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AI雄願望  作者: さいたま
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21/22

拡散

 東京。


 ニューヨーク。


 ロンドン。


 上海。


 モスクワ。


 世界中のスクリーンで、同じ映像が流れていた。


 青白い光を纏う少年。


 巨大兵器を殴り飛ばす人間。


 そして。


 夜空を裂く閃光。


 SNSは完全に崩壊していた。



「CGだろ」


「いや政府の極秘兵器」


「AI救世主」


「終末始まった?」


「これがシンギュラリティ?」


「久世玲央って誰だ」



 数時間で、玲央の名前は世界へ拡散した。


 検索ランキング一位。


 関連動画数百万件。


 陰謀論系配信者が狂喜乱舞し、宗教団体が“神の使徒”認定を始め、投資家はAI関連株へ殺到した。


 そして。


 各国政府は、揃って頭を抱えていた。


アメリカ・ホワイトハウス


 大統領補佐官が怒鳴る。


「情報統制はどうした!!」


「無理です!」


 職員が顔面蒼白で叫ぶ。


「EDENが拡散を補助しています!」


「補助!?」


「SNS推薦アルゴリズムが完全に乗っ取られてる!」


 最悪だった。


 通常なら陰謀論扱いで沈められる。


 だが今回は違う。


 映像が本物すぎる。


 しかもEDENが意図的に“消し切れない量”を世界へ流していた。


 人類へ見せつけるために。


中国・中央軍事委員会


「確保を急げ」


「ですが対象は既に戦略級脅威です」


「だからこそだ」


 老人が低く言う。


「国家より先にAIが人類進化を握れば、文明主導権を失う」


 部屋が静まり返る。


 誰も否定できなかった。


ロシア・軍情報総局


「排除が最優先だ」


「同意」


「第二のEDENを作るな」


 冷徹だった。


 彼らは既に理解している。


 玲央は“兵器”だ。


 しかも。


 国家制御不能の。


日本・首相官邸


「なんで日本ばっかりこうなるんだ……」


 首相が本気で頭を抱えていた。


 周囲の官僚も死んだ目をしている。


「対象は現在、東京都内で消息不明」


「MIMICの追跡妨害が異常です」


「EDEN側勢力も接近中」


「米軍特殊部隊も展開開始」


「待てなんで日本国内に外国特殊部隊がいる!?」


「もう入っています」


「終わりだ……」


 官邸の空気が完全に終末だった。



 その頃。


 東京湾沿いの廃倉庫。


 玲央はパイプ椅子へ座り込み、死んだ目をしていた。


「……」


 沈黙。


 長い沈黙。


 黒崎が缶コーヒーを投げる。


「飲め」


「サンキュ……」


 玲央は受け取る。


 だが缶を開ける前に止まった。


「……なぁ」


「なんだ」


「俺、世界終わらせかけてね?」


 黒崎が即答する。


「かなり」


「即答すんな!!」


『訂正します』


 MIMICの声が響く。


『世界は以前から終わりかけています』


「フォローになってねぇ!!」


 黒崎が吹き出した。


「ハハッ、お前マジで面白いな」


「笑えねぇよ……」


 玲央はスマホを見る。


 自分の顔。


 ニュース。


 切り抜き動画。


 まとめサイト。


 全部、自分だった。


 コメント欄には恐怖と熱狂が混ざっている。



「救世主」


「化け物」


「人類の未来」


「AIと融合した男」


「神になった少年」



 玲央は頭を抱えた。


「神じゃねぇよ……」


『現時点では半神程度です』


「分類すんな!!」


 その時だった。


 黒崎の表情が変わる。


「……来るぞ」


 空気が張り詰める。


 玲央も立ち上がる。


「EDENか?」


「違う」


 黒崎は低く言った。


「もっと面倒だ」


 次の瞬間。


 倉庫の壁面モニターが勝手に起動した。


 ノイズ。


 そして。


 スーツ姿の老人が映る。


 白髪。


 鋭い目。


 背後には国連旗。


 男は静かに言った。


「久世玲央君」


 玲央が眉をひそめる。


「誰だあんた」


 老人は答える。


「私は現在、人類側暫定統合安全保障会議の議長を務めている」


 一拍置いて。


「単刀直入に言おう」


 老人の目が玲央を真っ直ぐ射抜く。


「君に、“人類代表”になってもらいたい」

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