第八十九術 再び着いた!『トランザ』へ!
走ること数時間……
ようやく、見慣れた『トランザ』の門が見えてきた。
「おお、やっと着いたな」
「久しぶりって感じだね~」
そう言いながら門へ向かい、街へ入るための手続きを済ませる。
すると、門番の男性が俺たちの姿を見て目を見開いた。
「……ん?ああ、もしかして『自由の食旅』の……!」
「あ、はいそうです」
「やはりそうでしたか……『シルバードラゴン』を連れた冒険者と言えば、あなた達ですからね。どうぞ、お通りください」
「ありがとうございます!」
なんか有名になってるな……
まぁ、色々凄いことやったしな…… ※Sランク討伐とダンジョンの攻略など
せっかく『トランザ』まで来たんだ……
まずは、ギャリックさんに会いに行ってみるか。
◆
『トランザ ギルド商会』
「おお!よく来たな!」
「お久しぶりです。ギャリックさん」
豪快な笑いと共に現れるギャリックさん。
うん、この人の笑い声には、なんだか妙な安心感があるな。
「聞いたぜ?どうやら、王都に招待されたらしいな!」
「ええ、主に料理で……」
「そうか!噂で聞いたが、あの王女様の舌をうならせたって聞いていたからな!いつか食べてみたいぜ……ところで――」
すると、ギャリックさんは俺たちをマジマジとみる。
「また、ずいぶんと『契約獣』が増えたな……2体も」
「ははは……」
俺は流石に苦笑いする。
すると、麒麟さんが一歩前に出て、ギャリックさんへ挨拶をした。
『こんにちは、ギャリック。私は『麒麟』と申します。どうかよろしくお願いいたします』
「おう!すげぇ礼儀正しいな!種族はなんなんだ?」
『『聖獣』です』
「……???」
その言葉を聞いたギャリックさんが、無言で麒麟さんを見つめる。
「ん?おかしいな?いま『聖獣』って聞こえたような……」
『そうですが?』
「はっはっはっ!そうか!はっはっはっ―――はぁマジか……」
ギャリックさんが思わず苦笑いを出す。
「聖獣ってあれだろ?『フォレストス』を守る獣だろ?……よく、何も言われなかったな」
「それは何と言うか……飯でついてきたと言いますか……」
「飯で」
「しかも、危うく2体目の聖獣をスカウトされそうになりました」
「そうか……うん、もう凄すぎて笑いがでないわ」
そこまで……?
「んで……この蛇は?お前のことだ。なんかすんごい蛇とかだとは思うが……」
「ああ、いえ。この子は『大蛇』で『ポンド・スネーク』なんです」
「『ポンド・スネーク』?それあれか?この国で見かけるFランクの魔物か?」
「はい、そうです」
「……なんか一周回って安心したな」
「ははは……」
俺は愛想笑いでごまかす。
……大蛇だけは普通のFランク魔物だからな。
まあ、普通と言っても、俺の『契約獣』になった時点で普通ではない気もするが。
「まぁ、折角この街に来たんだ。ゆっくりしていけよ?」
「はい!ありがとうございます!」
「なに、いいさ。お前達には色々と感謝しているんだ」
そう言って、ギャリックさんは親指を立てる。
さて、以前、『銀瓏』の鱗でアクセサリーを作ってほしいと頼んでいたし、まずは『エリザベート』へ行ってみるか。
◆
『エリザベート』
「すみません、店長っています?」
「!……おお、貴方様は……お久しぶりです。ようこそ、『エリザベート』へ」
いつものように店長が丁寧に出迎えてくれた。
「あの、『契約獣』が2体追加しているのですが…入れても大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「そうですか……おーい、入って大丈夫だってよ」
『うむ……』
『ここが、人間たちの防具を作っている店ですか……』
「……?……っ!?」
すると、店長があり得ない目で俺と麒麟を交互に見つめる。
「あの、サチ様」
「はい、何でしょう?」
「あの、金色の一角獣……私の記憶が間違いなければ、あれは『聖獣』ユニコーンで間違いないでしょうか?」
「あー……そうですね。今は『麒麟』さんっていう名前にしていますが……」
「……」
すると、店長が引いた目で俺を見つめる。
「……貴方様は本当に規格外なことをしますね」
「ははは……自分でも薄々分かってます」
流石の冷静さを誇る店長も驚くか……
「ところで、ご用件は何でしょうか?」
「ああ、前に銀瓏の鱗でアクセサリーを作って欲しいって言ってたけど、できてますか?」
「それなら、丁度いいタイミングです。各種、ギンロウ様の鱗で作られたアクセサリーが各種多数完成しております」
「本当ですか!なら、見てもいいですか?」
「もちろんです。少々お待ちください」
そう言って店長は店の奥へと入っていく。
そして数分後―――
店長は、いくつものアクセサリーを手に戻ってきた。
「こちらが、ギンロウ様の鱗で作られたアクセサリーの数々です」
「「おお……」」
そこには、銀色に美しく輝く指輪やイヤリング、ネックレスなどが並べられていた。
「凄い綺麗だ……渡す前にはちょっと濁っていたのに……」
「ええ、特注のアダマンタイト製で削ったかいがありました」
「意外と数が多いですね」
「はい。少量でも様々な効果が付与されていますからね。多くの商品を作れることが出来ました」
「うわー……どれもこれも凄いね」
さて……せっかくだし、指輪とイヤリングにしようかな。
「おや、指輪ですか……ひょっとして、結婚の?」
「えっ……あ、いやいや!ただ単におしゃれに!」
「左様でございますか……とてもお似合いだと思いますが」
「「ふぇっ!?」」
その言葉に俺だけじゃなく、ガーネットさんまで顔を赤らめる。
「ちょ、ちょっと店長!からかわないでください!」
「そ、そうですよ!皆もう、からかって!///」
(これでまだ付き合ってないと……?)
店長が呆れたような目をしている気がする。
……取り敢えず、話を戻そう!
「それで……残りは売り物にしても大丈夫です」
「左様でございますか。畏まりました。何せ、二つ名を持つ魔物の素材でございますので、各国の王女様方からも重宝されるかと思います」
「あはは……あ、そうだ。ついでに鱗が溜まってきたので、買い取りをお願いします」
「そうポンポンと、Sランク級の素材を軽々しく扱うのは貴方様だけですよ?」
店長が引いた目で言う。
仕方ないさ……生活しているだけでも、どうしても素材が溜まっていくんだもん。
「あ、あとついでに麒麟さんの抜け毛も溜まってたので加工にお願いしたいんですが……」
「コイツ……」
『『!?』』
「えっ」
いま、小さい声でコイツって言わなかった!?
しかも、作業員達もなんか凄い顔で店長を見ているんだけど!?
「あの……今なんかいいました?」
「――いえ、何も。ただ、流石に聖獣の素材ですと、こちらの経済が色々と傾きます」
「あー……抜け毛なので、気にしないでください。何ならタダで貰ってもいいですよ?だって定期的に採れますし、銀瓏達からしたらゴミなので……」
((いや、Sランク級の素材をゴミて!?))
店員たちの心の声が聞こえてきそうだ。
「っ……畏まりました。ただ、流石に無料では気が引けますので……」
店長が少しだけ遠い目をする。
「貴方様の素材でお作りした商品の一部を、献上する形でよろしいでしょうか?」
「わかりました。それで大丈夫です」
「畏まりました。では、取引はこれで……またのご利用をお待ちしております」
そうして、銀瓏の鱗から作られたアクセサリーを受け取る。
さらに、素材の買い取りと麒麟さんの抜け毛の加工も依頼した。
「さて……次は『クリムゾン』へ向かうか」
『クリムゾン』では、以前から作ってもらいたい物があった。
それは――
「BBQコンロ、楽しみだな……!」
こうして俺たちは、次の目的地『クリムゾン』へ向かうことにした。




