↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
35/52

EP31〜内紛〜

挿絵(By みてみん)


 紫導家リビング——。


 あれから1週間が経過していた。


 嵐華(らんか)はリビングのソファーに座っていた。


 背中を丸くし、視線は落ちたまま……。


(私は……お父さんやお母さんみたいに……”守る人”になれないんだ……)


 膝に顔を隠し、泣くのを我慢していた。


 それはリビングに緋織(ひおり)、愛里(あいり)、瑞帆(みずほ)がいたから……。


 妹達の前で弱気なところは見せたくない。


 だが、涙を我慢するのが精一杯だった。


 ……


 戦闘モードOFFでの試験——。


 試験終了後、倒れ、状態が落ち着いた後はすぐに帰ることになった。


 嵐華が倒れて、流石にIRISの業務へ従事することが難しくなった神威(かむい)と黒葉(くろは)も帰宅。


 試験結果は自宅から理解のあった幹部——三枝(さえぐさ)へ送る。


『確かに受け取ったよ……結果はもう出ているかもしれないが……善処させてもらうよ』


 黒葉は電話越しにお辞儀をする。


「……よろしくお願いいたします」


 だが、翌日には上層部から非情の通達が届く。


『IRIS隊員、紫導嵐華少尉は処遇が決定するまで自宅待機とする』


 それはもう「戦力外通告」だった。


 通告後、嵐華は高校には普段通りに通う。


 高校の中ではいつも通り笑顔にしている……つもりだった。


 同級生は嵐華の異変に気づいていたが、緋織の視線が訴えていた。


 そっとしてあげてほしいと……。


 高校が終わり、本来ならIRISへ行く予定だった。


 だが、IRISにも行くことは許されず、ただ自宅に帰るだけ。


 そして、今日は緋織は任務があった為、1人でタクシーに乗って自宅に帰る。


 正門前にタクシーが到着する。


 自分で正門の鍵を開け、庭園を抜けると、自宅の玄関が見える。


 いつもの風景のはずなのに、嵐華は全てが遠い世界のように見えていた。


 玄関から入り、自動で点灯する照明を見る。


 神威も、黒葉も、緋織も、愛里も、瑞帆も……。


(誰もいない……私は何もしない……出来ない……)


 靴を脱ごうとするが、足元がふらつき、バランスを崩してしまう。


 そのまま床に手を付き、床をずっと見つめていた。


 すると、床に水滴がぽたぽた落ちる。


 視界が歪む……心が折れる音がした。


「あ……あぁ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」


 家族全員が「守る人」として戦っている。


 自分は何もなれない……。


 悔しさ、悲しさ、情けなさ……。


 様々な負の感情が一気に押し寄せていた。


 今までの努力はなんだったのか?


 雷で死んでいた方が良かったのか?


 そんなことまで考えるようになっていた。


 そのまま床に寝転んでしまう。


(私は……もう……)


 カチッ——。


 ……


 数時間後、神威達は5人で車に乗り、自宅の駐車場へ。


 車から降りる中、瑞帆が自宅を見つめながら言う。


「嵐華姉……大丈夫でしょうか?」


 1人で自宅にいる嵐華を心配していた。


 その横で黒葉が笑顔で答える。


「なので、今日は美味しいものを食べて、嵐華を労いましょう♪」


 愛里も元気よく返事をした。


「うん♪お父さんと最高のご飯作るぞ〜!!」


 神威は鼻で笑う。


「俺に合わせられるのか?」


「料理になると本当に張り合いますね……」


 愛里と神威のやり取りに少し笑いながら、緋織は玄関に向かう。


 そして……ドアを開ける。


「ただいま戻りました」


 静かな空間。


「嵐華〜?」


 緋織が大きな声を出すが、反応がない。


(リビングにはいないのでしょうか?)


 靴を脱ごうとして、床を見る。


 緋織は床に付着しているものに、目を疑った。


(これは……血!?)

「嵐華!!」


 緋織が鬼気迫る声で叫びながらリビングへ向かう。


 その声を聞き、神威達も緋織の後を追う。


「嵐華!!どこですか!?」


 リビングに入ると血の痕があり、それを目で追う。


 階段の手前。


 嵐華が腕から血を流し、ぐったりしていた。


 緋織はすぐに嵐華の側にかがみ、肩を揺らす。


「嵐華!!嵐華!!しっかりしてください!!」


 嵐華はか細い声で答える。


「……緋織……?……おかえり……暴発……しちゃった……」


 暴発——。


 もう克服していたと思っていた。


 いや、克服していたのに……メンタルが限界だった。


 緋織に後悔の念が宿る。


「……すみません……一緒に帰れば……」


 嵐華は必死に笑う。


「……大丈夫……私が……弱くて……情けないだけ……だから……」


 神威達も駆けつけ、嵐華の周囲に集まる。


「嵐華!!」


 神威達の顔を見ると、嵐華の目から涙が溢れる。


「……ごめん……なさい……」


 そういうと力無く、意識が途絶えた。


「すぐに救急車を呼ぶ!!」


 神威は救急に連絡を入れ、嵐華は病院に運ばれた。


 診断の結果は、精神的疲労による衰弱。


 ただ、暴発による怪我は最小限だった。


 左腕に深い切り傷だけで済んだ。


 5人は嵐華を1人にしたことを後悔する。


 神威は病室から出て、待合室の長椅子に座り、手を握り合わせ、俯く。


(俺は……嵐華のことを理解してやれてなかったのか……)

(試験の時、ショックで倒れたのに……次の日には笑顔で喋っていた嵐華を”強い子”だと勝手に思って……)

(それがこのざまか……俺は……父親失格だ……)


「神威さん……落ち込む暇なんて……無いですよ?」


 声に反応し、神威が顔を上げると、黒葉が前に立っていた。


 黒葉の目は涙で赤い瞳がさらに赤く染まっているように見えた。


「……黒葉……俺は……」


「必ず……嵐華をIRISに復帰させます」

「あの子の居場所を……絶対無くさせません」


 黒葉の言葉に神威は少しだけ微笑む。


(強いな……黒葉は……)


 一息つき、神威は立ち上がる。


「そうだな……やるべきことをしないとな」


「……はい♪」


 2人は病室へ戻ると、嵐華を看病していた緋織達に話す。


「お前達は明日からIRISは休んでくれ」

「嵐華の側にいてやってくれ」


 緋織は嵐華を見ながら答える。


「……お父さん達は……どうするんですか?」


 緋織の質問には黒葉が答えた。


「私達は……嵐華を……IRISを守る為に戦います」


 その後、嵐華は1日だけ入院し、次の日にはまた自宅へ帰れることに。


 嵐華、緋織は高校も休み、常に自宅。


 愛里、瑞帆は中学へは通学するも、IRISへは行かず、自宅へ直帰する。


 そして、神威と黒葉は戦う為の準備を始める。


 ……


 数名の幹部……神威と黒葉と同じく、嵐華の処遇に納得がいかない幹部3名が共に大将執務室で話し合う。


 三枝が2人の紹介をする。


「まぁ自己紹介は必要ないと思うが、俺と同時期に幹部になった長谷部(はせべ)と倉田(くらた)だ」


「よろしく」


「よろしくお願いします」


 神威はお辞儀をし、言葉にする。


「集まってくれて、感謝する……」


 倉田が明るく返事をする。


「そんなお辞儀なんてしなくても良いですよ♪」

「私達も先輩幹部には思うところはありますから〜……絶対嵐華ちゃんを助けましょう」


 黒葉もお辞儀をする。


「ありがとう……ございます」


 神威と黒葉の姿勢に長谷部は目を瞑り、自覚する。


「やはり……君達はIRISのトップにいるべき人達だ……がんばろう」


 そして、作戦会議が始まる——。


 最初に口を開いたのは神威だった。


「嵐華の処遇を覆すには、生半可な提案じゃ無理だろうな」


 黒葉も同意見だった。


「ええ、旧体制の幹部達が大半ですから……こちらの意見は全く聞く気がないでしょう」


 だが、長谷部が神威達に質問をする。


「気になってはいたんだが……君達は大将と大将補佐の役職をどう聞いている?」


 その質問に唖然とするも黒葉が答える。


「現場指揮の最高司令官という立ち位置と思っていますが……違うのでしょうか?」

「実際に役職に就く前にそう説明されましたが……?」


 三枝達は顔を合わせ、ニヤリとした。


「……突破口はある」


 神威が反応する。


「それはなんだ?」


「単純です……大将権限を行使します」


「権限を使う?使えるのか?」


 長谷部が説明をする。


「まず、大将と大将補佐は君達がなるまで10年ほど空席だったのは知ってるな?」


「ええ、適任者がいなかったと聞いていますが?」


「大将と大将補佐はな……本来、IRISの”最上級職”だ」

「その職に就く為には、IRISの幹部の承認ともう1つ、政府の承認がいる」


「……政府?国が承認する役職ということですか?」


「そうだ……私達は幹部になる際に色々と研修を受けてきたが、なぜ君達がここまで強気で改革出来ないか不思議だった」


 政府が承認する役職……それは幹部よりも上位の非常時権限や組織を動かす力も持つこと。


 今まで2人は権力に関心がなかったこともあり、自分達から規定を精査してこなかった。


 そもそも、そんな説明を隠しているとは思いもしなかった。


「権限を秘匿されてたってことか?……あいつら……」


 神威の怒りが込み上げる。


 三枝が宥めながらも言葉を続ける。


「全く適任者がいなく、政府からも追及されていたらしいからな」

「幹部を増やすだけではダメだったから、SSランクである君達を大将、大将補佐にしなければいけなかった」

「大将、大将補佐は隊員としても最強の称号でもあるから、君達以外は無理だろうしな」


 黒葉の表情が段々晴れていく。


「では……大将権限を使えば……嵐華を戻せるということですか?」


 だが、神威の頭はすでに冷静になっていた。


「いや……それを強引にすると、政府にも色々と追求されるな……」


「ああ……大将と幹部との確執、不適合……そして、最悪IRISの解体だ」

「そうなると国防軍にそのまま吸収される」


「そうなると……」


「そうですね……全員”軍人”になるかなと……最悪、国家間の戦争にも駆り出されます」


「それは避けたいな……」


 全員が考え込む。


 そして、三枝が意を決して口を開く。


「これは賭けだが……首を賭けるか?」


「「「「首?」」」」


 ……


 そして、現在——。


 嵐華がリビングで考え込む。


(私は……お父さんやお母さんみたいに……”守る人”になれないんだ……)


 その思いが頭の中でずっと流れる。


 そして、とうとう一つの選択肢が浮かぶ。


 ——IRISを辞める。


 隣に座っていた緋織は、何も言わない嵐華をずっと見ていた。


 聞いているか分からないが、緋織は声をかける。


「嵐華……嵐華がIRISを辞めるなら、私も辞めますので」


 嵐華は顔を上げ、目を見開く。


「……え?でも緋織は何も……」


 嵐華の質問にも緋織ははっきりと自分の意見を言う。


「守りたい気持ちのある人を辞めさせる組織なんて、こっちから願い下げです」

「そもそも正隊員にしたのはIRISなんですから、いらなくなったら捨てるなんてふざけてます」

「それにIRISだけが特別ではありません……別の国の組織に入るという選択肢もあります」

「能力者に国境はありませんから」


 その言葉を近くで聞いていた愛里と瑞帆も頷き、同調する。


「うんうん♪嵐華姉と緋織姉がいないIRISじゃ楽しくないし、私達まだ正隊員じゃないからすぐ辞めれるしね〜」


「私も守る人も守れる組織に入りたいです」


 2人とも笑っていたが、目は本気だった。


 緋織がさらに言葉を続ける。


「……それに、紫導家は元々”傭兵部隊”だったそうですからね」

「花梨(かりん)さん、左近(さこん)さん、右近(うこん)さん、それに氷華と炬乃恵も引き抜いて独立っていうのもありですね♪」


「え〜それいいな〜♪じゃあ、賢治さんも来てもらおうよ♪多分来てくれるよ?」


「そうですね……あとは……」


 3人が辞めた後のことを楽しく話しているのを嵐華は聞いて、涙が止まらなくなる。


 自分のせいで、また色んな人に迷惑をかけている。


 でも、それでもこうして助けてくれる妹達がいる。


「……みんな……ごめんね……」


 緋織はすぐに嵐華を抱きしめる。


「……本当に……優しすぎるんですよ、嵐華は」

「もっと甘えて良いんですよ?」


「……うん」


 涙は流れたまま、だが表情は少し穏やかになっていくのが、愛里達にも見えていた。


 その時——。


 玄関のドアが開く音が聞こえる。


「ただいま」


「ただいまもどりました♪」


 神威と黒葉が帰宅し、部屋の空気を一瞬で読む。


 神威は少し安堵しつつも、口を開いた。


「全員、席に座れ」


 リビングの食卓に6人全員が座る。


 空気は重たかった。


 嵐華の表情はまた暗くなっていく。


 そして、神威が口を開く。


「結論から言う……嵐華は辞めなくても良い」


 神威の言葉に嵐華は驚く。


「……え?なんで辞めるって……?」


 黒葉は微笑みながら嵐華を見る。


「私達は親ですから、嵐華の考えていることは分かりますよ」

「それに緋織達も勘付いていたでしょう?」


 嵐華は緋織達の方を見ると、3人共にっこりと微笑んでいた。


 神威はそのまま言葉を続ける。


「上層部に言ってきたよ」


 ……


 数時間前——。


 幹部を全員集め、神威と黒葉、そして友軍の幹部の三枝、長谷部、倉田の5人で提案書を提示する。


 その内容は——。


『大将、大将補佐、一部幹部の辞任による、IRIS内組織調査依頼について』


 一番古株の幹部——安西(あんざい)が声を荒げる。


「なんだ……これは!?どういうことだ!?」


 神威は表情を崩さず、答える。


「そのままの意味だ」

「俺達はIRISを辞める」

「IRISを辞めれば政府から事情を聞かれるからな……内部で何があったか調査してもらうのさ」

「そうすれば、IRISも綺麗になるだろう?」


 他の幹部も声を上げる。


「そんなことになるわけないだろ!?」

「IRISが無くなっても良いのか!?」


 黒葉が即座に質問する。


「そうですか……やはり政府に介入されると困るわけですね?」


「あ……」


 安西は口を歪める。


(バカが!!)


 神威が言葉を続ける。


「守る人間は守られたらダメなのか?」

「IRISの隊員は”消耗品”か?」

「そんな考えを持ってるなら、むしろ無い方が良いだろ?」


 反対しようとする幹部達は反論はしたい。


 だが、神威達が辞めるということはIRISからSSランクの能力者がいなくなり、さらにIRISどころか、国家間のパワーバランスを崩しかねない事態になる。


 それにSランク以上としても神威と黒葉のみ。


 この提案はまず政府が望むはずがない。


 そうなれば神威と黒葉に政府は味方し、今の「正規派」が吊し上げられる。


「……神威大将……そんな自分勝手に気分次第で組織運営されたら困るんだよ……」

「君の娘……紫導嵐華の処遇はもうほぼ決定しているんだ……何をしても……」


 安西が言い切る前に、倉田がデータである報告書を提出する。


「なんだ?これは……?……!?」


「これは、国際能力者連盟に送った紫導嵐華のデータを精査していただいた結果です」

「結果は……”正隊員として資質十分であり、最前線で戦える逸材”と結論が出ました」

「あとこれは……政府にも提出予定ですよ♪」

「あなた達の評価の不公平性を示す為にです」


 国際能力者連盟は各国の能力者組織のランク、適性評価に対し、第三者視点から精査を行える唯一の機関。


 その連盟が嵐華の正隊員としての資質を認めた。


 これはIRISの決定よりも優先度が高いものだった。


 嵐華がこのままIRISでの活動を許される何よりの証だった。


 この結果を突きつけ、神威は追い討ちをかける。


「嵐華の正隊員としての脂質が連盟にも認められている」

「本来なら俺の権限で戻しても問題ないが……どうする?」


(……この若造が!!)


 安西はさらに口を歪ませる。


 だが、ただでは転ばなかった。


「いいだろう……だが、紫導嵐華が本当に正隊員として続けられるのか……しっかり精査はさせてもらうぞ?」

「資質は十分なのは理解した……だが、実戦で通用するかを厳格に見させてもらう」

「その方がIRISにとっては良いんだろ?」


 問題を大きくしてIRISの外にも情報が回れば、正規派を排除しても印象は悪いまま、政府にも事情を聞かれるだろう。


 嵐華だけを特別扱いするわけにもいかない。


 絶妙なところを突いてきた安西に神威は少し歯痒く思うも、了承する。


「分かった、それで問題ない」

「だが、もし嵐華が任務をこなし、問題がなければ……責任を取ってもらうぞ?」


「……責任?」


「……ああ、上層部の総入れ替えだ」


 その言葉に全員が動揺する。


 黒葉がその声に対し、意を介さず、口を開く。


「ええ、名目上は”IRISの若返りの為の世代交代”です」

「構いませんよね?これまで好き勝手したのですから、当然のことです」


 全員の視線が安西に集中する。


 しばらく静寂が続き、重い口を開く。


「……分かった、だが、任務は選ばせてもらうぞ……これで公平だろ……大将」


 神威は全てに納得したわけではない。


 だが、神威は決めた。


「……分かった」


 嵐華を……娘を信じると——。


 ……


 紫導家リビング——。


「上層部の……総入れ替えですか!?」


 神威と黒葉の話を聞き、緋織が驚く。


 神威は淡々と答える。


「ああ、本気だ」

「次の候補として、俺らの同期組に声をかける予定だ」

「普段から能力者を物扱い、消耗品にしてきた奴らをこれ以上のさばらせておく訳にはいかん」

「お前らの為にも……IRISを根本から変える時だ」


 嵐華は信じられない様子で神威を見ていた。


「……本当に私……辞めなくても良いの?」


 だが、神威は一切甘やかさずに答える。


「それはお前の頑張りと覚悟次第だ」

「これは偏見じゃないぞ?」

「お前の強さは、俺と黒葉以外の中ではもうNo.1と言って良い……戦闘能力という面だがな」

「IRISの正隊員になって、まだ2ヶ月も経っていない時点でな」

「雷の恩恵があるのも事実だが、これはお前が能力を発現してからスイッチを習得するまでの”6年間”耐え抜いてきた努力の結晶だ」

「もっと胸を張れ」


 黒葉も続ける。


「しかし、能力のON/OFFの懸念があるのも実情です」

「なので……”結果”で黙らせます」

「私達の娘は……守られるだけの人間ではないと」


 その言葉に嵐華はまた涙を浮かべる。


 だが、その涙には絶望は存在しない。


「……うん」

「みんなの為にも……頑張る」


 それは、ただ任務を続けるという意味ではない。


 紫導家がIRISにいる為に……IRISを変える為に——「守る人も守られる組織」へ変える為に。


 紫導家、IRISにとっての「変革の戦い」が始まりを告げた。

次回、EP32〜風当たり〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。