第八十六術 一気に加護三つ貰うとか聞いてないんだが!?
トランザへ向かう道中……
もうすぐ日が暮れそうだったため、俺たちは開けた場所で野営することにした。
夕食も食べ終え、あとは寝るだけ――そう思ったところで、ふと思い出す。
「あ、そうだ」
ガーシュとソトールにお供え物を渡しておくか。
ガーシュはいつも通り、菓子系で……ソトールは酒――『ビール』でいいかな?つまみに『イカせんべい』にして……
俺は手を合わせ、小さく祈った。
「ガーシュ様、ソトール様、お供え物を用意しました。どうか受け取りください」
『おお!来た来たぁ!』
『いつもすまんな』
二柱の声が聞こえた瞬間、お供え物は光となって消えていく。
よし、これで本当に寝――
『な、なぜお主たちが!?』
『貴様たちは……!』
『あらあら~なにやら楽しそうなことをしているじゃない♪』
「……え?」
聞いたことのない声が、頭の中に響いた。
え、誰!?
『見ていたぞ。何やらコソコソと人間から何かを貰っているな?』
『ずるいっス!うちらだけ仲間外れなんてひどいっス!』
他にも、聞いたことの無い声が!?
もしかして、ガーシュとソトール以外の神ってことか!?
『ねぇそこの異世界君?』
「えっ!?俺!?」
『そうそう、私は生命神『ミイソ』っていうの、よろしくね♪』
明るく軽い女性の声が響く。
続いて、低い男の声。
『よぉ人間、俺は魔属神『ビネガーン』。全属性を宿す力を持つものだ』
さらに元気いっぱいな声が続く。
『こんにちは異世界人君!うちは職達神『ユーセイ』っていうっス。他の神とは新神っスがよろしくっす!』
他の神様もテレパシーで話しかけてくる。情報量が多すぎる……
『ところで~』
ミイソ様が楽しそうに話し始める。
『さっきチラッと見えたけど、珍しいモノを取り寄せてるじゃない?』
「えっ?ああ、それは……」
『な、何を言うのだ!』
ガーシュ様が慌てて割って入った。
『これは我輩が加護を授けた対価として、供え物を貰っているだけなのだ!』
『なら、私たちも加護を授ければいいってことじゃない?』
『うっ……』
ガーシュ、完全に言葉に詰まった。
というか、ちょっと待って……なんか加護貰う前提で進めてない?
「あの~……流石に加護が増えると、色々と面倒なことが……」
『なんだ?俺たちの加護が受け取れないと?』
「受け取る以前に俺、今二つ加護があるんだけど!?」
これ以上増えたら各国が大騒ぎになる未来しか見えない!
「というか、二つだけでも珍しいのに、三つ以上は流石にいないでしょう?」
『……まぁ、確かにな。そんな記録はない』
ソトールが静かに頷く。
「ほら、ソトール様もこう言っているし、俺はこれで満足しているんですよ!」
『ふーん……成程ね……』
お、ビネガーンが頷いた。
よしよし、これで諦め――
『なら、お前じゃなければいいんだろ?』
「……ん?」
―――パチッ!
指を鳴らす音が響いた。
「……え?何したんですか?」
ビネガーンが平然と言う。
『理屈は分かった……なら、同じパーティーメンバーに加護を与えれば、問題はないだろう?』
「え?誰に?」
……なんだろう、嫌な予感しかしない。
『そこの魔法使いに』
「ガーネットさんんんんっ!?」
おま、なんてことしてんだ!?
『成程……なら私も♡』
――ピロンッ!
「なぁ!?」
何か俺も光ったぞ今!?
『うふふ……サービスよサービス』
『じ、じゃあうちもっス!』
――ピロンッ!
「おああ!?」
また光った!?
『ふふ、これでお供え物を貰えるわね♡』
『~っ! こうなるから黙っていたのだ!!』
ガーシュが頭を抱える。
『おい……!』
ソトールまで呆れている。
『さぁて』
ミイソが急に声を弾ませる。
『さっきの見てたわよ~?あなた、フローラルの王女に何やら美容の化粧品渡してたわね?それ、供えてくれないかしら?』
「え!?それって『洗顔クリーム』ですか?」
『そうそれ!あと、シャンプーとトリートメントもいいかしら?あれって髪の艶が凄いらしいわよね!』
どうやら、ミイソは美容に目がないらしい……
生命神、美容ガチ勢だった。
『なら俺は酒だ』
ビネガーンが即答する。
『ソトールが飲んでたビールを5……いや10本くれ』
「じ、10!?」
どんだけ酒飲むんだこの人……ソトールより倍だぞ……
『う、うちは、『惣菜の素』というのが気になったっス!』
「も、素?」
『そうっス。うち、料理が趣味で……できればそういう便利そうな調味料を色々試したいっス!』
意外すぎる。
職達神、めちゃくちゃ家庭的だった……というか、神でも料理するんだ……
『~っ!いい加減にしろ貴様らぁ!!』
『『っ!?』』
「うおっ!?」
ズドン、と響くような声。
――それは、ソトールだった。
場の空気が一瞬で静まり返る。
『俺たちは神だ。神である俺たちが、人間に一方的に集るとは、何事か!!』
『何だい、自分も結構貰っているじゃん』
『俺は、サチが負担がかからないように酒類を2本でいいと言った。それをサチが気を利かせてつまみまで添えただけだ』
ソトールは珍しく怒っていた。
『貴様らのように加護を餌に私利私欲へ走る愚か者とは違う』
『そうじゃ~言ったるのだ、ソトール!』
『貴様にも言っているんだぞガーシュ!!』
『シュン……』
さ、流石、神の中での真面目さ……すげぇ真っ当なこと言っている。
『あーはいはい』
ビネガーンが肩をすくめるように言う。
『流石真面目ちゃんのソトールって事だな……じゃあこういうことか?そこの人間に負担がかからなければいいって事だろ?』
『む?』
「え」
『おい、人間。確かお前、魔力を変化させて異世界の物を取り寄せられるんだろ?』
「え?ああ、はいそうです」
『なら、これは餞別代わりだ』
――パチンッ!
また指を鳴らした。
「えっと……何したんですか?」
『『個体能力』の残高見てみろ』
「ん?」
俺は『等価交換』を開き、MCの残高を見ると、こう書かれていた―――
【MC】 現在残高MP 50,000,000
「!?」
なんか一気に5000万獲得してる!?
『これなら、文句はないだろ?』
『ビネガーン、貴様……』
『成程……ならうちも!』
「え?」
『あら、じゃあついでに♡』
「ちょっ!?」
【MC】 現在残高MP 100,000,000
「一億ぅぅぅっ!?」
MC残高が一億になってる!!
Gも十分すぎるほどあるのに、今度はMPまで国家予算みたいな額になったんだけど!?
『異世界の化粧品って結構高いものもあるでしょ?これは前払いよ♡』
『酒も結構高額な物もあるらしいな……!』
『うちは調味料とかもいいっスけど、便利グッズもお願いしたいっス!』
「あ、あのね……」
どこまで日本を調べたんだ、この神様たち。
『っ……』
ソトールは深いため息をついた。
――もう完全に諦めた顔だ。
……ここまで貰ってしまった以上、返さないわけにもいかない。
俺は『等価交換』を開き、それぞれのお供え物を取り寄せた。
ミイソは、今流行のシャンプー、リンス、ボディーソープ。
ビネガーンは金色ラベルの有名ビール。
ユーセイはミックススパイスや焼肉のタレ、惣菜の素をいくつか。
「はい、追加の供え物です!どうぞ!」
『『おお~っ!!』』
光となって供え物が消えていく。
……なんだろう、戦闘より疲れた気がする。
『……すまない、サチ』
ソトールが静かに謝った。
「いえ……ソトール様は悪くないです」
本当に苦労人なんだな、この神様……
もう考えるのをやめよう、今日は寝よう。
そう決めた俺は、疲れ切った体を寝袋へ沈め、そのまま深い眠りへ落ちていった。
その他の【加護】詳細
・生命神の加護【小】
・不老不死【小】 ・HP最大値20%UP ・HP成長値UP【小】 ・即死・呪い無効 ・状態異常無効 ・生息地全適応
・魔属神の加護
・魔力節約 ・全属性魔法威力最大値50%UP ・全属性魔力威力成長値UP ・全属性魔法習得
職達神の加護
・生成成功率50%UP ・職業補正50%UP ・製品品質UP ・物質生成速度UP




