第六十七術 温泉!飯!階層ボス!?
温泉へ到着した俺たちは、簡単な仕切りを設け、それぞれ二組に分かれて入浴することにした。
俺は銀瓏と、ガーネットさんは麒麟と一緒だ。
「さて、入る前に……ネットにいれた卵を温泉に沈めておくか」
『おお!その『温泉卵』とやらを作るのだな!一体どれくらいで出来る!』
「うーん……低温でじっくり火を通すから、30分以上かかるな……」
『むっ……長いな……』
思っていた以上に時間がかかると知り、銀瓏は露骨に不満そうな顔をする。
「そう言うなよ銀瓏。後で、旨い飯作ってやるから我慢しろ」
『むぅ……主がそう言うなら仕方ない……肉が入った料理にするのだぞ』
「はいはい、分かっているよ」
そう言いながら互いに体を洗い終え、ゆっくりと温泉へ浸かる。
熱めの湯が、これまで戦い続けてきた体の芯まで染み渡っていく……あ゛あ゛~いい湯だ……!
「ふぁ~……!いい湯だな~……今までの苦労が消し飛ぶよ……」
『ふむ……確かに、これはいいな。風呂とは違って少々温かすぎるが、これはこれでいいな』
「さすがドラゴン……この温度じゃ、温かいで済むのな……」
たっぷり温泉を堪能した後は体を拭き、冷えた飲み物を手に取る。
風呂上がりと言えば、やっぱりこれだ!―――『フルーツ牛乳』!
「んっ……プハァ~!!うめぇ!」
『うむ!コーヒー牛乳もいいが、果実が入った乳もよい!』
「本当、美味しい~!」
『私はコーヒー牛乳の方が好きですね』
「おっそう?俺もどっちかと言うと、『コーヒー牛乳』がいいけど、これもたまにはいいんだよな~!」
温泉を満喫した後は、いよいよ昼食だ。
今日は出来立ての温泉卵を使った料理にするが……
『今日は……よし!今回は『焼き鳥丼』にしようか!』
香ばしい焼き鳥にとろっとした温泉卵が合わさって旨そうだな~!
よし、早速作るか!!
まずギネロを少し長めに切る。ざっと4cmぐらいかな?
次にコカトリスの肉を一口大に切る。
熱したフライパンにギネロとコカトリスの肉を焼いて、焼き目をつける。
焼き目を付けたら、E社の『焼き鳥のタレ』をかけて、絡める!
全体に絡んだら、炊いたご飯の上にいれ、最後に温泉卵を乗っければ……
――完成!!『温玉乗せコカトリス丼』!!
「出来たぞー!」
『『おおー!!』』
完成した丼を皆の前へ並べ、早速いただく。
『『いただきます!』』
――ハグッ……
「んん……!旨い!!」
市販のタレで作っただけなのに、旨すぎる!
コカトリスのジューシな肉質に香ばしいタレ、濃厚な卵が合わさってご飯が進む!!
『んん!旨いぞ!肉と卵の相性が抜群ではないか!』
『このギネロもタレと卵に絡んで美味しいです!』
「と言うか、全部が美味しい!!」
皆は夢中になって丼をかき込んでいく。
まだ温泉卵が余っているし、そのまま食べてもらおう。
「これ食ってみてくれ。温泉卵に麺つゆベースの出汁を入れた奴だ」
『ほう……どれどれ?』
そう言い、皆一口食べた瞬間――
『ん!!卵の濃厚さと汁の出汁が合わさってうまい!』
「んん~これいいわね!美味しい」
『ええ、とても上品な味ですね』
如何やら好評のようだ。初めて作ったからこれはうれしいな!
食事を終えて後片付けを済ませると、銀瓏が立ち上がった。
『よし、飯も食ったし……この階層のボスを倒すぞ!』
「おー!」
「もう五階層か……終わりが見えたな」
『ですね』
十分に英気を養った俺たちは、ボス部屋へ向かった。
◆
ボス部屋へ足を踏み入れると、中央にはグツグツと煮えたぎる巨大な熱湯池があった。
「ここがボス部屋……なんか湯が真ん中にあるけど……」
『……ふむっ。来るぞ』
すると、湯面が激しく泡立ち始める。
そして―――
――ザッバァァンッ!!
「うおっ!」
『ほう……!』
湯柱を上げながら姿を現したのは、巨大な亀の甲羅を背負い、竜を思わせる頭部を持つ巨大な魔物だった。
『グギャァァァァッ!!』
「あれは……!」
「『ドラゴンタートル』よ!背中の甲羅は鋼鉄以上の硬さを誇るドラゴンで『A+』ランクよ!」
「こいつもA+かい……ええい!行くぞみんな!」
そう言い、戦闘を開始する。
『グギャァァッ!』
先に動いたのはドラゴンタートルで、俺に向って突進仕掛ける。
「っ!『錬成』!」
俺は『フォース』を『錬成』させ、盾を造り、その突進を真正面から受け止める。
『っ!』
「ぐっ……!」
俺だって場数を踏んできた……これぐらい!
『ふんっ!』
――ドコッ!
『がっ!?』
その隙に銀瓏が仕掛け、ドラゴンタートルのお腹を鋭いアッパーで当てる。
すると、巨体が大きく浮いた。
「よし……はぁっ!」
――シュッ……ドコォォンッ!
俺は次に『モーニングスター』へ『錬成』し、ドラゴンタートルのお腹を目掛けて、勢いよく当てる。
『グゥォッ……!?』
――ドスゥゥンッ!
吹き飛ばされたドラゴンタートルは、背中から地面へ叩き付けられた。
『っ……!』
『ふむ……流石は『A+』と言ったところか、復帰が早いな』
『っ!!』
立ち上がったドラゴンタートルは、大きく口を開く。
――バシュゥゥゥン!!
高圧水流のブレスが一直線に放たれた。
「うおっきた!」
「『反射結界』!」
――カキィィンッ!!
『っ!』
それをガーネットさんは透明な結界を出現させ、ドラゴンタートルの光線を跳ね返した!
『ガァッ!?』
跳ね返った一撃をまともに受け、ドラゴンタートルが大きくよろめいた。
「うおっ……凄いです、ガーネットさん!」
「ふふーん……!今よ!」
『……っ!』
――バチバチ……!
麒麟の角に角へ神々しい雷光が集まっていく。
『―――『天誅』っ!』
『っ!』
――バシャァァァンッ!!
天より極太の雷が降り注ぎ、ドラゴンタートルを撃ち抜いた。
『ゴ……ガッ……!』
そのまま巨体は崩れ落ち、光となってドロップ品へ姿を変える。
「ふぃ~……何とか討伐できた……」
『むぅ……止めが刺せなかったな……』
『ぶい』
得意げに胸を張る麒麟。
あんた何歳だよ……
「それにしてもドラゴンタートルか……噂じゃ、素材は精力剤になるらしいわよ」
「へー……」
いわばスッポンとかそんな感じか?
『さてと……次が最下層だったな。ここまで来たのだ、きっとSランクに違いないぞ』
「え、Sランク……」
「こっちだってSランク級の『契約獣』がいるのよ。大丈夫よ!」
「だといいんだけどな……」
そうして俺たちは五階層を突破し、最後の六階層へ転送された。
◆
『魔術協会ダンジョン 最下層』
転送先は、古代文明の遺跡を思わせる広大な空間だった。
その中央には、一つだけ豪華な玉座が置かれている。
「あれって……椅子?」
「待って!誰か座っている……」
ガーネットさんの言葉に目を凝らす。
そこにいたのは――
王冠を戴き、豪華な衣装を纏った、二足歩行の獅子だった。
『……』
「な、なんだあのライオン?あれがボス?」
「そう……かも?」
『――待っていたぞ、冒険者たちよ』
『『!!』』
すると、その獅子は、静かに口を開いた。
……あれなんだろう、嫌な予感がする
『よもや……たった四人の精鋭が最下層まで辿り着く者が現れるとは思わなかったが……それでもなおのこと!強敵ということだ!』
――バサッ!
獅子は立ち上がり、背中のマントを脱ぎ捨てる。
『我が名は―――『裁王 マルバス』!我に挑む冒険者の諸君よ、その実力を思う存分見せよ!!』
そう言うと、ライオンの魔物――マルバスは大声で威嚇する。
――くっ、咆哮だけでも足がすくんでしまう……!
「ガーネットさん……あのマルバスのランクって……」
「……っ」
すると、ガーネットさんの顔がみるみる青ざめていく。
「ランクは……『S+』……!」
「マジか……!ゼパルで薄々勘付いてはいたが……!」
だが、実際に目の前へ現れると、その圧倒的な威圧感は想像を遥かに超えていた。
――今、生死を懸けた最終決戦の幕が上がろうとしていた。




