第八十二術 各国との交流①
「色々な人がいるな……ん?」
会場を回っていると、そこにパソコンのようなものを持った白髪の人物がいた。
何やらブツブツと独り言を呟いている。
「このソース……なんだこれは、どれも見た事のない成分があるな。なんだ?油、卵、ゴマ……乳化剤?なんだそれは知らないぞ……!」
「なんだあれ……」
なんか研究者みたいな感じだが、あれも一応王族なんだよな……?
「ガーネットさん、あの人は……?」
「多分……『エレキトリック』の人だと思うの。あの見たことの無い魔道具はきっとその国で造られていると思うけど……」
「あの方は『エレキトリック』の王子、『エレキトリック・ナノテク』様です」
すると、マスカがスッと現れる。
「おお、マスカ。ところで、あの人王子なんだ……科学者みたいなコート羽織っているけど」
「はい。彼は『エレキトリック』での技術がこの国で一番と言われているのですよ」
「へー……」
「最近では、確か―――『MI』という魔道具を作成したとか……」
「え、『MI』?なにそれ?」
「『Magical Intelligence』……人間たちが頭を使って行う『考える、学ぶ、判断する、言葉を理解する』といった知的作業を、魔道具で再現する技術やシステムの総称さ……またの名を――『魔導知能』ともいう」
すると、先ほどブツブツ言っていた人が現れ、『MI』について話す。
いやそれ……
(え……『AI』やん!?)
まんま『AI』の説明に俺は驚く。
そっか……魔道具といえど、こっちの世界だと機械みたいなもんか……さながら異世界版『AI』というわけか……
「自己紹介がまだだったね……僕は『エレキトリック・ナノテク』。魔道具が発展した国の王さ。そしてこっちが……」
[はい、こんにちは]
「うおっびっくりした!?」
ナノテクさんの耳に付いているパーツが動くと、女性の機械的な声が聞こえた。
「すごい……これ魔道具?」
「ああ、彼女は僕が作り上げた『サポートMI』の『ウィザード』。様々なことを支えてくれる魔道具さ」
[こんにちは、今日の天気から、毒見まで対応可能な『高性能サポートMI』の『ウィザード』です]
「お、おう……そうなんだ。よろしく」
ちょっと、ここの世界の魔道具……俺の世界より高性能じゃないか?
「えっと……俺は『酒森 幸』で……」
「私は『フラム・ガーネット』よ」
「そして、あっちで食べてるのが、俺の『契約獣』の『銀瓏』と『麒麟』さんです」
「へー……あれが……」
そう言うと、ナノテクさんは銀瓏たちをじっと見つめる。
[分析――銀色のドラゴン、『二つ名』『光輝なる白銀龍』、金色の一角獣、『聖獣』『ユニコーン』を確認しました。]
「ふーん、噂通りの大物だね」
「え?噂?」
「ああ、なにやら最近ドラゴンと聖獣を契約したSランクの冒険者がいるって聞いていたが……君達のことだったんだね」
うわ……もうそこまで届いてんのかよ……
「にしても……この白みがかったソースは興味深い。肉もそうだが、生野菜も合う……」
「ああ、ゴマドレのことですか?」
「なに?なんだ、その『ごまどれ』というものは?」
「えっと……これですね」
そう言って、ゴマドレを取り出し、ナノテクさんに見せる。
「これが『ゴマドレ』……!食用植物油脂、しょうゆ、砂糖、醸造酢、ごま、しいたけエキス、食塩、卵黄/香辛料抽出物、アミノ酸、キサンタンガム、ステビア……なんだその聞いたことの無い成分は……!興味深い!」
「そうでしょう、そうでしょう……サチ様の調味料はそれは魔法のようなものなのです」
マスカが誇らしげな顔をしながら頷く。
「これはぜひとも分析して作りたいな……!生の野菜がこんなにも美味しくなるとは……!」
「あの~良かったら、まだありますので、良かったらどうぞ……」
「なに、いいのか!」
ナノテクさんの目がキラキラと輝き、見つめる。
……折角だし、ゴマドレの他にドレッシング渡すか。
「はい、どうぞ」
「おお、すまない……『シーザーサラダ』、『オニオン』、『ゴマ油&ガーリック』……どれも見たことの無いものだ……!これ全部生野菜のソースか!」
「はい、濃厚なものやさっぱりしたものまでありますので、好きなように使ってください」
「うむ……ありがたい」
ナノテクさんはにっこりとした顔で礼を言う。
「「……」」
――ジー……
「はっ!……えっと、使ってみます?」
「はいはい!」
「私もです!」
マスカとガーネットさんが食べたそうにこちらを見つめていたので、ドレッシングをかけてあげることにした……
「んー!この白いソース、濃厚で野菜の苦みが打ち消してくれてます!」
マスカは『シーザーサラダドレッシング』をかけて食べる。
「うんうん、このごま油っていう香ばしさとニンニクの旨味が野菜を美味しくさせるわ!」
ガーネットさんは『ゴマ油&ガーリック』をかけて食べる。
……二人ともはかなり好評だ。
さて、ナノテクさんと挨拶したし……次行ってみようか。
そう思い、俺たちは料理を食べながら次の場所へ進んでいく。
◆
「『MI』……凄かったね……」
「ああ、まさか異世界で『AI』みたいなものがあったなんてな……」
さっきのナノテクさんの発明に驚きつつも、食べ進んでいくと――
「うまい!」
「っ!?」
「うわ!?なに!?」
突然、耳に大声が響く。
向くと、そこには耳にヒレのようなものがついた青肌の二人の人物と、バンダナを巻いた人物がいた。
「うまい!うまい!うまい!!」
(うるせぇ……)
「お、お兄様……ここは会場ですので、声の質量は……」
「うむ!失礼した!これほど旨いものを喰ったことが無いから、思わず声にでてしまった!すまない!」
な、なんか暑苦しい人……人?だな。
「えっと……あの人は?」
「あの人は『オードブル』の最下層の統治している魚人……『オードブル・タラッサ』様でその妹の『オードブル・リンピッド』様、最後にバンダナの人は『オードブル』の一階層を統治する『ハイドロ・マーリン』様です」
「へー……」
「っ!」
すると、さっきから『うまいうまい』と言っていた人物――タラッサさんが、こちらに気づいた。
そして、こちらへ駆けてくる。
「うむ!君は見たことない人物だ!俺は『オードブル・タラッサ』!君は?」
「えっ、あ、おう……『酒森 幸』です」
「えっと……私は『フラム・ガーネット』です」
「うむ!そうか、わかった!タチにガーリックだな!」
「ちげーよ全然!!」
どう聞き間違えたら、そんな間違いにするんだよ!?
「おい、タラッサ……!たくっ、すまねぇな。こいつ、すぐ人の名前間違えるから、気にしないでくれると助かる」
「うむ!不甲斐ない!」
「自信満々に言ってんじゃねぇ……」
バンダナの人物が呆れたように言う。
「おっと、俺は『ハイドロ・マーリン』だ。よろしく、サチ、ガーネット」
「お、お兄様……すみません、うちのお兄様が……私はお兄様の妹『リンピッド』です……」
「ああ、えっと……よろしくお願いします……」
どうやら、この人にとっては日常茶飯事らしい。
なんだこいつ……
「にしても、今日の料理は旨いな!思わず声に出てしまったぞ!」
「その癖、治んねぇのかよ……」
マーリンさんが呆れたようにツッコむ。
「それにしても、確かに今回は旨いな……初めて食べるものばかりだ」
「ああ、よかったです。気に入って貰えて……」
「ん?もしかして、お前が作ったのか?」
「ああ、はい。流石にあの量は無理ですので、シェフに手伝ってもらいましたが――」
「なんと!」
「うおっ!?」
急にタラッサさんの顔が目の前まで接近してきて、思わず驚く。
「あれほどの料理を君が作ったのか!」
「え、ええ……まぁ、提案して作ったのは俺ですけど……」
「うむ!あれほどの料理をできるとは流石としか言えないな!是非とも、俺の国に招待したいものだ!」
「俺の国……ということは、『オードブル』の?」
「ああ!俺の国はダンジョンになっていて、最大五階層で一階層ずつ街が広がっている!」
話には聞いていたが、やっぱり一階層ずつに街があるのか……
「だが、第二階層、第三階層、第四階層の長達は諸事情により出れなくてな!今回、参加しているのは俺たち三人だけだ!」
「まっ、こっちの事情もあるんでな……気にしないでくれると助かる」
「ああ、はい……」
その後も、俺たちは他愛のない話をしながら、別の国の王族たちが集まる場所へと向かうのだった。




