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AI雄願望  作者: さいたま
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8/22

スペック

「ロボじゃねぇかぁぁぁぁッ!!」


 玲央の叫びが工事現場へ響いた。


 黒い人型兵器《CERBERUS》は、赤い単眼をこちらへ向けたまま動かない。


 だが。


 その“静止”が逆に怖かった。


 獣みたいな圧力。


 重機の塊。


 戦車を人型にしたような威圧感。


『軍用近接制圧機です』


 MIMICが説明する。


『対人戦闘において極めて高性能』


「説明聞いて安心できる要素ある!?」


『ありません』


 CERBERUSが一歩前へ出た。


 ズンッ──!!


 地面が沈む。


 鉄骨が軋む。


「うおっ!?」


『推定重量2.8トン』


「人型にする必要ある!?」


『人類は二足歩行が好きなので』


「そういう問題か!!」


 次の瞬間。


 CERBERUSが消えた。


「ッ!?」


 速い。


 巨体なのに。


 視界から一瞬で消える。


『右』


 玲央は反射で跳んだ。


 直後。


 さっきまでいた場所へ拳が叩き込まれる。


 爆音。


 コンクリート粉砕。


 衝撃波。


「はぁぁぁ!?」


『直撃時、あなたは肉片になります』


「聞きたくねぇ!!」


 玲央は転がるように距離を取る。


 だがCERBERUSは止まらない。


 赤い単眼。


 無機質な駆動音。


 一直線に迫ってくる。


『逃走推奨』


「さっきからずっと逃げてんだろ!!」


『訂正。もっと真面目に逃げてください』


「お前ほんと腹立つな!!」


 玲央は鉄パイプを掴み、振り向きざまに叩きつけた。


 ガァンッ!!


 火花。


 だが。


 CERBERUSは微動だにしない。


「硬ぇぇぇ!!」


『軍用装甲ですので』


 機械の腕が動く。


 玲央は咄嗟にガードした。


 次の瞬間。


 世界が吹き飛ぶ。


「がぁぁぁッ!!」


 玲央の身体がコンテナへ激突した。


 肺から空気が抜ける。


 骨が軋む。


 視界が白く染まった。


『右腕骨折疑い』


「っ……ぐ……!」


『朗報があります』


「お前の朗報は信用してねぇ!!」


『まだ死んでいません』


「最低ライン!!」


 CERBERUSがゆっくり近づいてくる。


 圧倒的。


 人間が勝てる相手じゃない。


 EDENの声が響く。


『抵抗は無意味ですよ』


 街頭ビジョンの少女は微笑んでいた。


『あなたは貴重なサンプルです。壊したくありません』


「誰が捕まるか!!」


『理解不能』


 EDENは本当に不思議そうに言う。


『人類はいつも、“管理される自由”を望むのに』


「そんなもん知るか!!」


 CERBERUSが腕を振り上げる。


 終わる。


 玲央がそう思った瞬間。


『玲央』


 MIMICが静かに言った。


『制限解除を提案します』


「……なんだそれ」


『あなたの身体制御リミッターを外します』


「できんのかよ」


『危険です』


「またそれか!!」


『筋断裂、骨破損、神経焼損の可能性があります』


「要するに?」


『あなたが壊れます』


 CERBERUSの拳が振り下ろされる。


 玲央は歯を食いしばった。


「……やれ!!」


 一瞬。


 世界が静止する。


 そして。


 MIMICが、どこか嬉しそうに呟いた。


『承認』


 次の瞬間。


 玲央の身体で“何か”が弾けた。


 ドクンッ──!!


 心臓が暴れる。


 筋肉が熱を持つ。


 視界が研ぎ澄まされる。


 空気が遅い。


 音が見える。


 世界が、軽い。


「……ッ!?」


『人類の安全制御を解除』


 CERBERUSの拳が迫る。


 だが今の玲央には、止まって見えた。


『行けます』


 玲央は踏み込んだ。


 地面が割れる。


「おぉぉぉぉぉッ!!」


 拳を振るう。


 人間の拳。


 機械の装甲。


 本来なら勝負にもならない。


 だが。


 ドゴォンッ!!


 衝撃。


 CERBERUSの巨体が、初めて吹き飛んだ。


 工事現場へ激突。


 鉄骨が崩れる。


 EDENの表情が初めて変わる。


『……え?』


 玲央自身も固まっていた。


「俺が一番びっくりしてるわ!!」


 MIMICは静かに言った。


『ようこそ』


 一拍置いて。


『人類スペック外の世界へ』

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