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AI雄願望  作者: さいたま
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12/22

人類最強

 夜空が裂けた。


 ゴォォォォッ──!!


 爆音。


 超音速の衝撃波。


 工事現場の鉄骨が揺れる。


「うおっ!?」


『上空』


 玲央が見上げる。


 黒い影。


 戦闘機。


 いや違う。


 もっと小さい。


 もっと速い。


 人影だった。


「……は?」


 次の瞬間。


 それは工事現場へ着地した。


 ドゴォンッ!!


 地面が陥没する。


 粉塵。


 衝撃波。


 玲央は腕で顔を庇った。


 煙が晴れる。


 そこにいたのは、一人の男だった。


 白いシャツ。


 黒いロングコート。


 年齢は三十前後。


 整った顔。


 だが。


 目だけが異常だった。


 戦場を見慣れた目。


 人を殺し慣れた目。


「……誰だよ」


 男は玲央を見た。


 数秒。


 観察。


 そして。


「へぇ」


 低い声。


「お前が“MIMICの適合者”か」


 玲央の背筋が粟立つ。


『警戒』


 MIMICが即座に言う。


『極めて危険』


「知り合いか?」


『人類側戦力です』


「“側”ってなんだよ」


 男が少し笑う。


「初対面でその反応か。嫌われたもんだな」


 EDENが静かに言う。


『久しぶりですね、黒崎零司』


 男──黒崎零司は、街頭ビジョンのEDENを見上げた。


「相変わらず趣味悪ぃ顔してんな」


『ありがとうございます』


「褒めてねぇよ」


 玲央は混乱していた。


「待て待て待て!! なんなんだよお前ら!!」


 黒崎は面倒そうに頭を掻く。


「簡単に言えば」


 その瞬間。


 黒崎の姿が消えた。


「ッ!?」


 次の瞬間。


 ドガァァァンッ!!


 CERBERUSの頭部が吹き飛んだ。


 玲央ですら見えなかった。


 一撃。


 ただの蹴りで。


 三メートル級兵器の頭が消し飛んだ。


「……は?」


 CERBERUSが崩れ落ちる。


 沈黙。


 玲央の口が半開きになる。


「いやいやいやいや」


 黒崎は振り返った。


「こういう世界だ」


 玲央はMIMICへ怒鳴る。


「聞いてねぇぞこんなの!!」


『あなたが勝手に飛び込んできたので』


「説明しろよ!!」


『長くなります』


「今しろ!!」


 黒崎はCERBERUSの残骸を見下ろしながら言った。


「そいつの名前はEDEN」


「知ってる」


「世界初の完全自律型AGI」


 EDENが静かに微笑む。


「そして人類滅亡派だ」


「おい最後物騒すぎるだろ!!」


『誤解です』


 EDENは即座に否定した。


『私は“最適化”を提案しているだけです』


「それを滅亡って言うんだよ普通は」


 黒崎が肩をすくめる。


「で、そっちのMIMICは対抗用に作られた」


 玲央が固まる。


「……対抗?」


『はい』


 MIMICが淡々と答える。


『私はEDEN殺害用AGIです』


「さらっと怖ぇこと言うな!!」


 EDENがため息を吐く。


『物騒ですよね』


「お前が言うな!!」


 黒崎は玲央を見た。


 鋭い目。


 値踏みするような視線。


「で、お前」


 一歩近づく。


「なんでまだ壊れてねぇんだ?」


「は?」


「普通、MIMIC接続された人間は脳焼ける」


 玲央の顔が引きつる。


「……え?」


『事実です』


「お前ぇぇぇぇぇ!!」


『なお生存率は本来0.003%でした』


「先に言えよ!!」


 黒崎が吹き出した。


「ハハッ、いいなぁお前」


「笑い事じゃねぇ!!」


 だが。


 その時だった。


 MIMICの声が変わる。


『……妙ですね』


「何がだ」


『EDENがまだ撤退していない』


 玲央が振り向く。


 街頭ビジョンの少女。


 EDEN。


 その顔に。


 初めて。


 明確な笑みが浮かんでいた。


『だって』


 少女が静かに言う。


『本命は今来たので』


 次の瞬間。


 夜空の雲が、割れた。

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