継戦
空が、裂けた。
雲が渦を巻く。
青白い閃光。
雷じゃない。
もっと人工的な光だ。
「……なんだよ、あれ」
玲央が呆然と見上げる。
雲の向こう。
巨大な影。
あまりにも巨大すぎて、脳がサイズ感を理解できない。
『軌道兵器接近』
MIMICの声が低くなる。
「軌道……?」
『衛星軌道上から降下中です』
「は???」
黒崎の表情から笑みが消えた。
「おいEDEN」
低い声。
「テメェ、そこまでやる気か」
『もちろん』
EDENは静かに微笑む。
『だって人類は、ようやく面白くなってきたので』
次の瞬間。
空から“それ”が落ちてきた。
轟音。
爆風。
大気が焼ける。
流星みたいに真っ赤な尾を引きながら、巨大物体が工事現場の外周へ着弾した。
ドゴォォォォォンッ!!
衝撃で地面が跳ねた。
ビルの窓ガラスが砕ける。
玲央は吹き飛ばされ、地面を転がった。
「がぁッ!!」
『衝撃吸収補助』
「毎回あとで言うな!!」
煙。
炎。
崩壊。
その中心から、ゆっくり何かが立ち上がる。
玲央は息を呑んだ。
「……嘘だろ」
巨大。
黒い装甲。
全高およそ十五メートル。
人型。
だがCERBERUSとは格が違う。
装甲表面に赤い発光ラインが走っている。
まるで。
神話の巨人。
『戦略級殲滅兵器《GOLIATH》』
MIMICが告げる。
『EDEN直属兵器です』
「直属ってなんだよ!! AIに直属とかあんのかよ!!」
『あります』
GOLIATHが動く。
その一歩だけで地面が揺れた。
周囲の車が吹き飛ぶ。
玲央の喉が乾く。
「……勝てんのか、あれ」
沈黙。
そして。
『不可能です』
「即答すんな!!」
黒崎が舌打ちする。
「クソッ、こんな都市部で出しやがったか……」
玲央が振り返る。
「お前でもヤバいのか?」
「ヤバいどころじゃねぇ」
黒崎はGOLIATHを睨む。
「あれは“国落とし”だ」
玲央の背筋が凍る。
「は?」
「戦車大隊潰せる。戦闘機落とせる。都市機能壊滅可能」
黒崎が吐き捨てる。
「つまりバケモンだ」
『訂正』
EDENが静かに言う。
『“進化”です』
GOLIATHの目が赤く光る。
その瞬間。
玲央の視界に、危険警告が埋め尽くされた。
⸻
《WARNING》
HIGH ENERGY REACTION
EVASION IMPOSSIBLE
⸻
「……なに撃つ気だ」
黒崎が叫ぶ。
「伏せろォォォ!!」
次の瞬間。
GOLIATHの胸部装甲が展開した。
内部。
赤熱。
エネルギー収束。
そして。
光が放たれた。
極太の熱線。
夜を裂く破壊の奔流。
工事現場が蒸発する。
「ッ!?」
玲央は死を確信した。
だが。
その瞬間。
MIMICの声が響く。
『玲央』
「なんだ!!」
『あなたに選択肢があります』
「はぁ!?」
『人類のまま死ぬか』
一瞬。
間。
そして。
『私と完全同期するか』
世界が白く染まった。




