決めたんだ。アオイと、チハルちゃんを守るって」


ハルトは、震える拳を、強く握りしめた。


「一回気絶したくらいで、その約束、破るつもりはないよ」

「ハルト君……」

「それに――」


ハルトは、アキラの方を、まっすぐに見据えた。


「一人で全部抱え込もうとするの、アオイの悪い癖だよ。……知ってる、僕の周りにも、そういう人、いっぱいいるから」


アオイの目が、微かに揺れた。


「ぐるるるる……」


アキラだったものが、苛立たしげに唸りながら、再び間合いを詰めてくる。

地面が、その一歩ごとに軋んだ。


「――行くよ、アオイ」


ハルトが、右手にありったけの光を集める。

先ほどより、光量は明らかに少ない。

それでも、その光は、消えることなく灯っていた。


「はい」


アオイも、震える両手を、もう一度構え直す。


「今度は、二人で受け止めます」


咆哮とともに、アキラの一撃が、再び振り下ろされてきた。

ハルトとアオイは、互いの背を庇い合うようにして、その衝撃に、正面から立ち向かった。

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