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Youtuberの旅行オタクと方向音痴の魔法少女  作者: エアポート快特
第五章

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85話 カップル?

ハルトとアサは午後観光し、夕方ホテルに帰ってきて食事をした。

鬼怒川温泉なので温泉に入っているはずだが、なぜかお昼以降そこまでの記憶は一切なく、気がついたら夜、電気を真っ暗にして布団を敷いて寝る準備をしていた。


今回は旅費を安くするために、二人で同じ部屋を借りていた。

男女二人が同じ部屋を借りているわけだから、当然そういう可能性は考えられる。

ハルトは今の状況をふと冷静になって考えてみた。

隣にアサが寝ていて、この部屋には自分とアサしかいない。

ハルトは一瞬変な考えが頭に浮かびかけたが、自分にはそれを起こす勇気はなく、すぐに顔を赤くしながらその考えを振り払った。


しかしそんなハルトの煩悩をよそに、アサはハルトに声をかけてきた。


「ねえ、ハルト君」


ハルトはそこで悲鳴のような驚いたような声をあげてしまった。


「は、はい! 何でしょう、アサさん!」

「もう何よ。急に驚いた声を出して。寝る直前なんだから大きな声をあげないでくれる?」


アサはどうやら不機嫌になってしまったようだ。

ハルトは「ごめんなさい」と謝るほかなかった。


アサはその後しばらく黙った後、ポツリと続けた。


「ねえハルトくん。」


ハルトは、今度ばかりは驚かなかった。


「なに?」


アサは言った。


「ハルト君は私のことをどう思っているの?」


アサの声はどこまでも無表情だった。


「どうってどういうこと?」

「どうもこうもないわよ。好きとか嫌いかとか、いろいろ答えはあるでしょ? ……そういうのを教えてちょうだい」


ハルトは「好き嫌いか」と一瞬だけ考え込んだ。

ふと、ハルトの頭の中にはあの夜、アサからかかってきた電話での質問を思い出した。


『もし、私がいなくなっても、YouTube続ける? 鉄道好きでいる?』


そして次に、ラストから言われた言葉を思い出す。


『守るべきもの、捨てるべきもの。何を大事にし、何を諦めるか、判断を間違えてはいけないよ』


最後にハルトは、その時の選択が迎えた結末を思い出した。

彼はもう、二度と後悔はしたくなかった。

なので、正直に答える。


「多分、僕はアサのことが好きだ。もしかしたら、今は鉄道や旅行よりも好きかもしれない」


アサはそれに対して「え?」とだけ言った。

ハルトとアサの間に気まずい時間が流れる。

もうこれ以上答えは返ってこないかなと思ったハルトは、目を閉じ、意識を闇の中へと沈ませようとしていた。


だけどふと、アサがポツリと呟く。


「私はわからないの。ハルト君のことを好きなのかどうか」


ハルトは意識を戻し、「うん」とだけうなずいた。

アサは続ける。


「確かに私はハルト君のことを大切な相棒として、パートナーとして認識はしている。でも、恋愛的な感情を、考えることがなかったとは言わないけど、私はそこから目をそらしてきてしまった。今この時だからこそ思うの。私はハルト君に対して何か特別なものを思いを持っているのではないかなって……。私はそれが、なんだかすごく怖い」


ハルトは聞いた。


「怖いってどういうこと?」

「わからない。でも、なんだか怖いんだ」


ハルトは「そっか」とだけ言った。

アサは次に、何でもないことのように言う。


「ねえ、ハルトくん、キスしてよ」


ハルトは「え?」とだけ答えた。

ハルトの頭は一瞬で処理落ちしてしまったようだ。


「何よ、二度も言わせないでちょうだい!」


アサは少し怒ってしまったようだ。

ハルトは考えた。

これは今の自分にとって正しい選択なのかどうか。

今ここでアサに対してこれ以上の好意を示すことは、果たして本当に良い結果を生むことなんだろうか。

10秒ほど考えた末に、ハルトは一つの結論を導き出した。


「ごめん、アサ。僕はアサの本当の名前を知らない。」


アサは意外にも、何も言い返してこなかった。


「前、どこかで聞いたんだ。アサの名前のこと」


本当の名前が封印されているというのは、考えてみればおかしな話だ。

誰もアサのことを苗字でしか呼ばない。

いや、呼べないというのが正しいのかもしれない。

そして、それはとても寂しいことだと思う。

アサは何も答えなかった。


ハルトは続ける。


「だから、僕がもしアサの寂しさを救うことができたなら、その時またアサに気持ちを伝えるよ」


アサはそれに対して、小さくつぶやいた。


「……バカ」


ハルトは一瞬、自分が恋愛漫画の主人公になったようだと心の中で茶化した。

しかし、事態の重さを考えれば、これは自分が想像している以上に、アサに対して深く重くのしかかってきていた荷物だったのかもしれないとも思う。

だからこそハルトは、自分がどのような状況に置かれていても、相棒として、大切な仲間として、そしてアサを大切に思う者として、彼女の荷物を半分背負える人間になろうと、ずっと前に決めていた。


翌朝、ハルトとアサはホテルをチェックアウトした後、鬼怒川温泉のお土産屋さんでヒマリのお土産に、鬼怒川の日光プリンを購入した。

ヒマリにその写真を送ると、彼女はとても可愛らしい小動物のアニメキャラクターのスタンプを送ってきた。

非常に彼女らしいとハルトとアサは笑いあった。。


ハルトとアサは帰りの特急列車に乗り込み、浅草方面へ帰宅した。

そのまま霞ヶ関の総務省異界管理局の事務所に直行し、ヒマリと土方の待つ部屋を訪れた。

どうやら、彼らに知らされていない新しい情報が総務省異界管理局の上官の元に入ったようである。

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