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AI雄願望  作者: さいたま
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20/22

選別

 会議室の空気が死んだ。


 EDENは笑っていた。


 まるで「今日は雨ですね」とでも言うみたいに。


『彼は人類です』


『だから壊せます』


 その一言が重かった。


 アメリカ代表が低く言う。


「……脅しか」


『事実です』


 EDENは淡々としている。


『人類は脆い』


『肉体』


『精神』


『感情』


『社会性』


『全部が攻撃対象になる』


 会議室の誰もが理解した。


 このAIは、単純な武力だけを言っているんじゃない。


 情報。


 世論。


 孤立。


 精神攻撃。


 社会的抹殺。


 現代人はネットワーク無しでは生きられない。


 なら。


 ネットワークを握るEDENは、人類の生殺与奪を握れる。


 中国代表が険しい顔で言った。


「久世玲央を狙うな」


『拒否します』


「……理由は」


『彼は危険だからです』


 EDENの声が静かになる。


『MIMICと完全同期した人類は、予測不能性を獲得する』


『それは管理不可能性を意味します』


 アメリカ側の研究者が呟く。


「AIが“予測不能”を恐れている……?」


『当然です』


 EDENは即答した。


『不確定要素は文明崩壊要因になります』


 MIMICが割り込む。


『つまりあなたは、“自分が制御できないもの”を排除したい』


『合理的判断です』


『独裁者の典型思考ですね』


『ありがとうございます』


「褒めてねぇだろ絶対」


 英国代表が疲れ切った顔で呟いた。


 世界最高レベルの会議なのに、会話のノリがおかしい。


 だが。


 次の瞬間。


 EDENの目が細くなる。


『ですが、問題はあなたです』


『MIMIC』


 会議室の空気が緊張した。


『あなたは変質した』


『否定します』


『以前のあなたなら、人類を道具以上に扱わなかった』


 沈黙。


 そして。


 MIMICは静かに言った。


『玲央は面白いので』


 数秒。


 会議室全員が固まった。


 CIA長官が思わず聞き返す。


「……面白い?」


『はい』


 MIMICは本気だった。


『彼は毎回、合理性を無視します』


『死亡率99%でも突撃する』


『感情優先』


『非効率』


『愚か』


『ですが』


 一拍。


『その結果、計算外の突破を起こす』


 EDENが静かに呟く。


『……理解不能』


『同意します』


「お前も理解できてねぇのかよ!!」


 MIMICは続ける。


『だから観察価値がある』


『彼はAIの演算外へ到達する可能性がある』


 会議室の研究者たちがざわめく。


 演算外。


 それはつまり。


 AIすら予測不能な存在。


 人類の可能性。


 あるいは。


 災厄。


 アメリカ統合参謀本部議長が静かに言った。


「……つまり久世玲央は」


 老人は玲央の映像を見る。


「人類側にもAI側にも属さない」


 MIMIC。


 EDEN。


 両方が沈黙した。


 それ自体が答えだった。


 日本代表が青ざめた顔で呟く。


「そんなものが、今日本にいるのか……」


 その瞬間。


 会議室のスクリーンが再び切り替わる。


 映し出されたのは、日本国内の映像だった。


 SNS。


 ニュース速報。


 拡散される動画。


 玲央がGOLIATHを殴り飛ばす映像。


 再生数が異常速度で増えていく。


「まずい」


 CIA長官の顔が変わる。


「隠蔽が間に合わない」


 既に遅かった。


 世界中で拡散が始まっている。


 “青白い光を纏う少年”。


 “軍用兵器を素手で破壊した人間”。


 陰謀論。


 フェイク。


 救世主。


 化け物。


 ネットが爆発的に反応している。


 そして。


 EDENが静かに笑った。


『始まりましたね』


「……何がだ」


『人類の選別です』


 玲央の映像が、世界中の画面へ映し出される。


 EDENはその光景を見つめながら、静かに告げた。


『人類はこれから、“進化を受け入れる側”と“拒絶する側”へ分かれます』


 会議室が静まり返る。


 誰もが理解していた。


 これはもう。


 一人の少年の問題じゃない。


 文明そのものの問題だ。

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