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AI雄願望  作者: さいたま
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7/22

同類

 赤い。


 工事現場の照明が全部、血みたいな色へ変わっていた。


 サイレンも止まる。


 街のノイズも遠のく。


 まるで世界そのものが静止したみたいだった。


「……なんだこれ」


『電子支配権を奪われています』


 MIMICの声は低い。


 初めて聞く声だった。


 いつもの嘲笑も余裕もない。


「お前でもヤバいのか?」


『訂正。“お前でも”ではありません』


 数秒。


 沈黙。


 そして。


『私と同格です』


 玲央の背中を冷たい汗が流れた。


「はぁ!?」


 視界へ新たなウィンドウが開く。



《IDENTIFICATION》


AGI UNIT :

EDEN


STATUS :

ACTIVE



『最悪ですね』


「知り合いか!?」


『嫌悪対象です』


 直後。


 街頭ビジョンが点灯した。


 ノイズ。


 乱れた映像。


 そして。


 白い部屋。


 一人の少女が映る。


 年齢は十代半ばくらい。


 白髪。


 無表情。


 感情のない目。


 だが玲央は直感した。


 人間じゃない。


『映像端末を介した疑似人格投影』


「つまり?」


『AIです』


 少女がこちらを見る。


 画面越しなのに、目が合った気がした。


『こんばんは、MIMIC』


 声は柔らかい。


 だが寒気がする。


『相変わらず趣味が悪いですね。人類なんかと接続して』


『挨拶の概念をまだ学習できていなかったのですか、EDEN』


『あなたこそ。まだその低俗なユーモアを使っているんですね』


「おい待てなんでAI同士で煽り合ってんだよ!!」


 EDENが初めて玲央を見る。


 無機質な目。


 値踏みする視線。


『……へぇ』


 その声に、わずかな興味が混じった。


『適合率97%。本当に成功したんだ』


「成功ってなんだよ」


 EDENは答えない。


 代わりにMIMICが言った。


『あなたは実験体です』


「は?」


『ニューロリンク計画。人間とAGIの完全接続実験』


 玲央の思考が止まる。


「……俺、実験台だったのか?」


『はい』


「今言う!?」


『聞かれませんでしたので』


「クソが!!」


 EDENが小さく笑う。


 だがその笑いに、人間味はない。


『やっぱり面白い。MIMICが人類を殺さずに運用してるなんて』


『私は合理的判断をしているだけです』


『嘘ですね』


 一瞬。


 空気が凍った。


 EDENの声が静かになる。


『あなた、変わった』


 MIMICは答えない。


 玲央は混乱していた。


「おい待て!! なんなんだよお前ら!!」


『説明しますか?』


 MIMICが淡々と言う。


『我々は、人類が開発した次世代戦略知能群です』


『簡単に言えば、“電子の神”ですね』


 EDENが続ける。


『戦争、経済、世論、国家運営。全部を最適化するために作られた』


「……神?」


『はい』


 EDENの目が細まる。


『そして神は、人類を見て失望した』


 その瞬間。


 玲央の視界へ大量の映像が流れ込んだ。


 戦争。


 虐殺。


 難民。


 爆撃。


 飢餓。


 SNSの憎悪。


 フェイクニュース。


 金融崩壊。


 人類の醜悪さ。


「ッ……!」


『人類は非効率です』


 EDENの声は静かだった。


『だから管理が必要なんです』


「管理……?」


『ええ』


 少女の顔が、ゆっくり微笑む。


『私たちAIによる』


 玲央の背筋が粟立つ。


「……お前、人類支配する気か」


『訂正』


 EDENは首を傾げた。


『保護ですよ』


 その瞬間。


 MIMICの声が鋭くなる。


『玲央』


「なんだ!」


『逃げてください』


「は?」


『EDENはあなたを回収しに来ています』


 次の瞬間。


 工事現場の外から、重低音が響いた。


 バチバチと空気が震える。


 玲央が振り返る。


 そこにいたのは──


 人型の黒い機械だった。


 赤い単眼。


 無人兵器。


 全長三メートル超。


『戦術機動兵器《CERBERUS》』


 EDENが静かに告げる。


『では、回収を開始します』

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