第六十八術 VS S+ランク 裁王マルバス
『『S+』!丁度歯ごたえのいい強敵が欲しかったのだ!』
――ビュンッ!
そう叫ぶや否や、銀瓏は翼を大きく広げ、一直線にマルバスへと突撃する。
『ほう……ドラゴンか!――こい!』
――ガシッ!!
互いの両腕がぶつかり、そのまま力比べへともつれ込む。
『ぐぐっ……!』
『ぬぅぅ……!』
一歩たりとも譲らない拮抗――しかし。
『チェアアアッ!!』
『うおっ!?』
マルバスが豪快に銀瓏を投げ飛ばした。
ち、力強い……!あの銀瓏を投げ飛ばせる怪力だなんて……!
『ふんっ、なかなかやるではないか』
『貴様もな……どれ、本気で相手にしよう!』
銀瓏は人獣形態から巨大な獣形態へと変化し、翼をはためかせながら猛攻を仕掛ける。
――キンッ!
――ガキンッ!
鋭い爪と拳が何度もぶつかり合い、激しい火花を散らす。
互角――そう呼ぶに相応しい激戦だった。
『っ!』
『むっ……!』
マルバスは攻撃をかい潜ると、そのまま後ろ回し蹴りを叩き込み、銀瓏を吹っ飛ばす。
――ズドォォンッ!
『銀瓏!』
『むぅぅ……流石『S+』!そう来なくては腕が鈍ってしまうな!』
壁へ叩きつけられた銀瓏だったが、それでも不敵に笑った。
『っ……!』
今度は麒麟が黄金の雷を纏いながら駆け出す。
『ほう……!今度は聖獣――ユニコーンか!』
『――『雷槍』っ!』
角へ収束させた雷を槍のように放ち、そのまま突撃するが――
――ガシッ!!
『っ……!』
『ふっ……』
なんと、雷を纏った角を、マルバスは素手で受け止めた。
「なっ……!」
「嘘っ!?」
『――ふぅん!』
そのまま麒麟を豪快に投げ飛ばす。
「麒麟さん!」
『くっ……!なんてパワー……ウロボロス戦以来の強敵ですよ……!』
『ふっ……さて、次はお前達か?』
「うわっこっち見た!?」
鋭い視線が俺たちへ向く。
『さぁ……いつでも来るがよい』
「っ……!ガーネットさん、サポートお願いします!」
「幸!?」
俺は飛び出し、『フォース』と『ウィズ』を『錬成』し、盾と剣を作り出した。
『ほう……来い!』
「っ!うおぉぉっ!」
――キィン!
――カァンッ!
剣と爪が激しくぶつかり合う。何とか食らいつくものの、実力差は歴然だった。
……レベルが違う。こっちが不利になってきてる……!
『くっ……!『風斬撃』!』
『ほう……』
風を纏う斬撃をマルバスに向けて放つ。
『この魔力……流石だと言いたいが―――』
マルバスは口を大きく開けると、何かを溜め出す。
『……ガァァッ!!』
――ズドォォンッ!
咆哮だけで風の斬撃が吹き飛ばされる。
嘘だろ!?
「なっ!」
『ふっ……この程度、我にとって児戯に等しい!』
鋭い爪が俺に襲い掛かって来た。
すかさず、盾で防御するが―――
『『絶対防御結界』!』
――ガキィィンッ!
『ぬぅ!?』
透明な結界がマルバスの攻撃を弾いた。
「ガーネットさん!」
「ふふっ……まだ、私達がいるわよ!」
『ほう。やるな、魔法使いよ――むっ……!』
『『突撃龍』!!』
銀瓏の巨体を活かした回転突撃。
『ぬぅぅっ……!』
マルバスは真正面から受け止め、そのまま弾き返す。
その隙に――
『『雷帝剣』!』
『うおっ!?』
麒麟の角に収束された雷の剣をマルバスに振り下ろされる。
――ズドォォンッ!
マルバスは防御して受け止めるが、爆煙が立ち込める。
「どうだ?」
煙が晴れると、そこには多少傷ついたマルバスが立っていた。
タフすぎんだろ……!
『……ほう、やるではないか。冒険者たちよ』
『ふん、お前もな』
『私の攻撃を受けても立ち上がるとは……久しいですね』
「流石S+……最高火力の『契約獣』達の攻撃を受けてもあれぐらいしか効いてない……」
『さて、少々お遊びも済んだ――ここからは、我も本気を出すとしよう』
そう言うと、マルバスの口から膨大な魔力が集まり始める。
『『っ!!』』
『『獅子王砲』!!』
――ズドォォォンッ!!
口から強力な極太の光線が放たれる。
「っ!―――『絶対防御結界』!!」
ガーネットさんが、全力で結界を展開してマルバスの攻撃を防ぐ。
「ぐっ……うぅぅ!!」
「ガーネットさん!?」
ガーネットさんが辛い表情で耐える。
そりゃそうだ、S+の強力な攻撃を真正面に耐えているんだ。相当な負荷がかかっている。
「大丈夫……私だって……私だって!自由の食旅の一員なんだから―――これくらい、なんてことないわ!!」
―――ズドォォォンッ!!
爆煙が辺りを包む。
『ふむ……っ!』
煙が晴れると、そこには―――無傷の俺たちが立っていた。
「ふぅ……ふぅ……!」
『なんと!我の一撃を防ぎ切ったというのか!―――面白い!もっとその実力を見せるがいい!』
「ガーネットさん……!」
「大丈夫……すこし、防御に使った魔力が多かっただけだから……!」
『ふん……そこで休んでいろ!』
銀瓏は翼を広げ、マルバスへ飛び出し、交戦する。
『ガーネット、手を』
麒麟が優しく声を掛ける。
『あれほどの防御です。負荷が残っているはずです』
「えへへ……ごめんね」
そう言うと、麒麟に手を見せる。
差し出された手には、赤く痛々しい傷が残っていた……ガーネットさん、こんなになるまで守ってくれたんですね……
『……っ!』
――パァァ……!
麒麟の身体が神々しく輝く。
すると、傷はみるみる塞がっていった。
「うわー……!これって『回復魔法』?」
『ええ、『聖獣』ですので、これ程度の傷なら問題ありません』
「すげぇ……」
麒麟の力に感心していると、ガキンッ!と巨大な音が聞こえた。
思わず、振り向くと――銀瓏とマルバスの激闘はなお続いていた。
『ふぅん……中々、やるな!こんなに血が騒ぐのは『ゼパル』以来だ!』
『我もだ……お前達のような強敵、心躍る戦いは久しい!』
二人は同時に最大級の魔力を溜め始める。
―――っ!
『ガァァッ……!』
その瞬間、俺は気付いた。
そうか……あの技って、口へ魔力を集める間だけ、完全に無防備になるんだ……
そのことに気づいた俺はある考えを出す。
『『獅子王砲』!!』
『『銀凍龍の息吹』!』
――ズドォォォンッ!!
互いの交戦がぶつかり合い、大気が物凄く震えた。
「ぐっ……銀瓏!」
爆発が二人を包み、不安が積もる……
すると―――
『――フンッ』
銀郎が煙の中から、飛んで出てきた。
そして、俺の方に戻っていく。
『奴め、なかなかの強敵だ。あれだけ攻撃したのに見切り、相殺する……強い、しかし厄介だ』
『……なぁ、俺作戦を考えたんだけど……』
『なに?』
「えっ本当?」
「ああ」
俺は思い付いた作戦を伝えると、皆驚く。
「ええ!?幸、それは無茶すぎない!?」
『お前がそんな賭けにでるとは……驚いたぞ』
『しかし……下手をすれば』
「分かってる――こう見えても場数だけは踏んでるよ。多少……いや、めっちゃ怖いけど、ガーネットさんだって命懸けで俺たちを守ってくれた。俺も覚悟の1つや2つ、決めないとな!」
バクバクと心臓が鳴り、恐怖で鼓動が早まる中、銀瓏は俺の覚悟に賛同する。
『……ふっ、いいだろう。主の作戦に手を貸そう』
「……わかったわ、幸。だけど――危険だからこれを……!」
ガーネットさんは杖を翳すと、俺の体に結界が包まれる。
「『結界装備』……気休め程度かもしれないけど、頑張って!」
「ガーネットさん……はいっ!俺、やりますよ!」
俺は覚悟を決め、マルバスの方へ見る。
そこには、煙が晴れ、俺たちの動向を見守っていた。
『……会議は終わったか?――なら、我から行くぞ!!』
マルバスは動き出し、接近する。
「よし、麒麟さん!銀瓏!頼む!」
『ああ!』
『ええ!』
二人が左右から同時に飛び出す。
『むっ……!二人同時か!』
『ふんっ!』
『はぁっ!』
猛攻を受けるマルバス。
『ぬっ……!』
二人はマルバスを着々と追い詰め、二人が一直線に集まり、技を放とうとする瞬間、マルバスも口に魔力を溜めだす。
「っ!今!」
その隙を見逃さず、俺は一直線に駆けた。
『っ!』
「たあぁぁっ!」
俺はマルバスに攻撃を仕掛ける。
しかし――
『成程、あの二体は囮……本命は我の攻撃の隙を突いて、お前が仕掛けるのが作戦か――だが、甘い!』
「ぐっ!?」
マルバスは即座に見抜くと、途中の攻撃をやめ、俺の攻撃を回避と同時に首を掴み、地面へ叩きつける。
「幸!」
『惜しかったな……!我がそんな不意打ちでやられる魂ではないわ!』
そう言い、再び俺に向って口に魔力を溜めだす。
「―――それはどうかな?」
『っ!』
俺は『ウィズ』をバズーカ砲へ『錬成』し、銃口を真正面からマルバスの口へ向ける。
「っ……!」
俺はバズーカ砲のトリガーを押し続け、連続で砲撃を浴びせると、マルバスの口を爆発させる。
『ぐがっ……!?』
「っう!!」
口の中で爆発が起き、マルバスが大きく怯む。
牙は何本も砕け、口元から鮮血が滴っている。
俺は転がりながら離脱し、大声で叫んだ。
「銀瓏!麒麟さん!今だ!!」
『っ!!』
二人はすでに最大出力まで魔力を溜め終えていた。
『『銀凍龍の息吹』!』
『――『天滅』!!』
銀白の極光と神罰の雷が、無防備となったマルバスへ同時に放たれる。
『っ―――』
回避する暇もなく、二つの必殺技が直撃した。
――ズドォォォォォォンッ!!
轟音とともに、玉座の間全体を揺るがすほどの巨大な爆発が巻き起こった。




