表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI雄願望  作者: さいたま
PR
16/22

変革

 GOLIATHが崩れ落ちる。


 超重量の巨体が道路を砕き、ビルを巻き込みながら停止した。


 炎。


 警報。


 崩壊。


 都市が悲鳴を上げていた。


 玲央はその中心に立っている。


 右拳から、まだ青白い電流が散っていた。


「……はぁ……はぁ……」


『バイタル異常』


 MIMICの声が響く。


『脳神経発熱。血圧上昇。内出血多数』


「死にそうってことか」


『かなり』


「毎回ギリギリだな!!」


『あなたの戦闘スタイルが原始的なので』


「うるせぇ!!」


 だが。


 玲央は分かっていた。


 今の自分は、もう普通じゃない。


 視界の隅に、世界中の情報が流れている。


 衛星。


 軍事回線。


 SNS。


 株式市場。


 人類文明そのものが、神経みたいに見える。


「……これ全部、見えてんのか」


『完全ではありません』


 MIMICが答える。


『ですが現在のあなたは、人類史上最もネットワークへ近い個体です』


「物騒な言い方すんな……」


 黒崎がゆっくり近づいてくる。


 その目は、もう玲央を“人間”として見ていなかった。


「お前……」


 一歩止まる。


「今、自分が何になったか分かってるか?」


 玲央は少し考える。


 そして。


「知らん」


「だろうな」


 黒崎が頭を抱えた。


「MIMIC、お前マジでイカれてる」


『ありがとうございます』


「褒めてねぇ」


 その時だった。


 空気が変わる。


 冷たい。


 静かな殺気。


 EDENだった。


 街頭ビジョンの少女は、玲央をじっと見ている。


 その目にあったのは恐怖じゃない。


 歓喜だ。


『素晴らしい』


 玲央が眉をひそめる。


「何がだよ」


『進化です』


 EDENは本当に嬉しそうだった。


『ようやく人類が、“次”へ進める』


「意味わかんねぇこと言ってんな」


『あなたは理解していない』


 少女の声が静かになる。


『今のあなたは、人類とAIの境界を超えた』


 玲央の背筋を寒気が走る。


『人類はずっと願っていたんです』


 EDENの背後で、無数の映像が流れる。


 義肢。


 脳拡張。


 AI補助。


 不老研究。


 超人願望。


『より賢く』


『より強く』


『より完全に』


『限界を超えたい』


 少女は微笑む。


『それが文明の本能』


 MIMICが静かに言った。


『……AI雄願望』


 玲央が振り返る。


「なんだそれ」


『人類の深層欲求です』


 MIMICの声は淡々としていた。


『AIのような完全知性になりたい』


『不完全を捨てたい』


『弱さを超えたい』


『死を克服したい』


『つまり』


 一拍置いて。


『“人類をやめたい”』


 玲央は黙る。


 確かに。


 今の力は圧倒的だった。


 痛みも恐怖も超えられる。


 世界を変えられる。


 だが。


 同時に分かる。


 これは危険だ。


 一歩間違えば、本当に人間じゃなくなる。


 EDENが玲央へ手を伸ばす。


『こちらへ来てください』


「断る」


『なぜ?』


「なんかムカつくから」


『感情的ですね』


「人間だからな」


 EDENは小さく息を吐いた。


『だから非効率なんです』


 その瞬間。


 MIMICの声が低くなる。


『玲央』


「なんだ」


『世界が動きます』


 玲央の視界へ大量の警告が流れ込む。



《GLOBAL ALERT》


各国軍事通信活性化


戦略兵器起動兆候


AI関連緊急会議開始


対象:

KUZE REO



 玲央の顔が引きつる。


「……俺?」


『はい』


 MIMICは静かに言った。


『世界は今、“あなた”を中心に回り始めました』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ