特別術 箸休め その4
[クライ、外堀を埋める]
こんにちは、私の名前は『フローラル・クライ』。
ここ『フローラル』の王女を務めています。
先日、パーティーに参加した際、サチという方から『洗顔クリーム』という代物を頂きました。
早速、王都に帰って使ってみると―――
「うそ……長年悩んでいたシミが綺麗サッパリ消えてる……!?」
今まで、我が国の製品でも効果は薄かったのに……
凄い、こんな小さな道具で、ここまでの効果が……!
「これほどの道具をお持ちしているとは……初めてです……」
これには、私の側近も驚いている。
「他の物も試しましたが……これは肌がすべすべになり、こっちは黒い毛穴をごっそり洗える!そして、これは潤いを保てる……ああ、私が長年欲しかったものが手元に―――はっ!」
瞬間、私はとあることを閃きました。
「どうしましたか?王女様?」
「彼……たしか、ガーネットといい感じになっていたわね?」
「は、はぁ?」
「彼と交流を続ければ、これほど素晴らしいアイテムが手に入るということですね」
「そうですね。これほど珍しいものをお持ちであれば……」
「そして、これほど長く付き合うには、この国の生まれであるガーネットさんをくっつける必要がありますね」
「そうで――ん?」
私は自信満々に頷く。
「だとすれば!彼とガーネットを結婚すれば、我が国との交流はスムーズにいくと思うのですよ!」
「いや、あの、ちょっ、ちょっと王女様?」
ならば――
「そうと決まれば、早速ガーネットの両親に話を通してきますわ!!」
「おい王女ぉぉっ!?」
そう言って私は、ガーネットのご両親に直接知らせに行ってきました。
……のちに、ここへ尋ねてきたサチさんが、『ひでぇ目にあった……』と、死んだ魚のような目をして呟くことになるのでした。
[忘れろそんな黒歴史]
「ただ今戻りました、お母様!」
「あら、お帰りライト。パーティーどうだった?」
パーティーから帰ってきたライトに、葵が感想を尋ねる。
すると、ライトは満面の笑みで答えた。
「えへへ……楽しかったです!お母様の料理に並ぶほどの物がごろごろありました!」
「あら?そんなこと言われると私、妬いちゃうわ~」
そう言いながら、葵はライトの頬をモチモチとつまむ。
「きゃ~!」
「ふふっ」
「……そうだ! お母様。実は親切なお兄さんが、色々なものをくれたんですよ!」
「まあ、そうなの? どうしてかしら……」
「何やら、『同じ国のよしみ』……と言っていました!」
「……おなじ、国の?」
ライトがそう言うと、葵は渡された品々を確認する。
すると――
「……え?」
そこには、日本で見慣れた商品がいくつも並んでいた。
「うそ……これ、日本の……?」
「あ、あとこれも……」
「えっ?」
ライトが差し出したのは――『異世界日記』という一冊の本だった。
「っ!?」
「これ、前にお母様が遠い場所で封印した物なんですが……どうやら、お兄さんに渡ったらしいので返しに来たんですよ」
「へ、へぇ……そうなんだ……」
葵は冷や汗をダラダラと流しながら、ライトを見つめる。
自分の黒歴史を、よりにもよって我が子に見られる……それはもはや、処刑と言っても過言ではない。
「そ、そうだぁ~ライト、パーティーで疲れているし、今日はもう休みましょう?」
「え?まだ大丈夫ですけど――」
「い・い・か・ら……ね?」
「えっと……はい。お母様?」
そうしてライトは、自分の部屋へ戻っていった。
葵も自分の部屋へ戻ると、『異世界日記』を机の上に雑に置き、そのままベッドへダイブする。
そして―――
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
葵は発狂した。
自分の日記を同じ日本人に見られたこと。
そして、それがよりにもよって自分の子供の手に渡ったことに――
(見られた……これ絶対見られた……絶対引かれた……何が『バルムンクと結婚しました♡』よ……浮かれすぎでしょ昔の私ぃ!!あばばば……死にたい。こんな辱め受けて、立ち直れない……ぶぶぶ……)
葵は『異世界日記』の内容を思い出し、自己嫌悪に陥る。
しかし――
ふと、葵はライトが持ってきた品々へ視線を向けた。
(……でも、ずっと欲しかった味噌も、ごまドレッシングもあるし……)
そして何より――。
(同じ日本から来た人……)
葵は、その人物に興味を抱く。
(一度、会ってみたいわ……)
一体、どんな人物なのだろう……
そう思う葵だった。
(でも……聞きたくない……! あの『異世界日記』の感想だけは……!)
[各国の幸の感想]
エレキトリック・ナノテク
「実に興味深い人物だ。特に、生野菜を美味しく食べられるようになるソース……いつか、その製法を解明したい……!まあ、お礼と言ってはなんだが、僕の最先端の戦闘スーツを見せてもいいが……」
オードブル・タラッサ
「うむ!とても真面目な少年だ!料理も凄いし、強さも凄い!いつか肩を並べ、共に戦いたいものだ!」
オードブル・リンピッド
「とても優しさのある少年でした……あと、あの照り照りした料理がおいしかったです」
ハイドロ・マーリン
「なんか俺と同じ苦労人の匂いを感じるな……。それはそれとして、肉が旨かったぜ。また食べたいな」
ボルケーノ・グランド
「大した人物だな!それでいて謙虚ときた。あの料理、酒があったら最高だったんだが……いつか一緒に飲み明かしたいものだな!」
スノーランド・エンペラー
「とても美味しい料理を作る人!いつか、ウチの国に来てほしい!」
スノーランド・キング
「とても礼儀正しい子だったよ。あと、今は『ギンロウ』だったな。たまに里帰りしてもいいよ?」
スカイピア・ホーリー
「ああ、神の加護が二つもある子ですね。とてもいい子でしたよ?『シュガー』の他にも『ソルト』にも歓迎されそうです……え?今後も加護が増える……って?―――ちょっと全員会議ぃぃっ!!」




