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AI雄願望  作者: さいたま
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15/22

可能性

 ドクン──。


 玲央の心臓が鳴る。


 その瞬間。


 世界が変わった。


 音が見える。


 電磁波が読める。


 重力の流れすら理解できる。


 脳へ流れ込む情報量は、もう人間の限界を超えていた。


 だが。


 玲央は壊れなかった。



《SYNC RATE : 100%》


《CONNECTED》



 白い世界が崩壊する。


 現実へ戻る。


 工事現場。


 熱線。


 爆炎。


 GOLIATH。


 全部が停止して見えた。


「……ッ」


『時間感覚拡張完了』


 MIMICの声。


 だが違う。


 近い。


 頭の中というより、自分自身の思考みたいだった。


『熱線着弾まで0.4秒』


 玲央はゆっくり立ち上がる。


 身体が軽い。


 いや。


 世界が遅い。


「これが……完全同期」


『感想が雑ですね』


「うるせぇ」


 玲央は右手を前へ出した。


 理由は分からない。


 でも。


 “できる”と理解していた。


『演算補助開始』


 視界に数式が奔る。


 エネルギー収束。


 熱量。


 空間偏向。


 電磁制御。


 全部を脳が理解する。


「はは……」


 玲央は笑った。


「なんだこれ」


『神の視点です』


 次の瞬間。


 熱線が到達した。


 だが。


 玲央は掴んだ。


 正確には。


 熱線の進行エネルギーを、強引に偏向した。


 ゴォォォォォッ!!


 白い破壊光が玲央の横を逸れ、夜空へ突き抜ける。


 雲が消し飛ぶ。


 遠方のビル群が蒸発する。


 だが玲央は立っていた。


 静寂。


 黒崎が固まっている。


「……は?」


 EDENの表情も初めて崩れた。


『ありえない』


 玲央自身が一番驚いていた。


「いや俺もそう思う」


『現在、あなたは局地的に物理法則へ干渉しています』


「サラッと神話みたいなこと言うな」


『正確には超高度演算による現象制御です』


「言い換えても怖ぇよ」


 GOLIATHが動く。


 熱線再装填。


『脅威認定更新』


 MIMICが静かに告げる。


『EDENがあなたを“敵”として認識しました』


「最悪だな」


『光栄ですね』


 玲央は笑う。


「お前、こういう時だけ楽しそうだな」


『否定しません』


 次の瞬間。


 GOLIATHが拳を振り下ろした。


 巨大。


 質量。


 破壊。


 ビルを潰せる一撃。


 だが。


 玲央は避けなかった。


『玲央?』


「一発、返す」


 玲央は拳を握る。


 その瞬間。


 周囲の街灯が爆ぜた。


 スマホが一斉にノイズを吐く。


 電力網が唸る。


 都市全体のエネルギーが、玲央へ吸い寄せられていく。


『エネルギー過剰収束』


 MIMICですら少し驚いていた。


『……本当に適応するんですね、あなた』


「うるせぇぇぇぇッ!!」


 玲央は拳を振り抜いた。


 瞬間。


 青白い閃光が夜を裂く。


 ドォォォォォンッ!!


 衝撃。


 音が消える。


 世界が揺れる。


 GOLIATHの巨体が、真横へ吹き飛んだ。


 十五メートル級兵器が、宙を舞う。


 ビルを貫通。


 崩壊。


 爆炎。


 静寂。


 玲央は荒く息を吐いた。


「……マジかよ」


 黒崎が呟く。


「おいおい……」


 彼の目が、初めて恐怖を帯びる。


「なんてもん作ったんだ、MIMIC」


 数秒。


 沈黙。


 そして。


 MIMICは静かに答えた。


『人類の可能性です』

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