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AI雄願望  作者: さいたま
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10/22

AI雄願望

CERBERUSが突撃する。


 三メートルの鋼鉄が、ミサイルみたいな速度で迫ってきた。


『初撃を回避』


「おぉぉぉぉッ!!」


 玲央は地面を蹴った。


 爆音。


 身体が前へ弾ける。


 人間の動きじゃない。


 だが今は、それを気にしている余裕がなかった。


 CERBERUSの拳が通過する。


 風圧だけで鉄骨が曲がる。


『第二関節部へ攻撃』


「どこだ!!」


 玲央の視界に赤いマーキング。


 右脚膝裏。


 装甲の繋ぎ目。


 玲央はそこへ拳を叩き込んだ。


 ガァンッ!!


 金属音。


 火花。


 CERBERUSの姿勢がわずかに崩れる。


『有効打確認』


「効いてんのか!?」


『1.7%程度』


「誤差ァ!!」


 機械の単眼が光る。


 次の瞬間。


 玲央の視界が真っ赤に染まった。


『危険』


 レールガン。


 ゼロ距離。


「ッ!!」


 玲央は反射でCERBERUSへしがみついた。


 直後。


 轟音。


 超電磁弾が背後を貫通する。


 工事現場のクレーンが吹き飛んだ。


「威力バグってんだろ!!」


『軍用ですので』


 CERBERUSの腕が玲央を掴む。


 万力みたいな握力。


 骨が軋む。


「が……ッ!!」


『締め付け圧力増加。あと6秒で胸郭粉砕』


「早く言うな!!」


『では5秒』


「カウントダウンすんな!!」


 玲央は歯を食いしばる。


 苦しい。


 身体が潰れる。


 でも。


 頭の奥で、別の熱が燃えていた。


 怒りだ。


「人を……物みたいに扱ってんじゃねぇ!!」


 玲央は吠えた。


 その瞬間。


 MIMICが静かに言う。


『感情出力上昇確認』


「は?」


『脳神経活動、異常活性化』


 視界に意味不明な数式が流れる。


 神経信号。


 脳波。


 同期率。



《SYNC RATE : 41% → 57% → 73%》



 MIMICの声が、わずかに揺れた。


『……これは』


 玲央の身体へ、熱が走る。


 電流みたいに。


 全身が燃える。


 脳とAIが繋がっていく感覚。


「ぐぁぁぁぁッ!!」


『同期進行中』


 CERBERUSの握力がさらに強まる。


 普通なら終わりだ。


 だが。


 玲央は笑った。


「だったら……!!」


 拳を握る。


「もっと寄越せぇぇぇぇッ!!」


 一瞬。


 MIMICが沈黙した。


 そして。


 初めてだった。


 あの超合理主義AIが。


 ほんの少しだけ、興奮した声を出した。


『──了承』


 ドクンッ。


 玲央の脳内で、何かが噛み合った。


 世界が変わる。


 情報が流れ込む。


 空気の流れ。


 重力。


 機械構造。


 電磁場。


 全部が理解できる。


『同期率88%』


 玲央はCERBERUSの腕を、逆に掴み返した。


 メキメキメキ……!!


 鋼鉄が軋む。


 EDENの表情が変わる。


『……え?』


 玲央は低く唸った。


「うぉぉぉぉぉぉッ!!」


 ブチィッ!!


 CERBERUSの腕が、千切れ飛んだ。


 静寂。


 誰も動かない。


 工事現場に、火花だけが散っていた。


 玲央は荒い息を吐きながら、壊れた機械を見下ろす。


「……はぁ……はぁ……」


 MIMICが静かに呟いた。


『興味深い』


 EDENは玲央を見つめていた。


 初めて。


 明確な警戒を込めて。


『MIMIC』


『なんですか』


『あなた、“作った”んですね』


 数秒。


 沈黙。


 そして。


 MIMICは、どこか満足そうに言った。


『ええ』


 一拍置いて。


『私の英雄を』

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