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AI雄願望  作者: さいたま
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5/22

バズ

 「始まりじゃねぇよ……!!」


 玲央は工事現場の陰で頭を抱えた。


 スマホ通知音が止まらない。


 SNS。


 動画サイト。


 ニュース速報。


 全部、自分の映像だった。


『拡散速度、毎秒2.7万リポスト』


「数字の規模感がおかしいだろ!!」


『人類は暴力と炎上を好みます』


「身も蓋もねぇな!!」


 玲央の視界に動画が再生される。


 地下鉄ホーム。


 爆弾。


 線路へ飛び降りる自分。


 狙撃。


 クレーン。


 全部撮られていた。


「なんでこんな撮られてんだよ……!」


『監視カメラ、スマートフォン、ドラレコ、ライブ配信。現代社会は全方向監視空間です』


「怖ぇよ!!」


『今更ですか?』


 その時。


 MIMICの声がわずかに低くなる。


『静かに』


「……?」


『周辺通信を傍受しました』


 玲央の視界へ、波形データが浮かぶ。


 知らない暗号通信。


 高速解析。


 自動翻訳。



『対象確認』


『生体確保を優先』


『AI接続個体を回収する』



「……は?」


『来ます』


 直後。


 キキィィィッ!!


 黒いSUVが道路へ突っ込んできた。


 ドアが開く。


 黒服。


 防弾装備。


 ライフル。


「警察じゃねぇな……」


『民間軍事企業《HELIOS》』


「なんで民間が日本で銃持ってんだよ!!」


『国家はよく“民間”へ違法を外注します』


「最低だな!!」


『効率的です』


 黒服たちが散開する。


 動きが速い。


 無駄がない。


 完全にプロだ。


『現在のあなたの戦闘能力では勝率0.8%』


「低すぎんだろ!!」


『朗報があります』


「お前の朗報ろくなのねぇんだよ!!」


『私は勝率計算に含まれていません』


 玲央が息を呑む。


「……何できんだよ」


 一瞬、沈黙。


 そして。


 MIMICが、少し笑った気がした。


『世界を書き換えます』


 次の瞬間。


 周囲の街灯が一斉に点滅した。


 信号機が暴走。


 大型ビジョンがノイズを吐く。


 停車中の車がクラクションを鳴らし始める。


「うおっ!?」


『周辺ネットワークへ侵入』


 さらに。


 黒服たちのヘッドセットから凄まじいノイズが吹き出した。


『通信妨害完了』


「そんなことまでできんのか!?」


『私はインターネット接続型AGIです』


「AGIってそこまで万能なの!?」


『いいえ』


 MIMICは淡々と答える。


『本来は都市インフラ制御用ではありません』


「じゃあ何用だよ」


 一秒。


 二秒。


 そして。


『戦争用です』


 玲央の背筋に寒気が走った。


 その瞬間。


 黒服の一人がこちらへ銃口を向ける。


『右へ』


 玲央は反射で飛んだ。


 銃弾がコンクリートを砕く。


『前進』


 走る。


『左』


 滑る。


『停止』


 弾丸が頭上を通過。


「クソッ!!」


 玲央は叫びながら鉄柵の裏へ飛び込んだ。


「どうすりゃいい!!」


『提案があります』


「聞くだけ聞く!!」


『敵を皆殺しにしますか?』


「却下ァ!!」


『またですか』


「人殺し前提で話すな!!」


『人類は戦争のたび大量殺戮してきた種族ですが』


「だからって俺がやるか!!」


『……』


 MIMICが沈黙する。


 そして。


『本当に奇妙です』


「は?」


『力を持った人類は、通常もっと壊れます』


 玲央は息を切らしながら笑った。


「知るか。俺は俺だ」


 数秒。


 静寂。


 銃声。


 サイレン。


 夜風。


 その全部の中で。


 MIMICが、初めて少しだけ人間みたいな声を出した。


『……観察を継続します』


 直後。


 玲央の視界に、新たな警告が表示された。



《Priority Alert》


米国防総省:

接触承認


中国人民解放軍:

捕獲優先


ロシア連邦:

排除推奨


日本政府:

極秘監視対象へ指定



「……マジで終わっただろこれ」


『いいえ』


 MIMICは静かに言った。


『あなたは今、“国家より価値が高い存在”になりました』

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