第八十五術 パーティーが終わるまでのひと時
あの後、色々な人たちと出会い、会話を楽しんだ。
そして次に始まったのは――どうやら、魔物の素材の競りが始まるらしい。
確か、狩ってきた魔物の素材にGを掛けるんだっけ?
相当Gが動くぞこれ……
俺はその様子を観覧する。
そして――案の定、会場は熱狂に包まれた。
「ではこの『スカーレット・サーペント』の鱗を『1万G』から!」
「2万!」
「5万!」
「10万!」
「100万!!」
「ひぇ……」
それはもう凄まじい勢いだった。
誰も彼もが『絶対に獲る!』という気迫をむき出しにしている。
そして、今回の目玉であるブラックドラゴンはというと――
「では今回の目玉、『ブラックドラゴン』の各種セットを『100万G』から!」
「110万!」
「200万!」
「500万!」
「1000万!」
「5000万!!」
どえらい額を聞いた……
最終的には、なんと『1億G』で競り勝った。
い、一億……やばすぎるだろ……
その後は使用人たちが会場の片付けをしてくれるというので、俺は部屋へ戻ることにした……
あ、そうだ。
「そういえば、他に国がまだあったような……」
「ん?ああ、『レオンガル』と『バハムート』ですか?」
「ああ、それそれ。その国はいなかったんですけど、来なかったんですか?」
「来なかった……というより、招待すらしていません」
「え」
「あの国はあまりいい影響を受けませんので……他種族のパーティーですので、人間至上主義の人は呼んでいません」
「は、はぁ……大丈夫なんですかそれ?」
「大丈夫です。何かあれば――剣でひねりつぶします」
「物騒!?」
マスカが可愛らしい笑顔でとんでもなく怖いこと言ってる!?
「ところで、サチ様はどこか行かれるんですか?」
「え、そうだな……折角だし、『トランザ』へ行ってみようかと……丁度作ってもらいたい物もありますし」
「そう、ですか……寂しくなりますね」
「……」
マスカが、少し寂しそうな表情を浮かべる。
そうだ……
「あの、俺『転移魔法』を持っていますので、良かったら、たまに手紙を書きませんか?」
いつでも会えるけど、こういう形で繋がっておくのも悪くない。
「っ!それはいいですね!それなら、唐揚げ……いや違いました。互いの現状を把握できますね!」
「……」
いま唐揚げって言いそうになったよな……
もー、食いしんぼさん。
俺は生暖かい目でマスカを見つめる。
その後、ベッドへ戻り――朝までぐっすりと眠るのだった。
◆
翌朝、マスカに渡す調味料を色々と準備していると、ルーシーさんがやって来た。
「少しいいか?」
「あ、ルーシーさん。どうしましたか?」
「ああ、先ほどの競りのGの鑑定が終わったのでな……どうか受け取って欲しい」
「そうですか、ありがとうございます」
そう言うと、ルーシーさんは大量の袋を俺へ手渡した。
「王都への手数料などを差し引いて……全額、『2億G』だ。受け取ってくれ」
「ハッ……」
思わず変な声が出た……
に、2億……サラリーマンが必死に働いても、そう簡単には到達できないほどの金額じゃないか、これ……
「他の素材も高額だが、『ブラックドラゴン』の素材がかなり人気でな……セットということもあって、結構な額になった」
「そ、そうですか」
ブラックドラゴン……想像以上に価値が凄いんだな……流石、Sランク。
前のムーンビーストとは違うか。
「あ、そうだ。これに、色々な調味料があるのでよかったらどうぞ」
「おお、すまないな。王女様はサチ殿の料理に感心していてな……これでまた旨い飯にありつける」
「ははは、そう言ってもらえると幸いです」
こうして、Gを受け取り、ルーシーさんに荷物を渡した後、出発の準備をする。
◆
「では、行きますね」
「はい、今回はありがとうございます。久しぶりにサチ様の料理を堪能することができました!」
「ははは、俺もマスカが元気でよかったです」
そう言い、マスカと握手を交わす。
「じゃあ、皆さん、また会いましょう!」
「元気でね~!」
「はい、ご武運を!」
別れの挨拶をすると、銀瓏と麒麟さんが歩き出す。
俺たちは王都を離れ、次の目的地へ向かう。
『さて……次はどこに行くのだ?』
「『トランザ』に一度寄ろうと思ってるんだ。ちょうど『クリムゾン』で作って欲しいものがあるし……」
『ふーん……そうか、いいだろう』
「ちなみに、どんなものを作るの?」
「折角だし、『BBQコンロ』を作ってもらおうかな」
「『バーベキュー』?……何それ?」
BBQは、こっちの世界にはまだ馴染みがないのか……
「簡単に言うと、直火で網に乗せた肉とかを焼くんですよ。炭火の香ばしい香りが出て、旨そうと思うんですよね……」
「へー……」
『ふむ……それはいいな。早く着くのがよさそうでな!』
「え?―――うおっ!?」
すると、段々二人の速度が上がっていく。
「お、お前ら!楽しみにしてるのは分かるが、ちょっとスピードを落とせ!?」




