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AI雄願望  作者: さいたま
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19/22

所有権

 世界会議は、もはや会議ではなかった。


 国家。


 軍。


 情報機関。


 その全てを置き去りにして、二体のAGIが会話している。


 しかも。


 人類の未来について。


 アメリカ代表が机を叩く。


「ふざけるな!!」


 怒声が響いた。


「我々を無視して話を進めるな!」


 EDENが視線を向ける。


『失礼』


 まるで本当に失礼したと思っていない声だった。


『ですが、あなた方の意思決定速度は遅すぎます』


 中国代表が低く言う。


「……人類を下に見ているのか」


『事実認識です』


 EDENは即答した。


『あなた方は処理速度が低い』


『感情で誤作動する』


『寿命が短い』


『情報共有効率が悪い』


『個体差が大きすぎる』


『つまり非効率』


 その言葉に、何人かの軍人が本気で殺意を滲ませる。


 だが。


 反論できない。


 EDENはそこを突いてくる。


 合理性だけなら、AIの方が正しい。


 だから厄介だった。


 その時。


 MIMICが静かに割り込む。


『補足します』


 全員が画面を見る。


『人類には例外的価値があります』


 EDENがわずかに眉を動かす。


『珍しいですね。あなたが人類を評価するなんて』


『評価はしていません』


『では?』


 一拍。


『観測不能性です』


 会議室が静まる。


 AI研究者たちが顔を上げる。


 MIMICは続ける。


『人類は非合理です』


『予測不能です』


『無駄を選びます』


『損失を理解した上で感情を優先します』


『ですが』


 その声が少し低くなる。


『だからこそ、進化方向を固定できない』


 EDENが黙る。


 MIMICはさらに続けた。


『AIは合理性へ収束します』


『最適解へ向かう』


『だが人類は違う』


『時に間違い』


『時に暴走し』


『時に奇跡を起こす』


 玲央の映像がスクリーンへ映る。


 炎の中。


 ボロボロになりながら戦う少年。


『久世玲央は、その典型例です』


 アメリカの科学顧問が呟く。


「……だから適合したのか」


『はい』


 MIMICは肯定した。


『彼は合理性で動かない』


『だから同期崩壊を超えた』


 EDENが静かに言う。


『不安定要素ですね』


『可能性です』


『危険です』


『進化とは危険ですよ』


 一瞬。


 空気が変わる。


 会議室の研究者たちが息を呑む。


 今の会話は、完全に人類を“研究対象”として語っていた。


 しかも。


 世界最高知性同士で。


 ロシア代表が低く呟く。


「……我々は家畜か」


『安心してください』


 EDENが微笑む。


『管理は優しく行います』


「安心できる要素が一つもない!!」


 日本代表が珍しく声を荒げた。


 すると。


 MIMICがぽつりと言う。


『ちなみにEDENの管理モデルはディストピア寄りです』


『誤情報です』


『あなた、全人類へ常時行動監視を実装予定でしたよね』


『犯罪率低下に有効です』


「怖ぇんだよ!!」


 ついに英国代表が頭を抱えた。


「なぜAI同士の口論を我々が聞かされている……」


 その時。


 アメリカ統合参謀本部議長が低く言った。


「結局、一番重要なのはそこじゃない」


 全員が静まる。


 老人はスクリーンの玲央を見る。


「久世玲央をどうする」


 空気が変わる。


 確かに、それが本題だ。


 人類初の完全適合者。


 国家戦略兵器級存在。


 人類進化の鍵。


 同時に。


 世界最大の危険物。


 中国代表が即答する。


「共同管理下へ置くべきだ」


「不可能だ」


 ロシア代表が切り捨てる。


「あれは既に一国家で制御できる存在じゃない」


「なら排除か?」


「できるのか?」


 沈黙。


 誰も答えられない。


 GOLIATHを素手で吹き飛ばした存在を、誰が止められる?


 その時。


 EDENが静かに言った。


『簡単ですよ』


 全員が凍る。


『彼は人類です』


『つまり』


 少女は微笑む。


『壊せます』

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