第八十三術 各国との交流②
会場を見て回っていると、そこにはドワーフのような、金髪と立派な髭を蓄えた人物がいた。
ガンロックさんとはまた別のドワーフだな……
「マスカ、あの人も王族?」
「はい、あの方は『ボルケーノ』の王族『ボルケーノ・グランド』様です」
「へー……ボルケーノってドワーフが多いんですか?」
「そうですね……あそこは武器製造が盛んな国でして……文字通り、物作りに命を懸けている方が多いんですよ」
なるほど……聞けば聞くほど、職人魂が強い国なんだな。
そう思っていると、マスカがグランドさんへと歩み寄る。
「こんにちは、グランド様。今日はパーティーへご参加していただき、誠にありがとうございます」
「おお、マスカット様か。こちらこそ、パーティーに参加させてもらってありがたいの。ところで……今回はいつにも増して、ご馳走が旨いの!それにこのソース……肉と一緒に食えばかなり旨い……!」
「ふふ……そうでしょう。なぜなら、私の――友達である、サチ様がこの料理を作って頂いたのです!」
「なに!サチだと?」
すると、グランドさんが驚いた顔をする。
「たしか、最近Sランクの冒険者になったというあの?」
「え?あはは……そうです」
「Sランクになるだけでも大したものなのに、こんな料理まで作れるとは……将来安泰だな!」
――バシッ!
「おうふっ……」
グランドさんから思いっきり背中を叩かれる。
なに?なんなの?それがドワーフ式挨拶??
「それにしても、この肉は何の肉だ?こんな上品な肉は初めてだ」
「ああ、それは『ブラックドラゴン』の肉です」
「そうか……ブラックドラゴンの……えっ?」
思わず、グランドさんはマスカへ顔を向ける。
「ぶ、ブラックドラゴンといえば、あのSランクの?」
「はい」
「ま、まさかそんな代物を食べていたとは……恐れ多いわい。しかし……」
――ハムッ
「んん……!フォークが止まらん……」
「そうでしょうそうでしょう……サチ様の料理はどれも見たことの無い料理なのですよ……!」
マスカが、食べ続けるグランドさんに満足そうに頷く。
確かに、ブラックドラゴンの肉はうまいな。銀瓏たちが目の色を変えるわけだ……
「にしても……ブラックドラゴンを狩るとは、やるなぁ」
「えっと……それはその……銀瓏たちが……」
「ん?……ああ、あのドラゴンか……それなら納得だな」
グランドさんは、銀瓏たちを見つめると、少し頷いた。
「あと、この肉もいいが、この煮込んだ肉もいい。トロトロしてて、唇でも噛めるほど柔らかい!」
「ああ、煮熊ですね。タレをしみこませた肉が旨いんですよ~!」
「うむ!これは酒が欲しくなるわい!」
その後も、グランドさんと料理についてあれこれ話しながら、俺たちは別の場所へ向かうのだった。
◆
さらに会場を回っていると、そこにはエルフのような長い耳を持つ、黄緑色の髪の女性がいた。
その女性は、俺たちには目もくれず、黙々と野菜を食べている。
あの人は……?
「……なんか、妖精の国にいそうな人だな……」
「ん?……ああ、あの人は……!」
「えっ?知り合い?」
なんだか、ガーネットさんが知っているような感じがしたので聞いてみる。
「うん、あの人は『フローラル』の王女『フローラル・クライ』様だよ」
「へー……というか、何か詳しいですね」
「えっと……私の出身、『フローラル』なんだよね」
「まぁ……」
「そうなん?」
ガーネットさんの出身って『フローラル』なんだ……なんか意外だ……
「……っ!」
あ、どうやら俺たちの存在に気がついたようだ。
「あら……皆様、こんにちは」
「こんにちは、クライ様。パーティーは楽しめてますか?」
「ええ……とても」
そう言いながら、クライさんは頬に手を添え、料理を見つめる。
「それにしてもこの料理……とても野菜が美味しく感じますね。このソースが決め手なのでしょうか?」
「ああ、棒棒鶏の……そうですね。ゴマダレのお陰で野菜が美味しくなっているんですよ」
「そうなのですか。このようなものがあるのですね……」
まぁ、それは今俺にしか作れないけど……
「あら?もしかして、ガーネット?久しぶりですね」
「は、はい。お久しぶりです……」
「聞いたわ。あなた、魔賢者になれたのですね……我が国の王女として誇らしいです」
「いや……あはは……」
そう言われると、ガーネットさんの顔が少し赤くなる。
「それで……あなたがガーネットと組んでいる?」
「あっはい!『自由の食旅』のリーダー的な感じの……『酒森 幸』です」
「そうなの……えっと、もしかして――『彼氏』?」
「えっ」
「ちょっ!?」
「わぁ……!」
クライさんがトンデモない事を口にしたので皆驚く。
「ち、ち、ち、違うから!?まだ幸とはそういう関係とかじゃないから!!」
「まだ?……それってゆくゆくはってこと?」
「そっ!?そういうことじゃないから!!もう!!」
「でも、貴方のお母さまから、『いい人出来た?』って聞いていましたけど……」
「ぐっ……!そ、そこ突っ込まないでよ……!」
段々とタジタジになるガーネットさん。
なんか可愛いな……
「ああもう!この話、藪蛇だから無し!無しっ!!」
ガーネットさんは必死にこの話を逸らす。
「あらら……怒らせちゃいましたか……」
「ははは……」
そんなガーネットさんを見て、クライさんは苦笑する。
「そうだわ。折角なので、私の国で造られた『石鹸』をどうぞ」
「あ、はいどうも」
そう言って、袋に詰められた石鹸を受け取る。
……ほのかにいい香りが香る。これは花?
「良い匂いがしますね……花の香り?」
「そうです。私の国で育った花のエキスで造られた石鹼です。ご婦人に人気なんですよ」
「へー……」
と言うことは、美容関係の物が盛んなのか……
じゃあ俺も――
「じゃあ俺も出しますので、ちょっと待っててください」
「?」
俺は『等価交換』で洗顔クリームを数個錬金する。
「では、俺からはこれを……」
「まぁ、変わった形ですね……」
「これは主に顔に使うもので……洗顔クリームと言うんです」
「まぁ……!ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」
そう言って、クライさんは洗顔クリームを受け取る。
これはシミや毛穴の汚れを落としたり、うるおいを保ったりする効果がある洗顔料だからな。
美容に気を使っている人なら、きっと気に入ってくれるだろう。
「ふふ……お互いに良い物を交換できましたね」
「そうですね」
その後も、他愛のない話をしながら、俺たちは再び会場を見て回ることにした。




