第七十五術 買い食いってテンション上がるな~!
『むっ……遅いぞ。いつまで待たせる』
「はいはい、悪かったって。ちょっと本を読んでたんだよ」
どうやら銀瓏は、待ち時間が長くて退屈していたらしい。
『次はどうしますか?』
「もうすぐ昼時だから、ここいらでなんか買って食べるか」
『うむ!そうだな!そうしよう!』
さっきまで不機嫌そうだった銀瓏が、一瞬で上機嫌になる。
……本当に現金なやつだ。
そんなわけで、ガーネットさんの案内で食べ物を売っている屋台へ向かった。
「いらっしゃい!コカトリスの丸焼きサンド、一つ500Gだよ!」
「おっコカトリスの丸焼きか……それを黒パンとはさんでるのか……」
見た目はケバブやバーガーに近いか……
「これ食べてみるか?」
「うん、いいよ!」
『いいですよ』
『俺は丸ごと食いたいぞ!』
「ま、丸ごとって……」
流石にそれは予想外だ。
取り敢えず、聞くだけ聞いてみるか……
「すみません、これください」
「良いよ!何個だ?」
「三個と……肉を丸ごと……」
「丸ご……そんなにかい!?」
店主が思わず目を丸くする。
「えっと……うちに食いしん坊な『契約獣』がいますので……」
「お、おう……そのドラゴンか……なら、全部で2万Gだな」
「け、結構するのね……」
「まぁ、Cランクだからね……結構な額になるよ」
トランザの買い取り金が大量にあるから大丈夫だけど………
とはいえ、銀瓏の食費だけで結構飛びそうだな。
――いや、本人が魔物を狩ってくるから、むしろ黒字になるのか?
そんなことを考えながら、俺たちはサンドを頬張る。
「……んー!皮がぱりぱりしてて旨いな!」
『少し味が物足りないですが、これはうまいですね』
「んー!美味しい!たまにはこういうのも悪くないね」
『うむ!主のと比べると雲泥の差だが、コカトリスの肉がジューシで旨い!』
麒麟も銀瓏も、すっかり俺の料理に舌が慣れてしまったらしい。
日本の調味料を知ってしまうと、この世界の味付けでは物足りなく感じるのも仕方ないか。
「フルーツ飴だよ。一個どうだい?」
「フルーツ飴!こんなものも売っているのか……!」
『フルーツ……!是非食べてみたいですね』
珍しく麒麟が興味津々だ。
――ということで、一人一つずつ買ってみることにした。
俺はリンゴォ飴、ガーネットさんは赤い果実の飴、銀瓏は紫色の房果実の飴、麒麟は南国の黄色い果実の飴だ。
――カリッ!
「ん!フルーツと飴の味が合わさって旨いな!」
「んー!甘酸っぱくていいね!」
『ほう……これはこれでいいな』
『黄色の果実の酸味と飴の甘みがいい感じですね』
その後も屋台を巡りながら、色々な料理を少しずつ味わっていった。
「ふぅー……結構食べたな」
「買い食いってついつい食べ過ぎちゃうよね……」
『うむ、どれも食ったが……やはり主が作る料理が旨いな』
『それは私も同感です』
「はは、そりゃどうも……」
食べ歩きも十分満喫したし、次は魔道具でも見ようかな。
「次は、魔道具とか見てみようか。もしかしたら、良い物があるかもしれないし……」
「そうだね、早速行こうか」
◆
魔道具を売っている場所へ行くと、そこには見たことのない道具が並んでいた。
「色々あるな……お、これなんだ?」
俺が手に取ったのは、一見すると普通のコップだ。
「おお、それは冷気の魔石を組み込んだ魔道具だ。飲み物を入れれば、暑い場所でも冷たいまま保たれる魔道具だ」
「へー……そうなんですか!」
こっちの世界版『保冷タンブラー』ってところか……
「へー……いいじゃない!これにお酒を注げば、きっとうまいんだろうな~」
「そうですね……おっ、逆のバージョンもあるのか。これなら冬場の時にも使えるかも……すみません。この二種類を四つずつください」
「おう!合わせて、100万Gだぞ!」
「うわ高っ!?」
魔道具ってやっぱり高いよな……日本じゃこういうの5~7千円かそこらだもんな……
あっ、そうだ。確かキョーヤ校長は確か―――
『そういう時は、高ランク魔物の素材と交換するのじゃ。生徒は素材が手に入り、お前さんは魔道具を手に入れられる。双方に利益があるじゃろ?』
……試す価値はあるか。
「……あの、この素材で交換できますか?」
「ん?素材か……そうだな、BかAランクの素材なら交換できるが……っ!?」
店主は袋の中を見た瞬間、動きを止めた。
「お、おい……この鱗って……」
「銀瓏の鱗です。お風呂で洗ってる時に時々抜けるので、集めてたんですよ」
「ギンロウって……そのあんたの隣にいるドラゴンか?」
「ええ、はい」
「マジかよ……ドラゴンはドラゴンでも、二つ名の個体のドラゴンだろ?これと交換でいいのかよ?」
学生の店主は引くような感じで言う。
「えっと、ダメでしょうか?」
「ダメッてわけじゃないが……むしろこっちが申し訳なくなるレベルだ……こんなの数枚でも当分暮らしていけるぞ」
そう言って店主は苦笑する。
「まっ、Sランク冒険者だとこれが普通何だろうが?」
「えっ、知ってるんですか?」
「ああ、もうここの噂になっているぜ?昨日ダンジョンを制覇したっていうパーティとな……」
「そ、そうですか……」
俺は思わず苦笑いする。
「ほら、受け取れ」
「ありがとうございます」
こうして保冷・保温の魔道具を手に入れた俺たちは、その後も商店街を見て回り、気になった魔道具をいくつか購入した。
◆
「明日は、いよいよ王都か……」
「私、王都なんて初めてだから緊張するな……」
『ふん、敵意を向けられたら、それまでだ。俺が軽く粉砕してやる』
「そういうの怖いからやめて……」
銀瓏が言うと、冗談に聞こえないから……
あ、そうだ!せっかく王都に行くんだから、手土産を渡したほうがいいな……
「折角だし、この世界じゃ高級って言われる『チョコレート』にしておくか……」
B社のチョコビスケットとか、アーモンドチョコ、ポッキーとか色々目新しい物がいいよな……
俺は色んなチョコ菓子を箱に詰め合わせ、国王に渡す準備をした。
なお、余った分は――
「これ、食べていいの!」
「もちろん」
『待っていました』
俺たちで美味しくいただきました。
さて、明日に備えて、寝るとしますか……
ふぁ~……明日は『パシフィスト』の国王に会うのか……一体どんな人なんだろうか……
そんな期待と少しの緊張を胸に、俺はゆっくりと眠りについた。




