第六十六術 四階層のボス『ホワイト・エティン』 第五階層 熱水地帯
翌朝、目を覚ました俺たちは朝食を済ませ、第四階層のボス部屋へ向かった。
……まだ吹雪は続いているんだな。おかげで視界が真っ白だ。
「よし、ここのボスをちゃちゃっと倒して、次に進むか……」
『うむ』
俺たちは警戒しながらボス部屋へ足を踏み入れるが……辺りを見回しても、それらしい姿はどこにもない。
「ん?妙だな……一向にボスが現れない……?」
その時──
──ゴゴゴゴッ!
突然、大地を揺るがす轟音が響き渡る。
「な、何だぁ!?」
「──っ!幸、あれ見て!」
ガーネットさんが指した方向を見ると──そこには、雪山そのものと見間違うほど巨大な白い巨人が、真紅の瞳を妖しく輝かせながら、俺たちを見下ろしていた。
な、何じゃありゃ!?
「あれなに!?」
「間違いない……『ホワイト・エティン』!A+ランクの魔物だよ!」
「ここに来て『A+』!?」
『ほう、ここでA+か……面白い、相手にとって不足なし!行くぞ!』
銀瓏は豪快に翼を広げ、一気に空へ舞い上がる。
「銀瓏!」
『では、私も』
「麒麟さんまで!?」
金色の毛並みを輝かせながら、麒麟も一直線にホワイト・エティンへ向かっていく。
「もーどいつもこいつも戦闘狂なんだから!──行きますよ、ガーネットさん!」
「ええ!」
俺たちも武器を構え、戦闘を開始した。
『『龍王・華炎』!!』
燃え盛る炎を纏った銀瓏の爪が巨人へ襲い掛かる。
対するホワイト・エティンも巨大な拳を振り下ろし、真正面から迎え撃つ。
──ガキィィィン!!
鋼鉄同士がぶつかり合ったような轟音が響き、凄まじい衝撃波が雪原全体へ広がった。
『っ!ほう……A+と言えど、あの巨体から繰り出される膂力は伊達ではないな』
『……っ!』
──トッ!
その隙を逃さず、麒麟が宙へ躍り出る。
角へ雷光を集束させ、それを一本の雷剣へと変化させた。
『『雷光斬』!!』
──ズァァンッ!!
『っ!?』
背中へ叩き込まれた一閃に、ホワイト・エティンが大きく体勢を崩す。
今のうちに俺は自身の中での高火力な攻撃をぶつける。
「『火炎爆弾』!!」
――ズドドドンッ!
『ウィズ』をバズーカ砲へと『錬成』し、巨大な炎弾が炸裂し、ホワイト・エティンの全身を爆炎が包み込む。
『―――っ!』
怒り狂った巨人が俺へ向かって巨大な腕を振り下ろした。
「うぉっ!やべ――」
「『絶対防御結界』!」
――ガキィィンッ!
『っ!?』
透明な結界が攻撃を完全に受け止め、ホワイト・エティンの拳を弾き返す。
「おお!ガーネットさん、ありがとうございます!」
「お礼はいいよ!……それより、今の内だよ!」
『ふんっ!なかなかやるではないか……見違えたぞ!!』
『むっ……!」
銀瓏は再び炎を纏った爪を展開し、麒麟は黄金の雷を槍へと収束させる。
そして、両者はそのままホワイト・エティンへ突っ込んでいく。
『『龍王・華炎』!!』
『『雷槍』!!』
――ズガァァァンッ!!
炎と雷―――二つの必殺技が同時にホワイト・エティンを貫いた。
『―――っ!?』
巨体には大きな風穴が二つ穿たれ、そのまま雪山が崩れ落ちるように全身が崩壊していく。
「ふぃー……なんとか倒せた……」
『うむ、少しは歯ごたえがあったな』
『まぁ、今の私たちでは遠く及ばなかったのですが……』
「だろうな」
なんせ、こっちはSランク級の実力が二体いるんだ。
A+とはいえ、苦戦する相手ではなかっただろう……
『さて、この階層のボスを倒したのだ。次へ行くぞ』
「はいはい」
こうして俺たちは四階層を突破し、五階層へ転送された。
◆
転送された俺たちが着いた先は―――
――シュー……シュー……
熱い蒸気が絶え間なく噴き出す巨大な洞窟だった。
「蒸し暑……!」
「ここって……『熱水地帯』?」
「何、熱水地帯って?」
俺の疑問に、ガーネットさんが説明してくれる。
「『熱水地帯』は地下から湧き出る熱湯の蒸気で満たされた場所よ。湿度が高くて暑いけど……こういう場所って、大抵温泉があるの!」
「『温泉』!!」
思わず声が弾む。
異世界の温泉なんて、これはぜひ入ってみたい。
『温泉?なんだそれは?』
「簡単に言えば、色んな成分が溶け込んだ天然のお風呂だよ。温泉か……温泉と言えば『温泉卵』がいいよな~」
『ピクッ』
銀瓏の耳がぴくりと動く。
あっ銀瓏、温泉卵の部分に引っかかって来たな……
『なんだそれは……旨いのか?』
「ああ、うまいぞ。醤油や麺つゆを少しかけるだけでも最高だし、色んな料理にも使えるぞ?」
『ふむ……その『温泉卵』も食べたいからな……すこし探して見るのもいいな』
そう言うと銀瓏は目を閉じ、周囲へ魔力を広げる。
『……むっ。セーフティエリアの近くに湯溜まりがある。あれが温泉かもしれんな!』
「おお、そうか!じゃあ行ってみようぜ!」
こうして俺たちは温泉を目指し、銀瓏と麒麟の背へ乗って走り出した。
◆
『ゴゴゴッ……!』
途中、岩石でできた巨大な蛇が何体も地面から姿を現す。
「何あれ!?」
「あれは『ゴルロック』!B+ランクの魔物よ!」
「び……『B+』!?」
A+より若干ダウンしているが……それなりに強いはずだろうな。
『ゴゴゴッ!!』
『ふんっ、B+だろうが、今の実力で倒せるはずだろう!行くぞ!!』
そう言うと、各自戦闘を開始する。
「ふんっ……はぁっ!」
――ドコォォンッ!
俺は『フォース』を『モーニングスター』へ『錬成』させ、勢いよく振り抜き、鉄球が直撃したゴルロックは、岩片を撒き散らしながら粉々に砕け散った。
「『隕石魔法』!」
――ヒュゥゥ……ドドドッ!!
ガーネットさんが降らせた岩石の雨が、ゴルロックたちを次々と押し潰す。
『ふんっ!』
――ドコッ!!
銀瓏は力いっぱいに拳を振りかざし、ゴルロックの体を粉砕する。
『……シッ!』
――バコォッ!!
麒麟の後ろ蹴りが別の一体を吹き飛ばし、そのまま砕け散らせた。
そうして、大して時間もかからずゴルロックを倒すことに成功した……
――着々と魔物に対する対処が慣れてきたな~……
「にしても蒸し暑い……みんな水分補給しろよ?」
『うむ……しかし、この水は味が濃くてうまいな』
銀瓏はライチ風味の塩入りドリンクを一気に飲み干す。
これ上手いんだよな~……塩味とライチの酸味が合わさってごくごく飲める。
「んっ……ぷはー!生き返る~……汗かいた時に最適な飲み物ね……」
『……っ、ええ。しかし、これだけ蒸し暑いと、早く体を洗いたいものです』
「だよな~……よし、もうすぐ着くはずだから、頑張っていこう!」
そうして数々の魔物を倒しながら進み続け――
ついに目的地へ辿り着く!
「着いたー!温泉!!」
「わー!」
岩に囲まれた天然温泉から、白い湯気がゆらゆらと立ち上っていた。




