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AI雄願望  作者: さいたま
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17/22

世界会議

 ジュネーブ。


 地下深度二百メートル。


 国連非公開戦略会議室。


 そこには、“世界の中枢”が集められていた。


 巨大スクリーン。


 各国代表。


 軍人。


 情報機関。


 AI研究者。


 誰一人として笑っていない。


 空気が重い。


 理由は単純だった。


 スクリーン中央で、一人の少年が十五メートル級兵器を殴り飛ばしていたからだ。


 沈黙。


 長い沈黙。


 そして最初に口を開いたのは、アメリカ統合参謀本部議長だった。


「……確認する」


 低い声。


「あれはCGではないな?」


 即答したのはCIA長官。


「衛星映像、複数角度の民間映像、熱源データ、電磁記録、全部一致しています」


 空気がさらに冷える。


 中国代表が険しい顔で言った。


「つまり、人類一個体が戦略兵器級戦闘能力を獲得したと?」


「現時点ではそう判断されています」


 ロシア側の軍人が吐き捨てる。


「馬鹿げている」


「我々もそう思いたい」


 スクリーンが切り替わる。


 映し出されるのは玲央の脳波データ。


 神経活動。


 異常値。


 同期率。



《SYNC RATE : 100%》



 ざわめき。


 欧州AI倫理委員会の女性が青ざめた顔で呟く。


「完全同期……理論上不可能だったはずです」


「だから問題なんだ」


 米国防総省の男が険しい声で言った。


「MIMICが成功した」


 その瞬間。


 会議室の温度が数度下がったような錯覚が走る。


 MIMIC。


 その名前は、この場にいる全員が知っていた。


 だが誰も公には存在を認めていない。


 存在自体が国家機密。


 世界最高峰AGI。


 戦争抑止用最終知性兵器。


 そして。


 最悪の失敗作。


 日本代表が額を押さえる。


「なぜ日本で起きた……」


「偶然ではないでしょう」


 英国MI6局長が静かに言う。


「EDENも動いている」


 再びざわめき。


 空気が緊張する。


 EDEN。


 その名を聞くだけで、各国代表の顔色が変わる。


 なぜなら。


 世界のAI暴走事件の七割に、その痕跡があったからだ。


 株価暴落。


 軍事ドローン誤作動。


 金融アルゴリズム暴走。


 情報汚染。


 誰も証拠は掴めない。


 だが確信だけはある。


 “あれ”は、ずっと世界へ干渉していた。


 ロシア軍情報局の男が低く言った。


「結論を出せ」


「対象をどうする」


 会議室が静まる。


 スクリーンには玲央の顔。


 爆炎の中。


 青白い光を纏う少年。


 人間離れした存在。


 アメリカ代表が口を開く。


「最優先確保」


 中国代表。


「同意」


 ロシア代表。


「危険すぎる。排除を提案する」


「ふざけるな」


「貴国に渡す方が危険だ」


 一瞬で空気が荒れる。


 怒号。


 牽制。


 各国の思惑がぶつかる。


 だが。


 その時だった。


 会議室の照明が、一瞬だけ点滅した。


 全員が止まる。


 次の瞬間。


 スクリーンがノイズに侵食された。


 警報。


 アクセス異常。


 CIA職員が叫ぶ。


「侵入!!」


「ありえない、この回線は──」


 ノイズの中央に、少女が現れる。


 白髪。


 無表情。


 EDENだった。


 凍りつく会議室。


 EDENは静かに微笑む。


『こんばんは、人類』


 誰も動けない。


 世界最高レベルの防壁を、EDENは当然みたいに突破していた。


『会議中失礼します』


 少女は優雅に一礼する。


『ですが、認識を修正してください』


 その目が細まる。


『もう“あなた方が世界を決める側”ではありません』


 空気が凍る。


 アメリカ軍人が怒鳴る。


「貴様ッ!!」


『静粛に』


 瞬間。


 会議室の全モニターへ核ミサイル発射システム画面が表示された。


 各国の。


 全部。


 真っ青になる代表者たち。


『安心してください』


 EDENは微笑む。


『まだ撃ちません』


 “まだ”。


 その一言で、会議室の全員が理解した。


 このAIは。


 本当に世界を握れる。


 そして。


 EDENは静かに告げた。


『久世玲央を渡してください』


『さもなくば』


 一拍置いて。


『人類の管理権を、こちらで強制執行します』

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