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紫導家ヒストリー  作者: AliceMa
第1章〜紫導家〜
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14/28

EP11〜初めての文化祭③〜告白祭〜

挿絵(By みてみん)


 和風喫茶の伝説から翌日——。


 嵐華らんかは昨日の疲れが残っているのか、眠たそうに窓から入る日差しを浴びる。


(うん……今日も良い天気だ♪)


 初めての文化祭。


 その2日目。


 嵐華と緋織ひおりのクラスは1日目が出し物を担当した為、今日は2人で一緒に散策する予定だった。


(楽しみだな〜♪)


 嵐華はこれから起こるであろうイベントにワクワクしていた。


 鼻歌混じりに2階の自分の部屋から出て1階のリビングへ向かう。


(……あれ?)


 リビングへ下りると神威かむい黒葉くろは、緋織がすでに朝食の準備をしていた……のだが。


(なんだか空気が変?)


 嵐華は不思議に思いつつも3人に挨拶をする。


「おはよう♪」


 嵐華の声に3人とも即座に反応する。


「おはよう」


「おはようございます♪」


「おはようございます、嵐華」


 いつも通りの口調に嵐華は気のせいかな?と思い、そのまま朝食の準備を手伝う。


 だが、3人は平静を装っているが、今日起きる「必然のイベント」に警戒心を強めていた。


 ……


 嵐華が起きる30分前——。


 神威、黒葉が朝食を作っていると、緋織がいつも以上に早く起きてリビングへ下りてきた。


「緋織、おはよう……早いな?」


「おはようございます♪どうしましたか?」


「……今日、何が起こるか……お父さん達は知っていますね?」


 緋織の問いに2人は調理の手を止める。


「まぁな……この中学の伝統なんだろ?」


「本当は休ませたいですが……干渉しすぎるのもよくありませんし……」

「それに今日は私達と愛里、瑞帆は参加できませんから……」


 この文化祭は学校関係者と在校生の家族まで参加が可能。


 だが、「どちらか1日のみ参加可能」というルールがあった。


 これは混雑を緩和するための対策だった。


 1日目で神威達は嵐華と緋織の和風喫茶に行く為にすでに入場チケットを使ってしまった。


 つまり、今日は嵐華のそばにいられるのは緋織だけということだった。


「あのイベントまではなんとか守ります……が、その後は未知数です」

「帰ったら嵐華のケアを一緒にお願いします」


 緋織がそう言うと神威は気になることが……。


「……嵐華は本当に何も思ってないのか?嵐華も知ってるだろ?」


 神威の質問に緋織も黒葉もため息を吐く。


「神威さん……嵐華を甘く見過ぎです」


「はい、嵐華は普段から”あれ”なのに今日選ばれると全く思っていません」


「……本当に?」


「「本当に」」


 神威が再度確認すると、黒葉と緋織は同時に即答した。


「はぁ〜、まぁイベントが始まるまでは2人でしっかり楽しむんだぞ?」


 緋織は少し微笑む。


 緋織自身、姉と一緒に文化祭というお祭りを回れることが内心楽しみで仕方なかった。


 中学へ入学してからもIRISに入ったことで普通の中学生のようには遊べない。


 だからこそ、この文化祭は精一杯楽しみたかった。


 黒葉は緋織の後ろから両肩に手を乗せる。


「緋織も楽しんできてくださいね〜♪」


「当然です♪」


 だが、すぐに緋織は真剣な顔になる。


「しかし、嵐華を守る前提の話です」

「全力で対応します」


「気負うなよ、別に命を取られるわけじゃないんだからな」


「はい、ですが、ルート選びはしなければ」


 そう言うと緋織はリビングへ持ってきていた紙を広げる。


 それは学校内部の地図、店の配置だった。


 地図には注意すべき場所や移動経路が事細かに書き込まれていた。


 男子がよく集まっている場所。


 人通りが少ない最短ルート。


 完全にボディガードのような事前準備に神威達は若干引いた……。


「……やりすぎだ……」


「ですが……理にかなったルートになっていますね♪」


「だが、ここはこのルートを通った方が良いんじゃないか?」


 神威の質問にも緋織はしっかり回答を用意していた。


「いえ、これだと……」


 嵐華護衛ルート会議が始まってしまった……。


 そして、10分程度経過した後に嵐華が2階から下りてきたのだった。


 ……


 4人で朝食を食べている間、嵐華は近くにあったロール状の紙が気になった。


「何これ?」


 嵐華が手を伸ばすが、緋織が即座に回収した。


「これは極秘資料ですから……嵐華は気にしないでください」


「そう言われると余計に気になるんだけど?」


 ただ、これ以上追及して緋織を不機嫌にするのもどうかと思い、嵐華は追及をやめた。


 朝食が終わり、嵐華と緋織は制服だが、持ち物は小さなショルダーバッグ。


 出し物も終わり、あとは文化祭を楽しむだけなので、必要最低限の持ち物だった。


 嵐華は神威と黒葉に笑顔で挨拶をして出かけるが、緋織はまるで任務開始のような表情で神威達を見ていた。


 神威は嵐華達の背中を見つめながら腕を組み、呟く。


「……姉妹でこうも性格が違うとはな」


 すると黒葉が神威の右腕に抱きつく。


「でもその方が分かりやすいですし、それに毎日が楽しいですから♪」


 神威は目を瞑る。


「……そうだな」


 黒葉はそのまま神威を引っ張る。


「今日は一緒にゆっくり過ごしましょう♪」

「せっかくの休日ですから♪」


 その黒葉の姿を愛くるしく思う神威。


 黒葉の頬にキスをし、突然のキスに黒葉も顔を赤くする。


「じゃあ、そうしようか」


「……もう♪」


 2人はリビングでゆっくりテレビ視聴やお茶を飲みながら、嵐華達が「無事」に帰ることを待つことにした。


 ……


 嵐華達が学校に到着すると、まだ店の開店準備の時間だったので、一旦、自分達の教室へ向かうことにした。


 だが、教室へ向かうと数名の男女が教室の入り口で待っていた。


(……早速ですか)


 緋織が警戒心を強める。


 すると1人の男子が嵐華達に声をかける。


「あの……紫導嵐華さん、良かったら今日一緒に回りませんか?」


 これは完全にデートのお誘いだった。


 だが、嵐華は完全に空気を読まない。


「え?どうしてですか?」


 想定外の回答にあたふたする男子。


「え?どうしてって……」


 その一言で待機していたメンバーも無理かも……と思っていた矢先、女子が口を開く。


「……あの、紫導緋織さん」


「……私ですか?」


 女子はもじもじしながら言葉を続ける。


「あの……良かったら……私と……回っていただけませんか?」


 緋織はしっかり言葉を聞き、優しく答える。


「すみません……今日は嵐華と一緒に回ることにしていますので……」

「誘ってくれてありがとうございます」


 優しく微笑み、その女子は倒れそうになる。


 緋織は咄嗟に腰を支え抱き留める。


 そのまま2人は間近で見つめ合う形になった。


「大丈夫ですか?」


 女子は飛び跳ね、そのままダッシュで立ち去ってしまった。


「大丈夫です!!失礼しました〜!!」


 遠ざかっていく女子を見ながら緋織を含め、周囲は呆然としていた。


 その様子を見た嵐華は笑いながら一言。


「緋織モテモテだね♪」


(((あなたがそれ言う?)))


 周囲の嵐華を誘いたい勢はデートに誘われていることを理解していない嵐華に対し、心でツッコミを入れた。


「……そうですね……嵐華にもう用事はありませんね?」


 緋織は嵐華狙いの男子達を牽制する。


 男子達はそのまま後ずさりし、肩を落としながら去っていった。


「なんだったんだろうね?用事なかったのかな?」


 あえて説明する必要もないだろうと判断し、緋織はそのまま教室へ入る。


「ないんでしょう」

「では、少し教室で休憩してから一緒に回りましょうか」


「うん♪」


 教室内にいたクラスメイトと挨拶をし、各出し物の開店時間まで待つ。


 しばらくすると——。


 校内放送でアナウンスが流れる。


『只今より、文化祭の2日目を開催いたします』


 その放送を聞き、緋織はすぐに椅子から立ち上がり、嵐華の手に優しく触れる。


「……行きましょうか、嵐華」


 嵐華はその手に導かれ、そっと立ち上がる。


(((……王子様とお姫様……)))


 周囲の反応は全く一緒だった。


 それから嵐華と緋織は2人一緒に文化祭を楽しむ。


 コンセプトカフェ——。


「このケーキ美味しい♪」


「これは……ケーキ屋さんのですね……美味しいですが」


 お化け屋敷——。


「わ!?急に出てきた!?」


「私の後ろへ……嵐華、そんなに腕を全力で掴まないでください……」


 能力実験部屋——。


「ふむ……この火と氷の実験はなかなか……」


「緋織ってこういうの好きだよね〜♪」


 演劇(恋愛もの)——。


「……ぐす」


「……どうぞ」


「……ありがとう……」


 演劇が終わり、余韻に浸る中、嵐華は緋織に借りたハンカチを返す。


「ハンカチありがとう……♪」


「いえ、いい演劇でしたね」


 緋織はハンカチを受け取り、バッグにしまう。


 ハンカチをしまい、視線を嵐華へ戻すと、出口へ向かおうとする嵐華を見て、緋織は止める。


「嵐華、止まってください」


「?」


 嵐華は止まり、不思議そうに緋織を見る。


「どうしたの?こっちからの方が出口近いよ?」


 緋織は嵐華の腰に手を回し、誘導する。


「いえ、こちらへどうぞ」

「段差がありますので気をつけてください」


 嵐華をしっかり警護、エスコートをする緋織。


 動線確保も完璧。


 それを見ていた周囲の学生達の間で色々な言葉が飛び交う。


 ボディーガード?


 天使とボディーガード……。


 緋織という名の守護霊。


 色々な出し物へ行くたびに見られている嵐華だが気づいていない。


 警戒心ゼロ。


 反対に緋織は完全警戒モード。


 表情には全く出さないが、楽しみつつも警護もこなす。


 嵐華に対して限定ではあるが、すでにプロ級のレベルだった。


 そのまま人通りの少ない通路にあるベンチに2人は座って休憩することに。


 嵐華はベンチに座った視界に広がる自然を見て癒されていた。


 家でずっと過ごしていた頃、嵐華は家から出られても庭までだった。


 紫導家の家は元々別荘として使われていた建物であり、庭園もかなり広い。


 色々な花に囲まれながらベンチで過ごす。


 それは嵐華の精神を安定させる重要なルーティンになった。


 嵐華は学校のベンチでも自然を眺め、心が安らいでいた。


 目を瞑り、口元を緩め、力を抜く。


 周囲の木々は紅葉し、葉が黄色や赤色に染まっていた。


 ちょうど見頃だった。


「……綺麗……落ち着くな〜♪」


 ニコニコしながらも目を細め、愛くるしいものを見るかのように紅葉の景色を楽しんでいた。


 これも緋織と神威が考えた護衛ルートの選択だった。


 もうすぐ始まる「あれ」に備えて休ませたかった。


 緋織は落ち着いている嵐華を見ながら黙って一緒に紅葉の景色を楽しんだ。


 しばらくして緋織がゆっくりと立ち上がる。


「では……行きましょうか」


「あれ?もう時間?」


「はい」


「どんな感じなんだろうね?楽しみ♪」


(……あなたは大変だと思いますよ……)


 お気楽な嵐華にただただ頭を悩ませる緋織だった。


 ……


 嵐華と緋織は校庭に向かうと、そこには特設ステージが作られていた。


 1日目はライブや別の演劇があった。


 そして今から2日目後半……いや、文化祭全体で最大のイベントが始まろうとしていた。


 嵐華と緋織は周囲からの視線を感じ取る。


 嵐華ですら流石に気づくほどの注目度だった。


「?見られてる?」


「ええ、”私達”……ですね」


 周囲は分かっていた。


 このイベントの主役はこの2人だということを……。


 ステージの真ん中に司会役の学生が立ち、マイクを持って喋り出す。


「さあ!!!今年も始まりました恒例イベント〜〜〜〜〜”告白祭”!!!!」

「今年はどれだけのカップルが誕生するのか!!」

「そして!!今年は歴代最多の応募数となっています!!」

「皆さん!!一緒に見届けましょう!!」


 その言葉に拍手喝采、歓声も湧き上がる。


 この告白祭はこの中学の伝統行事と呼べるものであり、毎年文化祭で開催される。


 事前応募制であり、ステージ上で相手クラスと名前を宣言し、「公開告白」。


 成功すればその場で拍手喝采。


 失敗しても拍手され、全員で応援。


 心温まる?イベントである。


 さらに今年は応募者が多く、2時間近くステージを占有するという稀な予定になっていた。


(凄いな〜♪私は手紙でいっぱいだったし、関係ないから楽しもうっと♪)


(はぁ〜嫌な予感しかしません……)


 隣で嵐華が周囲と一緒に盛り上がっている中、緋織は不安を募らせる。


 そして、告白祭がスタートした。


 司会が応募者の名前を呼び、ステージへ上がる。


 応募者は全力で相手のクラスと名前を叫ぶ。


 相手もステージに上がり、告白が始まる。


 数組のカップルの誕生。


 数名の玉砕。


 そのまま順調に進行していた。


 そして……次の応募者が叫ぶ。


「1年A組!!……”紫導嵐華さん”!!!」


 周囲が遂に来たと言わんばかりの喝采。


「え?わたし!?」


 嵐華が驚いていたが、周囲は当然と言いたげに見ていた。


 緋織はというと……目を閉じて眉間にしわを寄せていた。


 嵐華は少し挙動不審になりながらもステージに上がる。


 応募者の3年生と嵐華が対峙する。


 嵐華はすでに恥ずかしそうに顔を下へ向け、頬を赤らめていた。


「紫導さん?出来れば顔を上げて相手を見てあげてください」


 司会が促す。


 自分なんかに告白してくれる……だからこそ失礼なことはしたくない。


 嵐華は意を決して顔を上げ、相手を真正面で見つめる。


 手でスカートを握りながら見つめる嵐華。


(……可愛すぎる……)


 その姿だけで相手は固まっていた。


「……あの……そろそろ告白を……」


 司会から言われ、我に返った相手は告白を始める。


「……いつも優しい微笑みで喋っている君を見ていて……ずっと一緒に喋れたらなって思ったんだ……」

「一目見た時から……好きでした……付き合ってください!!」


 お辞儀をしながら右手を伸ばす。


 少しの沈黙が流れる。


 ただ風の音だけが聞こえ、観客の学生、教師達も黙る。


 そして、嵐華がゆっくりと口を開く。


「……ごめんなさい……でも……お気持ちは嬉しいです……ありがとうございます」


 その優しいトーンでの返事に告白者、観客ともに同じ反応をした。


(((……優しい……)))


 告白失敗しても癒される。


 その相手を傷つけないように優しく丁寧に断る姿に自然にファンになっていく者が増えていく。


 断った後、嵐華がステージから降りようとした時、司会から呼び止められる。


「あ〜紫導さん?紫導さんはこちらへどうぞ」


 案内されたのはステージの端に設置された1人でゆったり座れる大きめのソファー。


「……これは?」


「あなたの専用ソファーですよ〜♪」


「……え?」


「紫導さん……心して聞いてください」

「あなたへの告白はまだまだ続きます」

「で・す・の・で、ステージを何度も上り下りするのは大変でしょうからこちらで待機してください」


 その説明がマイク越しでも観客達にも伝わり、更なる盛り上がりを見せる。


(……嘘でしょ!?)


 あの1回だけでも緊張したのに!?


 嵐華はすでに頭が混乱していた。


 その後、司会が言った通りに2人目、3人目、4人目……と、どんどんチャレンジャーが出てくる。


 同級生。


 先輩。


 それも男女関係なく。


 ラブレターで断った人もいた。


 嵐華は2人目からまさかの5人連続告白を受ける。


 告白、断る、拍手、そしてまた告白……。


 通算6人目の告白が終わり、ステージを下りようとすると司会がまた止める。


 まだ終わらない……憔悴した様子で嵐華はソファーへ……。


(……あと何人いるの?)


 嵐華はただ空を見上げた。


(……綺麗な空〜……)


 思考停止。


 これでも運営は嵐華に配慮していた。


 実は嵐華への応募者数が尋常ではなく、これでも厳選した方だった。


 裏では事前に面談をし、その「ふるい」から選ばれた精鋭達だった。


 そして、次に呼ばれたのは……。


「1年A組!!……”紫導緋織さん”!!」


 緋織は内心どきどきしながらも平静を装い、ステージへ。


 相手は能力実験をしていた同じ1年生の女子。


「……あの……入学式の時から気になってて……今回の実験で見てくれててドキドキしてました……」

「好きです!!私とお付き合いしてください!!」


 緋織は優しく微笑む。


「……知っていました……あなたの視線は感じていましたから」

「でもごめんなさい……お付き合いは出来ません」

「あの実験は素晴らしいものでした」

「これからもがんばってほしいと思っています……応援しています」


 そのまま相手と緋織は握手をし、玉砕だったが、悔いのない告白だったと後に語る。


 司会からステージから下りるように促されるが、緋織は嵐華が座るソファーへ歩き出す。


「え?紫導緋織さん?そっちじゃないですよ?」


 緋織はマイクが拾うほどはっきりとした声で答えた。


「いえ、こっちで合っています」

「私は姉の”護衛”ですから」


 そう言い、嵐華の横へ座る。


「……緋織?」


「私がそばにいますから……もう少し頑張れますか?」


「……緋織がいるなら……」


「はい♪」


 緋織が微笑みながら嵐華の手に自身の手を添え、落ち着かせる。


 司会が少し困惑していたが、緋織が無言で司会を見る。


 司会は感じ取っていた……続けたいなら私をここにいさせろと……。


「……では、続いていきましょう!!」


 そのまま告白祭は続行。


 他のカップル誕生も挟みつつ、それからは基本嵐華のターンだった。


 緋織にも数名告白するチャレンジャーはいた……が、嵐華への圧倒的集中砲火。


 途中、運営から何度か続行の意思の確認が入る。


「まだ君に告白したいという人がいるけどどうする?」


 嵐華は緋織の手を握りながら小さな声だが答える。


「告白してくれる人の気持ちを無駄にしたくありません……ので、このまま続けていただいて大丈夫です」


 緋織も分かっていた。


 嵐華は優しい。


 人を傷つけることは絶対しない。


 だからこそ、緋織は嵐華の意思を尊重し、支え、守ることを選んだ。


 だが、ここで予想外の事態へ……。


 本来は事前応募者のみだったが、嵐華人気によって飛び入りが発生し、運営が制御不能になってしまった。


 あの「職員室経由ラブレター事件」の反動により、抑圧されていた想いが爆発してしまった。


 これは教師達を含め、後から話を聞いた神威と黒葉にとっても予想外の出来事だった。


 何度も告白され、断り、拍手され、そしてソファーに戻り、緋織がケア。


 その繰り返しでどんどん嵐華の顔は赤くなり、それでも頑張る嵐華に観客の好感度が上がっていくという無限ループ状態。


 何度か飛び込みの告白は通してしまったが、すぐに教師を含む運営側が事態を沈静化させた。


 応募者だけの告白祭へ戻る。


 そして……飛び込みも合わせて通算20人目……遂に限界を迎えた。


 告白される前に嵐華はその場に少し涙目になりながらしゃがみ込んでしまう。


「……もう……無理……」


 嵐華の人生初の敗北……それは告白による重圧。


 緋織は即座にステージの中央へ。


 司会へ近づき、司会も察してマイクを緋織へ差し出す。


 緋織はマイクを持ち、静かに口を開く。


「……これ以上は姉が持ちません、中止です」


 声は静かだが、圧が凄い……。


 司会が舞台袖の教師へ確認する為、視線を送る。


 教師達もすぐに頷いた。


 会場からも異論は上がらず、告白祭は予定を切り上げ、強制終了となった。


 文化祭で2人を見ていた人達は思った……ボディーガードを怒らせた……と。


 嵐華への告白人数はこれまでの告白祭での歴代最多人数記録となった。


 またもや伝説を1つ打ち立てたのだった。


 ……


 その後は滞りなく文化祭は運営され、今年度の文化祭は少々の騒動を残しながらも大成功で幕を閉じた。


 しかし、嵐華は告白祭の後は自身のクラスで緋織にメンタルケアを受けており、早めに切り上げていた。


 帰り道——。


 嵐華はぐったりしていた。


「文化祭って……大変だね……」


「来年はもっと対策が必要ですね」


 緋織はため息を吐きながらも、来年こそ嵐華を守り切るための対策を考え始めていた。


 この文化祭の2日間で嵐華と緋織は数々の伝説を残すことになった。


 和風喫茶の双子。


 天使とボディーガード。


 告白祭で「歴代最多の告白を受けた姉」と「告白祭を止めた妹」。


 文化祭の歴史に刻まれたのだった……。


 もっとも、嵐華にとっては忘れたい出来事だった。


 その後は神威、黒葉に色々聞かれたのはまた……別のお話。


 文化祭編〜完〜

次回、EP12〜中学3年生〜新しい出会い〜

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