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Youtuberの旅行オタクと方向音痴の魔法少女  作者: エアポート快特
第六章

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94話 調査前

総務省本庁舎、異界管理局の執務室。

窓の外では、朝の光が、まだ柔らかい角度で差し込んでいた。

机の上には、ハルトが持ち込んだ写真と書状の写し、そしてノートの内容を書き写したメモが並べて広げられている。


土方は、それらをしばらく、黙って見つめていた。

書状の写しを指先でなぞるように、視線を動かしていく。


「――家の、守り、絶やすことなかれ……」


土方は、小さくつぶやく。


「家の守りとは一体……アオイさん、何か聞いていますか?」


ヒマリの質問にアオイは首をゆっくりと横に振る。


「いえ。父からは何も聞いていません」

「……まあいい。どっちみち今日には、全てわかることだ」


そう。

ハルト達は今日、栗島邸への調査を実行する。

土方は、資料を軽く束ね直しながら、ヒマリとアサの方に目を向けた。


「わかってるな、ヒマリ、そして浅野家の令嬢。緊急事態以外は、栗島家への侵入はしないように」

「……そんなに言われなくてもわかってるわ。何回くぎを刺すのよ」


アサが、少し不満そうに眉を寄せる。


「土方さん、なんでそんなに……」


ヒマリが、疑問を挟もうとする。

土方は、アオイとハルトの方に、じっと視線を向けた。


「お前ら外の二人が入ると余計に話がこじれて、対処が面倒くさくなる可能性がある。栗島家の問題は、当人たちで解決するのが一番早い」


その言葉に、ヒマリもアサも、それ以上は何も言わなかった。



――そうして、時間は少し進み、四人は栗島邸の前に立っていた。

高い塀に囲まれた邸宅は、静まり返っている。

門の向こうから、人の気配はまるで感じられなかった。


「と、先ほど土方さんは言っていましたが……」

「まあでも、私もあのおじさんの言う通りだと思うわ。私もヒマリも、自分達の問題によくわからない赤の他人が突っ込んでくるのは嫌でしょ?」


アサが、腕を組みながらあっさりと言った。


「それもそうですね」


ヒマリの頷きに、アオイが小さく頭を下げる。


「二人とも、お気遣いありがとうございます」

「……別に、気遣いじゃないわ。ただ、自分がされて嫌なことをするのが嫌なだけ」


アサは、そっぽを向くようにして答えた。

ヒマリは、ハルトの方を向いた。


「アオイさん、それにハルト君」


ヒマリは一拍置いた。


「わかってると思いますが、緊急事態が発生した際は私達も中に入り合流させていただきます」


有無を言わさぬ響きが、その声にはあった。


「うん。心強くて助かるよ」


ハルトが、少し安心したように笑う。


「まったく。ハルト君は無茶してばかり。一体誰の影響かしら?」


アサが、やれやれといった様子で、小さく息を吐いた。


「いつも無茶してばかりの相棒が隣にいるからではないですか?」


ヒマリが、間髪入れずに切り返す。

悪びれた様子は、欠片もなかった。


「……あんたにだけは言われたくないわ、ヒマリ」


アサはジロリとヒマリを睨み返した。

それが面白くて、ハルトはブッと息を吹きだして笑ってしまった。

それにつられて、雰囲気は一気に和やかになった。



「行ってしまいましたね……」

ヒマリはハルトとアオイが入っていた門の奥を見つめた。

「さてと、じゃあ私達は少し休みましょ?」


アサはそう言って、鞄からお茶のペットボトルを二本取り出した。

門の脇の壁際に二人で寄りかかる。


「そうですね。ここで気を張っていても、特にできることはありませんし、私達はお話でもしてましょうか」


ペットボトルの蓋を開ける小さな音が、静かな路地に響く。


「うんうん。今はそれが一番! じゃあまずは、ハルト君に関するアレコレが話していきましょう!」


アサが、身を乗り出すようにして、目を輝かせた。


「……全く、あなたは彼のことが大好きなのですね」


ヒマリが、呆れたように肩をすくめる。


「……それ、自分にブーメランとなって返ってきてるの、自覚してる?」


アサが、口の端をにやりと持ち上げた。


「はて? 何のことでしょうか?」


ヒマリは、涼しい顔でそっぽを向いた。

とぼけ方が、いっそ堂々としすぎていた。

門の向こうから吹いてくる風だけが、二人の間を、静かに通り抜けていった。

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