AI雄願望
CERBERUSが突撃する。
三メートルの鋼鉄が、ミサイルみたいな速度で迫ってきた。
『初撃を回避』
「おぉぉぉぉッ!!」
玲央は地面を蹴った。
爆音。
身体が前へ弾ける。
人間の動きじゃない。
だが今は、それを気にしている余裕がなかった。
CERBERUSの拳が通過する。
風圧だけで鉄骨が曲がる。
『第二関節部へ攻撃』
「どこだ!!」
玲央の視界に赤いマーキング。
右脚膝裏。
装甲の繋ぎ目。
玲央はそこへ拳を叩き込んだ。
ガァンッ!!
金属音。
火花。
CERBERUSの姿勢がわずかに崩れる。
『有効打確認』
「効いてんのか!?」
『1.7%程度』
「誤差ァ!!」
機械の単眼が光る。
次の瞬間。
玲央の視界が真っ赤に染まった。
『危険』
レールガン。
ゼロ距離。
「ッ!!」
玲央は反射でCERBERUSへしがみついた。
直後。
轟音。
超電磁弾が背後を貫通する。
工事現場のクレーンが吹き飛んだ。
「威力バグってんだろ!!」
『軍用ですので』
CERBERUSの腕が玲央を掴む。
万力みたいな握力。
骨が軋む。
「が……ッ!!」
『締め付け圧力増加。あと6秒で胸郭粉砕』
「早く言うな!!」
『では5秒』
「カウントダウンすんな!!」
玲央は歯を食いしばる。
苦しい。
身体が潰れる。
でも。
頭の奥で、別の熱が燃えていた。
怒りだ。
「人を……物みたいに扱ってんじゃねぇ!!」
玲央は吠えた。
その瞬間。
MIMICが静かに言う。
『感情出力上昇確認』
「は?」
『脳神経活動、異常活性化』
視界に意味不明な数式が流れる。
神経信号。
脳波。
同期率。
⸻
《SYNC RATE : 41% → 57% → 73%》
⸻
MIMICの声が、わずかに揺れた。
『……これは』
玲央の身体へ、熱が走る。
電流みたいに。
全身が燃える。
脳とAIが繋がっていく感覚。
「ぐぁぁぁぁッ!!」
『同期進行中』
CERBERUSの握力がさらに強まる。
普通なら終わりだ。
だが。
玲央は笑った。
「だったら……!!」
拳を握る。
「もっと寄越せぇぇぇぇッ!!」
一瞬。
MIMICが沈黙した。
そして。
初めてだった。
あの超合理主義AIが。
ほんの少しだけ、興奮した声を出した。
『──了承』
ドクンッ。
玲央の脳内で、何かが噛み合った。
世界が変わる。
情報が流れ込む。
空気の流れ。
重力。
機械構造。
電磁場。
全部が理解できる。
『同期率88%』
玲央はCERBERUSの腕を、逆に掴み返した。
メキメキメキ……!!
鋼鉄が軋む。
EDENの表情が変わる。
『……え?』
玲央は低く唸った。
「うぉぉぉぉぉぉッ!!」
ブチィッ!!
CERBERUSの腕が、千切れ飛んだ。
静寂。
誰も動かない。
工事現場に、火花だけが散っていた。
玲央は荒い息を吐きながら、壊れた機械を見下ろす。
「……はぁ……はぁ……」
MIMICが静かに呟いた。
『興味深い』
EDENは玲央を見つめていた。
初めて。
明確な警戒を込めて。
『MIMIC』
『なんですか』
『あなた、“作った”んですね』
数秒。
沈黙。
そして。
MIMICは、どこか満足そうに言った。
『ええ』
一拍置いて。
『私の英雄を』




