第七術 コボルド退治
翌日、俺たちはギルドの掲示板の前で依頼を選んでいた。
「討伐……討伐……ん?『ギガフロッグ』……あの巨体相手はさすがに怖いな……」
あの巨大カエルを思い出して、自然と背筋が冷える。あれと正面から戦うのは、まだ無理だ。
すると、ガーネットさんが一枚の依頼書を差し出してきた。
「ねぇ幸。これなんてどう?」
「どれどれ……『コボルド退治』?」
銀瓏が横から覗き込み、淡々と説明する。
『コボルドか。ゴブリンに似た群体型の魔物だな。単体は弱いが、数で来る』
「なるほど……じゃあ、これで」
「そうね。この程度なら結界で十分対応できるわ」
こうして『コボルド退治』の依頼を受け、現地へ向かった。
森の奥に入ると、そこには武装した犬のような人型魔物がうごめいていた。
『ギャッ……!』
『ギャギャ!』
「……あれがコボルドか」
「ええ。動きは単調だから、慣れれば問題ないわ」
銀瓏が不満げに鼻を鳴らす。
『おい、早く始めろ』
「いや、こっちは初戦なんだって!」
『まったく腰抜けな主だ……なら―――』
「え、おい、ちょ……何すんだよ」
次の瞬間、銀瓏が面倒くさそうに息を吸った。
―――グォォォォッ!!
しびれを切らした銀瓏が雄たけびを上げる……ちょっと!そんなことしたらコボルドが気づかれるだろ!?
『『『!!』』』
あー……もうほら!気づかれたじゃん!
『これで戦うしかなくなっただろ』
「いや何てことしてくれてんの!?」
「取り敢えず、結界は張っているから安心してね、じゃあ銀瓏と遠くからみてるから」
「いやえっちょっ!?」
銀瓏とガーネットさんは少し離れた安全圏へ移動していった。そして俺はコボルドたちが俺の前に取り囲まれる。
「ほんとに俺だけかよ……!」
コボルドが一斉に距離を詰めてくる。
『ギャッ!!』
『ギャギャッ!!』
「くっ……やるしかない!」
俺はダガーを握りしめて突っ込む――
「無理無理無理無理!!やっぱ怖い!!助けてぇぇ!!」
ガキン!ガキン!
「『…………』」
数秒で怖気づいた……やっぱ怖いもん!!命のやり取りがこんなに怖いんだもん!!だからそんな引く顔しないで!!
『何してんだあいつ……』
「しっかりして幸!『錬金』でイメージするのよ!!」
「い、イメージつったって……今あるのは……」
そのとき、視界に土が目に入った。
「土……そうだ!」
俺は手を翳し、土を対象に『錬金』を使用する。イメージは―――『剣』!
「いけっ!!」
――ビュンッ!!
『がっ!?』
よし!土の塊で剣を生成して、コボルドの一体を放って、重傷を負わせた。
これが……錬金の戦い方……
「そうそう、いい感じよ幸!『個体能力』は、ようは『これができて当然』だと思っておけばいいのよ!」
「『できて当然』!?」
「そう!だから固定概念にとらわれないで好きなようにしなさい!」
「好きなようにって言ったって……」
『ギャッ!!』
『ギャッギャッ!!』
「ひえぇぇぇ!?うおあぁぁぁぁ!!」
―――バシュッバシュッバシュッ!!
次々と土の剣を生成し、がむしゃらに放つ。森には土塊の弾幕が走る。
数分後――
コボルドの群れはすべて倒れていた。
「はぁ……はぁ……やっと終わった……」
『ふん、まぁまぁだな』
「まぁまぁって……」
「今ので、少しは上がったみたいね」
「少し?どれぐらいなんですか?」
「こんな感じよ」
と、ガーネットさんが俺のステータスを見せる。
【名前】 酒森 幸
【年齢】 20
【性別】 ♂
【職業】 Fランク冒険者
【レベル】 6
【ステータス】
・体力 120
・魔力 180
・筋力 100
・俊敏性 80
・耐久性 80
【スキル】
【契約獣】『光輝なる白銀龍』
【個体能力】
・錬金術
【錬金】物体を『転移』『合成』『魔力』の転換ができる
【】錬金術で剣を作り、発射する。
と、6までレベルが上がった……ん?何これ?錬金術の所に変なものがあるな……
「あの……個体能力の所に何か新しいのがありますが……」
「ん?……ああこれ、個体能力のスキルよ。さっきコボルドにいっぱい放ったでしょ?それが自分だけのスキルになるの」
『ん?よく見ると、名前がないじゃないか』
「え?名前つけんの?なんで???」
「魔法だっていつも唱えているでしょ?あれと同じよ」
「へー……要は必殺技か……」
何かこういうのは子供の時にテンション上がるな……どうせ言うんだったらならカッコいいのにしようかな……
「うーん……じゃあ『錬金術:剣』と書いて、『ソード・オブ・アルケミー』にしよう!」
「なんだか『雷電剣魔法』みたいな名前ね……いいんじゃないかしら」
すると、【】の部分がさっき言った名前が浮かび上がってきた。
【錬金術:剣】錬金術で剣を作り、発射する。
「へー……こんな感じなんだ……ちなみに、ガーネットさんのスキルってどんな感じなんですか?最初に見た時には無かったので……」
「え?あー……うん……いいけど」
そう言って見せてもらうと……
【個体能力】
・結界術
【周囲結界】自分や相手の周りを透明な結界を囲みBランク以下の敵を侵入不可させる。最大で50m。
【絶対防御結界】透明な板を出現させ、防御する。Sランクの攻撃でもビクともしない。
【結界装備】結界を自身に身にまとう。範囲は狭いがその分強固である。
【反射結界】相手の攻撃を反射させる結界を出現させる。反射できる回数は一回まで。
と、このようになっていた。おお……結構種類があるんだな……
『多いな……』
「……そんなにじろじろ見ないで///」
顔を真っ赤にしてそっぽを向くガーネットさん。
「いや普通に強いですよ」
「うるさい!昔のノリなの!!」
ガーネットさんの顔が更に赤くなっていた。
「も、もう!!そんなことより、倒したんだから早く依頼達成の証拠を持って帰って完了するよ!!」
「あ、はい」
勢いでごまかしたガーネットさんを尻目にし、さっさとコボルドの証を持ち帰ってギルドへ戻っていくのだった……
「はい、依頼を確認しました。完了依頼3000Gです!」
「はい、どうも」
俺は受付の人から依頼金をもらうと、『あっ』と何か思い出したか、俺たちに伝える。
「そういえば、サチさん。ギルドマスター、バロンさんがあなた達に用があると、お話を伺っています」
「え?バロンさんが?」
「はい。どうやら緊急な依頼のようでして……」
「?」
「……?」
『行ってみたらどうだ?』
銀瓏がそう言い、俺たちはバロンがいる部屋までいくのだった。
部屋へ入ると、そこにはバロンさんが座っていた。
「きましたか……ではこちらにおかけになってください」
「あ、はい……」
バロンさんに言われるがままに、席に座ると、バロンさんが真剣な様子で俺たちを見る。
「さて……ここに来ていただいたのは、他でもありません……あなた達にしかできない、依頼があります」
「え?俺たちにですか?」
「はい、そしてその依頼に応えてくれますと――――あなたのランクをCにまで引き上げることができます」
『ええ!?』
突然な急展開に俺たちは驚愕の声を出してしまった……一体、どんな依頼なんだ?




