第七十九術 王都観光
翌朝、簡単な食事をマスカたちだけでなく、城の使用人や兵士たちにも分けてあげた。
使用人たちも手伝ったから、全員に行き渡ることができてよかった。
後、兵士たちもあまりの旨さにいっぱい感謝を貰えた。やっぱり、こう感謝されるとうれしい……
そうして食事を終えた俺たちは、門の外へ向かう。
銀瓏と麒麟には、『魔術協会』で買った『ドロップバック』の上位品『アイテムポーチ』を渡す。
これは『ドロップバック』よりも、さらに多くの物を収納できる品物らしい。
結構高かったけど、麒麟を櫛で梳かした時に取れた抜け毛と交換してもらった。黄金の毛だから、凄い興奮してたな……あの店主。
「これに魔物の肉を狩って入れろよな。ほどほどでいいからな?せめて、このポーチに収まるぐらいにな?」
『うむ、わかった』
『それでは、行ってまいりますね』
そう言うと、銀瓏と麒麟は大地を駆け、走り去っていった。
「さて、俺たちはさっそくこの王都を見て回りますか」
「はい!ではこちらへ♪」
そう言ってマスカに案内され、俺とガーネットさんは王都の街へ繰り出した。
◆
王都を見て回ると、『トランザ』とはまた違った賑わいが耳に入ってくる。
「へー……やっぱり『トランザ』と同じような感じで賑わっていますね」
「うふふ……そうですね。でもここは『王都』です。ここではこの国で一番の物を取り揃えていますから」
「そうなんですね――あ、そうだ」
「ん?」
俺はふと、足を止める。
「どうしましたか?」
「せっかくだし、前に行ったダンジョンの買い取り済ませておくか……『魔術協会』でやっていなかったし……」
「まぁ、それはいい考えです!私もサチ様の『ドロップ品』が興味があります!」
「じゃあ、早速『王都』のギルドで買い取りしてもらいましょう」
そういうことで、俺たちはギルドへ向かうことにした。
◆
『王都ギルド』
「やぁやぁよく来たね~!ここのギルドマスター『ゴール・トリバー』だよぉ」
出迎えたのは、白い毛並みの小柄な犬――見た目はポメラニアンに近い、そんな女獣人だった。
「よろしくお願いします、ゴールさん……ところで、王都なのにその名前がないですね」
「うーん……ここはちょっと特殊で、ここって王が管理しているから、名前も王が授かっているから、王都のギルドでは、普通の名でやっているの」
「な、なるほど……」
確かに、パシフィストが二人いると、家族みたいな感じになるもんな……
その混乱を避けるためにもあるのか……
「それにしても……まさか王女様直々にくるなんて……ゴールちゃん、最初は家族連れだと思ったよぉ♪」
「「ぶふっ!?」」
ゴールさんのとんだ発言に俺とガーネットさんは噴き出した。
「まぁ!そんなに風に見えます?」
「うんうん!意外とあのお二人、お似合いかもしれないよぉ?」
マスカが照れだしたぞ……!
「そ、そんなことより!買い取りをお願いしたいのですが!?」
俺はゴールさんのペースに乗せられないように、話題を素早く切り替える。
「あー……そうなの?わかった!じゃあ、こっちに来て素材を出してってね~」
「あぁはい……」
俺は作業台に、これまでのドロップ品を出す。
――ドォォォンッ!!
そこには、皮や鱗、牙などが山のように積まれていた。
「わ、わぁお……流石にここまでとは、ゴールちゃんびっくりしちゃうな……」
あまりの数にゴールさんの声が震える。
「凄い数……流石です!」
「いやまぁ、凄いのは銀瓏と麒麟なんだけどね?」
あいつら調子乗ってバンバン敵を薙ぎ払うからな……
「にしても……『ドレイク』、『ホワイト・エティン』、『ドラゴンタートル』……どれも、高ランクの素材ばっかだねぇ~……いや~ギルドマスターとして鼻が高いよ!今後ともゴールちゃんと仲良くしたいね」
「ははは……ど、どうも」
「……うん、わかった。これを全て換金となると、三日ぐらいはかかるし……そうだ!丁度城でパーティーもあるし、これを機に他の国へ献上して、Gと取引しても良いよね?そうなると、期間が長くなるけど……」
「え?それはいいんですが……それってありなんですか?」
「うーん……まぁ、普通はしないけど、こんだけ珍しい高ランクの素材があるから、他の国だって喉から手が出るほど欲しいものがあるからね~」
「そ、そうなんだ……」
こりゃ荒れそうだぞ……王族主催の競りなんて、とんでもないGが飛び交いそうだ……
「さてと……換金の件はこれで大丈夫ですが……次はどうしますか?」
「折角だし、王都が開いてる店に行ってみましょうか。色々な物もみたいですし」
「それはいい考えですね!では、私が通っている店に案内しましょう!」
俺たちはマスカの案内と共に、王都の街へ歩き出した。
◆NOside
広い草原中――
銀瓏と麒麟は魔物を狩るため、広い大地を駆けだしていた。
『……時に麒麟よ』
『なんですか?』
『高ランクの魔物というが、どうせなら歯ごたえのあるものを狩りたいな。例えば――Sランクとか』
『それはいいですが……生憎ここは『パシフィスト』……精々Aランクかそこらだと思いますが?』
『うむ……そうか……』
そんなことを話していると――
一匹の巨大な影が、銀瓏と麒麟を覆った。
『『!!』』
そのまま巨大な影は、二人の頭上を飛び去っていく。
『……見たか麒麟』
『ええ……見ましたよ。あれは―――』
『『上等な肉!!』』
お互いの顔を合わせ、歓喜する。
『よし追うぞ!!なるべく傷は最小限に!』
『そして迅速に畳みかける!』
そう言って、二人は巨大な魔物を追いかける。
二人の頭上を覆った巨大な影――その正体は、漆黒の鱗を輝かせる魔物だった。
◆
『食器店 シャイン』
そこには、貴族が使いそうな高級な食器が所狭しと並んでいた。
「ここは美しい模様が描かれた食器がたくさんあるんですよ」
「うわ~すげぇ……」
「これ、お客さんが来た時にいいかも~!」
確かに、このティーポットは凄い高級感がある。
これなら雰囲気も楽しめそうだな。
「皿もいいな……これでスパゲッティでたべるといいかも……」
「「……スパゲッティ?」」
あー……そうか、二人は知らないか……
「小麦で作った麺を茹でて、ソースを絡めて食べる料理だよ……そうだ!せっかくだし、今日のお昼は『スパゲッティ』にしようか?」
「そ、それはいい考えです!私もその『すぱげってぃ』とやらに興味があります!」
「私も!きっとおいしいんだろうな~」
「ははは……じゃあ、これ買ったら、昼飯にしましょう」
ということで、俺は数個セットの食器を買って、早速それを料理に使うことにした。
結構したけど、買い取り分が来るし、大丈夫だろ。
マスカに庭を使っていいと言われ、早速その場所で料理を開始する。
「使うのは……黄色の麺と、これは……ソースでしょうか?」
「見たことない袋だね」
「ああ、それは有名店のパスタを再現したソースだ。うまいぞ~」
「『ぱすた』?『すぱげってぃ』とは何が違うのですか?」
「えっ……んーそうだな……『パスタとは小麦粉を練った食品全体の総称で、スパゲッティはその中にある「細長い麺」のひとつ』……らしいよ」
「まぁ!パスタとは奥が深いのですね!」
俺は『全知魔書』でチラ見しながらマスカに答え、早速パスタを茹でる。
お湯に塩を振り、沸騰させる。
沸騰したらパスタを入れ、くっつかないようにかき回しておく。
やわやわもいいが、アルデンテが好ましい……
ゆであがったら、水気を切って、その間茹でたソースを袋からだして、掛ける。
今回は『ボロネーゼ』だな。
そして最後に……温玉を乗せれば―――完成!『ボロネーゼ(温玉乗せ)』!!
「はい、どうぞ」
『『おお!』』
出来立てのボロネーゼを出すと、マスカ達は歓喜の声を出す。
……ところで――
「何故、ルーシーさん達がここに?」
「その……とても香ばしい臭いに……」
「えへへ……」
どうやら、ソースの匂いにつられて、寄って来たそうだ。
ルーシーさんとレットさんだけじゃなく、外にいた兵士までも……
しょうがないので、この人たちの分も作ることにした。
「では、失礼して……あむっ」
ソースと絡んだパスタをマスカは一口頬張る。
―――すると。
「っ!?お、美味しい!!」
「んん!肉の味がこの麺とよく絡んで美味しい!」
「卵も合わされば、さらに味が深まります!」
マスカもガーネットさんも、あまりの美味しさに食べ進める。
だろうな~なんたって有名店のソースだからな。
旨いに決まっている。
「う、うめー!なんだこの料理!」
「麺もいいが、ソースもうめー!肉に味が染み込んでうめ~!」
「こんな食事は俺初めてだ!!」
「うむ……今日も旨いな……」
「このつゅるつゅる感……癖になりそう!」
他の人も喜んでいるな……あっそうだ。
「これ一回かけてみてください。味に変化がでて旨いですよ」
「むっ?……サチ様それは?」
「『粉チーズ』と言って、チーズを粉末状にしたものです」
そう言い、マスカの皿に『粉チーズ』を振りかける。
それを一口食べる。
「んっ!?味が更に濃厚になりました!」
「……私もいい!?」
「お、俺も!」
「私も!」
「……私もいいだろうか」
「うおっ、すげぇ人気……」
マスカがあまりにも美味しそうな顔をしていたのでそれにつられて他の人達も粉チーズを要求した。
そして、食べ終わる頃には皆は満足そうな顔を浮かべる。
「これが『スパゲッティ』……ですか、こんなにも美味しいとは……」
「他にも『カルボナーラ』や『ペペロンチーノ』、『ナポリタン』もあるけど……それはまたべつの機会にしましょう……はい、食後の紅茶です」
「あ、ありがとうございます……んー……いい香りです。脂身のソースが洗い流れそうです。」
「ははは、そうですか」
俺は紅茶(砂糖、ミルク入り)を一口飲む。
ん~、買ったティーカップを使うと、豪華さが出ていいな……
というか――
「……ふふっ……皆口元にソースがついてるよ」
「えっ……あっ///」
鏡を見て、マスカは自分の口元についたソースに気づくと、顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
「うう……つい夢中で……」
「う、うむ……」
「ペロッ……まぁ、あんだけ美味しいんですからがっつくのは仕方ないですけどね……」
そんなことを話しながら、時間が過ぎていく。
すると、一人の兵士が俺たちの前に現れた。
「サチ様!いらっしゃいますか?」
「ん?はい、ですが……」
「ギンロウ様とキリン様が帰還されましたので、ご一緒に来てもらいたいのですが……」
「おっ、帰って来たのか……なら行くか」
俺たちは帰って来た銀瓏と麒麟を迎えるため、兵士と共に向かった。




