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紫導家ヒストリー  作者: AliceMa
第1章〜紫導家〜
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15/28

EP12〜中学3年生〜新しい出会い〜

挿絵(By みてみん)


 嵐華らんか緋織ひおり


 彼女達が通う中学では今日も2人は注目の的だった。


 紫導家の長女と次女であり、双子の美人姉妹。


 ラブレター職員室経由事件。


 文化祭の告白祭騒動。


 他にも色々……。


 2人は中学に入学後、様々な「伝説」を作った。


 あれから約2年——。


 嵐華、緋織は14歳になり、4月を迎え、中学3年生となった。


 校内ではもはや説明不要の存在。


 和風喫茶の双子。


 天使とボディーガード。


 告白祭を止めた姉妹。


 因みに2年生の時点で嵐華は「殿堂入り」を果たし、告白祭からは解放された。


 他にもいくつか肩書きは存在している。


 そしてこの春……紫導家の三女と四女も同じ中学へ入学する。


 愛里あいり瑞帆みずほ


 正門の前で2人は並び、学校全体を眺めていた。


「前まで文化祭でしか来てないからね〜♪今日から生徒だ♪」


「はい、楽しみです♪」


 2人も本来、嵐華達とは違う中学へ進学予定だったが、本人達の強い希望で同じ中学へ。


 理由は単純。


 1年だけでも一緒に通いたいから。


 その後ろで嵐華と緋織が2人を優しく見守る。


「愛里達が後輩になるんだね〜♪」


「はい、これからは学校もIRISも一緒ですね」


 嵐華と緋織は3年生になり、以前よりも落ち着きを纏っていた。


 2人ともIRISで鍛えられた均整の取れた体つきとなり、さらに高身長も目を引いていた。


 嵐華は「無自覚な天使」は変わらず継続していたが、コミュニケーション能力は向上し、才色兼備の優しいお姉さんポジションを確立。


 緋織も才色兼備と思われているが、それよりも「完璧な守護者」という姉のボディーガードの立ち位置だった。


 愛里と瑞帆はまだ正門を潜っていないにも関わらず、姉2人の注目度が高すぎることに驚いていた。


「……あれって文化祭だけじゃなかったんだね」


 愛里が呟くと瑞帆も同意する。


「嵐華姉も緋織姉ももう慣れている感じがしますね……」


 だが、愛里には少し違って見えていた。


「いや……嵐華姉は慣れているというより、単純に視線を感じてないね」


 愛里が見ている嵐華は文化祭の時と家での普段の姿、そしてIRISでの姿。


 訓練時の全く隙がない異次元の強さ。


 だが、ひとたび訓練が終わり、家で過ごしている姿は全く異なる。


 優しいが何か抜けている守ってあげたい姉。


 愛里自身も嵐華を守れるようになるため、IRISで格闘術を学び続けてきた。


(私も……嵐華姉を守る)


 静かに……だが熱い気持ちを胸に新しい中学、IRISの生活に意気込む。


 その姿を横で見ていた瑞帆。


 瑞帆はその愛里の頑張りを知っている。


 だからこそ、嵐華、緋織、そして愛里にも置いていかれないように頑張ろうと思っていた。


(私も……末っ子で満足しません)


 ずっと正門の前に立ち、何か意気込んでいる愛里と瑞帆を見て不思議に思った姉2人。


「早く行かないと……手続きあるんでしょ?」


「私達ももう教室へ行きますので、あとで入学式で会いましょう」


「うん♪またあとでね〜♪」


「ではまた……♪」


 嵐華と緋織の言葉に愛里と瑞帆は笑顔で頷き、正門を抜け、新入生用の受付へ向かった。


 受付をし、クラスの場所を確認。


 2人のクラスを見て愛里は笑顔になる。


「同じクラス!!」


 瑞帆も無言ながら一緒に入れることを安堵する。


 瑞帆もあまり人付き合いが上手い方ではない。


 逆に愛里は誰とでも仲良くなれる子だった。


 愛里といれば安心……瑞帆はそう思っていた。


 だが、その考えも愛里は見抜いていた。


「瑞帆〜あんたも頑張って友達作るんだよ?一緒にはいるけどね♪」


「……はい、頑張ります……」


 愛里は手を伸ばし、瑞帆の手を掴んで一緒に自分達のクラスへ向かった。


 ……


 体育館——。


 入学式前の校内は2年前……嵐華達が入学した時のようにざわついていた。


 嵐華達の時は新入生は外から入場していたが、今年度は全員集まった状態で開始することになっていた。


 2〜3年生達が愛里と瑞帆の姿を見ながら、ひそひそと話す声が聞こえていた。


「あの文化祭で見た紫導さん達の妹さん?」


「双子が2組って紫導先輩達の家って凄いな〜」


 愛里達のことを会話している中、もう1つのざわつく理由も言葉に出る。


「それにやっぱりご両親も凄いよねぇ……」


 保護者席には神威と黒葉の姿が。


 相変わらず外見年齢が20代中盤の美男美女。


 親に見えない。


 それが学生、保護者達の印象だった。


 さらにきわめつけは、在校生席の最前列に座る嵐華と緋織だった。


 現在、2年生終了時点での成績が反映され、緋織が学年1位、嵐華が学年2位として座っていた。


 嵐華は新入生の席に愛里と瑞帆を見つけ、小さく手を振りながら微笑む。


 その通称「天使の微笑み」に愛里と瑞帆の周囲の新入生達の心は撃ち抜かれていた。


(あ〜これはやっちゃってるな〜嵐華姉……緋織姉もだけど……)


 成績優秀、容姿端麗、さらにIRIS在籍。


 注目されない方が無理な話だった。


 瑞帆も周囲の反応を見て驚いていた。


「本当に凄いですね……お二人の人気って……」


「ね〜」


(他人事じゃないと思うけどね〜瑞帆〜)


 嵐華と緋織が注目されている中、瑞帆へ熱い視線を送る1年生が何人かいることに気づいた。


(瑞帆って自分がどれだけ可愛いか分かってないんだから……)


 紫導家四女の瑞帆。


 紫導家の中では一番可愛がられている末っ子。


 おとなしい性格でもの静かな姿はおしとやかなお嬢様。


 多分一番女の子らしいのは誰かというと……瑞帆だった。


 だが、瑞帆は嵐華と緋織に心酔しているかのように尊敬している。


 2人を差し置いて自分がモテるはずがない……そう本気で思っていた。


 愛里は小さくため息混じりに呟く。


「……ほんと……緋織姉の気持ち分かるな〜……」


「?どうしましたか?」


「ん〜ん?なにもないよ〜♪」


 愛里ははぐらかし、そのまま入学式が始まるのを待つことに。


 そんな中、3年担当の教員達は紫導家の面々を見る。


 会場の空気のざわめきは2年前より上。


 保護者席に神威と黒葉。


 新入生の椅子に愛里と瑞帆。


 在校生代表の椅子に嵐華と緋織。


 文化祭のことも思い出しながら……また始まったな〜……小さく呟くのだった。


 ……


 そして、入学式は滞りなく終了し、ホームルームが終わった後、校庭へ——。


 愛里は嵐華へ、瑞帆は緋織へ走り、そのまま抱きつく。


「嵐華姉〜!!」


「緋織姉!!」


 中学生になっても愛里、瑞帆は姉達にべったりだった。


 嵐華は愛里の頭を優しく撫で、緋織は瑞帆の頭を撫でながらも周囲を確認している。


「走る時は気をつけてください?」


 緋織は瑞帆の制服を整える。


「ありがとうございます♪」


 瑞帆は姉達3人の前では明るく話す。


 それを見ていた周囲の同級生達は入学式、クラスでの姿のギャップで釘付けになっていた。


 だがそれ以上に4人が姉妹ということを知らなかった一部の1年生と保護者は驚いていた。


「え、あの美人な人達がお姉さん!?」


「双子が2組!?」


「顔面偏差値どうなってるの?」


 2年前と同じ反応が一部聞こえた……。


 だが、4人の光景を見て、周囲の男女は理解していた。


 あの領域に入ってはいけない……尊い。


 嵐華は愛里と瑞帆を見る。


「入学式も終わったし、これでちゃんと後輩になったね♪」


 愛里は満面の笑みになる。


「うん!!これでずっと一緒♪」


「瑞帆も、入学おめでとうございます♪」


 緋織に言われ、瑞帆も顔を赤らめながら答える。


「はい……ありがとうございます」


 4人が注目されながら談笑している中、神威と黒葉も合流する。


「校長と話していてな……遅れた」


「改めて入学おめでとうございます♪愛里♪瑞帆♪」


 そのまま愛里と瑞帆は黒葉に2人で抱きつく。


「入学させてくれてありがとう♪」


「みんな一緒で幸せです♪」


 神威は少し涙目になっていた。


 4人がこうして元気に中学校へ上がった。


 それだけで幸せ。


「……おめでとう」


「なんか卒業したみたいになってるよ?」


 嵐華からツッコミが入り、神威も微笑む。


「……嬉しいから仕方ないだろ?」

「じゃあ、また一緒に写真撮るか」


 そして、紫導家6人全員で中学の正門で集合写真を撮る。


 また一歩、紫導家は「日常」を進んでいく。


 しかし、周囲からすればこの4姉妹が揃っていることが「非日常」に思えた。


 後に職員室では教師達の間でこんな会話が交わされた。


「紫導家の子達が揃うと空気が変わる」


「それは悪い意味ではなく、ただ日常に”物語が混ざる”ような……そんな感情が起こる」


「まぁ、今年は1年平穏でないことは確かですね」


 紫導家は意図せず、常に周囲に「非日常」を提供してしまう家族だった。


 そして、紫導家は今から本当の意味の「非日常」へ向かう。


 入学式も終わり、今日の中学の時間は終わった。


 今からIRISの時間が始まる。


 2年前と同様に神威が運転する車に全員が乗り、IRISへ向かう。


「なんか懐かしい気がする」


 嵐華が窓から外を見ながら呟く。


「なんだかんだあの日以来は基本電車でしたからね。」


 緋織が答え、愛里も相槌を打つ。


「だね〜♪これからは一緒にIRISへ行けるね♪」


「私も嬉しいです♪」


 黒葉はIRISへ着く前に情報共有をしなければと喋り出す。


「今日はIRISに新しい子達も入りますからね〜♪」

「ちょうど4人の間の年齢の子が入りますから仲良くなれるといいですね♪」


 IRISの育成生の入所は本来は13歳(中学2年生)が規定としてある。


 嵐華達は1年以上早く入所しており、去年は嵐華と緋織の同い年の子が入ってきていた。


 愛里と瑞帆にとっては後輩でもまだみんな年上という特殊な環境は続く。


「今年はスカウト部が自信満々だったからな」

「有望な子が入るかもな……追い抜かれるなよ?」


 嵐華達4人はニヤッと微笑む。


「当然!!負けないよ?」


「どんとこいです」


「年上にも負けないよ〜♪」


「同じくです」


 神威と黒葉は4人を頼もしく思う。


「……よし、もうすぐ着くな」


「今日は愛里、瑞帆が座学で嵐華、緋織が通常訓練でしたね?」


「うん、今日はそこまで無理はする気ないけどね」


「嵐華と緋織のところには訓練中に新人達が来ると思いますのでよろしくお願いしますね♪」


「了解♪」


「教官にもそれは伝わっているんですか?」


「ああ、だから本気めの緩い訓練内容をお願いしてる」


 多分緩くない……神威の言葉に嵐華と緋織は今日も密度の高い訓練があることを察した。


 ……


 IRIS——。


 紫導家が到着し、もう慣れた動きでそのまま神威と黒葉は執務室へ。


 そして、嵐華達4人は更衣室へ向かった。


 愛里と瑞帆は座学へ。


 嵐華と緋織は訓練のために訓練場へ向かう。


 IRISには距離や用途に合わせた様々な訓練場があるが、最初に訓練用メインホールを通らなければいけない。


 そこで教官が待っていた。


「……時間通りね」


「お疲れ様です」


「今日もよろしくお願いします」


 教官は2人の挨拶を聞くとすぐに訓練の話になる。


「今日は”拳銃”を使って訓練するから気をつけるのよ?」


 この2年で大きく変わったこと。


 その1つは「拳銃」の使用だった。


 IRISの育成生の中で精神鑑定を含めた適正試験をクリアした者だけが拳銃の使用が許可される。


 嵐華と緋織もその許可された側であり、もちろん最年少。


 訓練場で自身の名前が刻まれた拳銃を取り出し、状態チェック。


 訓練用弾丸が込められたマガジンを装填する。


 嵐華と緋織はそれぞれ透明の防護シールドが施された部屋へ入る。


 2人がふと上を見ると20名ほどの中学生が、別の教官に引率されて見学していた。


(本当にきたね……)


(下手なところは見せられませんね……)


 見られている中、訓練が開始する。


 緋織はシールド能力で相手のゴム弾を防ぎながら、目標の的に正確に射撃し、命中させていく。


 射撃の腕前はすでに隊員クラスと言える実力だった。


「凄い……年齢は一緒ぐらいですよね?」


 見ていた新人の育成生が教官へ質問していた。


「ああ、彼女は”飛鳥あすか” 緋織……育成生の中でも超有望株の1人だな」

「彼女のシールド能力はすでに正隊員になれる力を持っている」

「今は年齢と育成過程の問題でまだ正式に隊員になっていないだけだ」


 教官は育成生の中でもトップクラスの緋織を褒めちぎっていた。


 少しでも神威達に良い印象を与えたいのだろう。


 実際、神威と黒葉は執務室にいるので聞こえるはずがないのだが……。


 そして、もう1人……嵐華の訓練が始まる。


 教官も口を閉じ、真剣に見る。


 新人達は不思議そうに見ていた。


 嵐華は部屋の中央で立ち、目を瞑る。


 緋織とは違い、専用のプロテクターを装備している嵐華。


 しばらくすると段々と紫の雷を纏い始める。


「……雷?」


 1人の新人が呟くと教官が静かに答える。


「ああ……彼女は紫導嵐華……さっきの飛鳥緋織の双子の姉であり……世界初の雷制御成功者だ」


 全員がざわつく。


 世界初?


 あの雷を?


 ざわつく中、嵐華は目を開け動き始める……いや動いたかも新人には分からなかった。


 嵐華は中央に立ったまま、だが一瞬で各方面にあった的がほぼ同時に撃ち抜かれていた。


 実際には高速移動を繰り返しながら、各的へ一発ずつ正確に銃弾を撃ち込んでいた。


 移動した経路には排出された薬莢が点々と転がっていた。


「……すげぇ……」


 新人達が嵐華と緋織の能力を含めた実力を見ていた中、ある2人は違う感性で見ていた。


(雷は確かに凄い……凄いけど……荒く感じる……でも……それ以前に)


「……綺麗な人」


 小さく呟いたのは水色の髪に後ろに大きな青いリボンを付けた女の子。


 あおい 氷華ひょうか


 IRISのスカウト部が超有望株として目を付けていた逸材。


 かつて能力の素養が認められ、能力発現後に正式な入所打診を受けていた。


 そして、もう1人。


 氷華と共にスカウトされた逸材。


 赤いポニーテールを黒いリボンで結んだ女の子。


 くれない 炬乃恵このえ


 氷華と同様に能力を発現し、2人でIRISへ入ることを決めていた。


 氷華が嵐華を見ていたのに対し、炬乃恵は緋織を見ていた。


 冷静に対処し、訓練の合間に見えるあの端正な顔立ち。


 教官と真剣な表情で話す姿。


 嵐華へ視線を向けた瞬間だけ表情を柔らかくする姿。


 炬乃恵はそのすべてを目で追っていた。


 そう……もう炬乃恵はこの時に気持ちが決まっていた。


(……惚れた)


 完全に一目惚れ。


 この時、嵐華と緋織はまだ2人の存在を知らない。


 だが、この瞬間から氷華と炬乃恵の人生は紫導家へ向かって動き始めた。


 そして、この出会いへ至るまでには……


 2人だけで歩んできた長い時間があった。

次回、EP13〜氷華、炬乃恵〜転機〜

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