特別術 箸休め その2
[破壊神とバイコーン]
これは、幸たちが『ダークエルフの村』から旅立って数日たった出来事……
『んっ……プハァ~!うめぇな!やっぱりサチから貰った酒がうめぇ~!こんなんじゃここの『エール』じゃ満足できねぇよ!』
森の奥でひっそりと、晩酌を楽しんでいると、バイコーンに誰かの声が聞こえてくる。
『バイコーンよ……聞こえているか……』
『んむ?そ、その声は―――『ソトール』様!?』
その声に気づいたバイコーンは上を見上げる。
『何やら、お前が和気藹々と何かに勤しんでいたのでな……少し、声を掛けてみた。すまない』
『いえいえ、何を仰いますか。我らが尊敬する神に謝る必要ありません』
『そうか……で、何を飲んでいるのだ?瓶……のようなものが見えるが……』
『これは、とある少年が供え物として頂いた酒です。この世界じゃ滅多に見かけないものとなっておりますゆえ……』
『なに?……ふむ、そこまでお前が言う代物なのか……』
『でしたらどうぞ。ソトール様も一杯いかがでしょうか?』
『なに?いいのか?』
『ええ、我らが信仰している神に供えるのは必然、どうか、受け取りください』
『ふむ、そうか、感謝する』
そう言うと、バイコーンは酒にいれた容器を置いて祈り、光と共に上へ登っていく。
『……ほう、これが……どれどれ?』
――コクッ
『っ!?』
一口飲むとソトールの目がかっびらいた。
『な、なんだこの酒は……今まで酒を飲んではいたが、こんな美味な酒は初めてだ……!バイコーン、これは……!?』
『確か『焼酎』といって今回は『麦焼酎』を供えました。何でも『スッキリ飲みやすい』と……』
『確かに、ほのかに香る麦がスッと透き通っている……こんな酒があったのか……!』
『いやー他にも、『芋焼酎』も飲んでみましたが、これも美味でして!芋由来の甘い香りと濃厚なコクが喉に効いて……」
『なんと!そのようなものまであるのか……!』
ソトールは幸が錬金で取り寄せた酒が相当気に入られたようだ。
『ふむ……!こんなにうまい酒が造れるとは……名を聞かせてもらっていいか?是非とも、知っておきたい』
『ふむ、ソトール様が仰るなら……名は『サカモリ・サチ』、このエルフの国の価値観を変えた人物だ』
『成程、『サカモリ・サチ』か……ん?』
その名前にふと、ソトールは思い出す。
『……確か、その名前は――この世界に巻き込まれた名前ではないか!』
そして、そのことを思い出したソトールは畳みかけるように、考え込む。
『待てよ?確かその件はガーシュに頼ませていたが……その人物に、何か妙なものはなかったか?』
『妙とな?はて……あっ、そういえば、あのサチという少年にはガーシュ様の『加護』が小さいですがありました』
『……そうか、出来ればそこら辺を詳しく――聞かせてもらわないか?』
ソトールはニコッと笑いかけ、バイコーンに事情を聞く……たが、その顔にすこし、青筋ができているのは、バイコーンが知る由もない……
[コーヒーは苦いよ]
とある、朝……何時ものように銀瓏たちに食事を準備をする……今日は軽めにパンと目玉焼き、ウィンナーのセットだ。
あとそれと……
コポポ……
『ん?なんだ、その闇の魔法で作られた色をした液体は……』
「あ?これか?これは『コーヒー』っつって豆から作られた飲み物だ。そのままだと、苦くて飲めないけど、ミルクと砂糖を入れれば、苦みと甘さが丁度良くて美味しいぞ」
と言っても、ペットボトルのコーヒーにガムシロップと牛乳を混ぜただけなんだけどね。
『ふーん……どれ、どんな味か試してみる』
「はいはい……」
銀瓏は甘党だから、ミルクと砂糖多めだな……ほい、出来た。
「はい、どうぞ」
『ふむ……ん!前に風呂上りに呑んだ奴と似ているが……苦みが少しこっちが強いな……だが、飲めなくはないな』
「あーコーヒー牛乳な。そっちの方が苦みが少ないし、旨いからな~」
「なに飲んでるの~」
「あっおはよう、ガーネットさん。コーヒーを飲んでいました。飲みます?」
「おっ、コーヒー!いいね~じゃあ『ブラック』で」
「『えっ』」
「?」
ブラックって……そのまま!?ガーネットさん、ブラックいけるんですか?
「えっと、ガーネットさん。コーヒーってブラックいけるんですか?」
「ん?いけるわよ?……昔、まだ『魔使い』だった頃、徹夜で魔術関連の本を見ていた時にいつもブラックのコーヒーを飲んで暗記していたわ……そこで何度も飲んでいる内に普通に美味しく飲めるようになったの」
「そ、そうなんですか……」
『おい、ブラックって……まさかとは思うが……』
「ああ、砂糖もミルクも何もない状態のことだ」
『正気か……!?俺でさえまだ苦いが飲める状態の物だったぞ!それを抜きにすると……』
「多分、銀瓏は悶絶するぞ――苦さで」
俺でさえ微糖までなら飲めるぐらいなのに……凄いな、ガーネットさん。
取り敢えず、朝飯が出来たのでそれぞれ準備した後、食べ始める。
「はむっ……っ!旨ーい!パンもそうだけど、目玉焼きと肉のような物が美味しいわ!そして―――」
――ゴクッ
「っはー……コーヒーも味がしっかりしてて美味しい……朝にはぴったりな食事ね」
『確かに!この卵の濃厚な味に肉のジューシーさが食欲をかき立てる!さっきコーヒーを飲んだが、一緒に食べるといつもよりおいしく感じるぞ!』
「だな……ハムっ!」
こうして、簡単な食事を済ませた俺たち。
にしても、ガーネットさんの意外な一面が見られたな……
[ハイエルフ、シャンプーの良さに絶頂]
幸が『ハイエルフの村』から旅立って数日……水辺でハイエルフの一人が、ペガサスを洗っている所だった。
「あの……ペガサス様」
『何かしら?』
「この『シャンプー』っていう物、凄い泡立ちですね……前に石鹸という物もありましたが、それと比べ物にならないほどの違いですね……」
『そうでしょー!これのお陰で、前より毛並みが綺麗になったの~本当、さっちゃんには感謝しかないわね~』
「……」
ハイエルフの一人が洗っている中、ふと、思った……『私も使ってみたい……』と。
「あ、あの……私も『シャンプー』を使ってみてもいいですか?」
『え?これ?……うーんたしかさっちゃんが言うには、『馬用』っって言ってたから、ハイエルフ達には使えないかも』
「そ、そうですか……」
『あ、そういえば!さっちゃんが旅立つ前に、他のハイエルフ達に『シャンプー』と『コンディショナー』をセコイアが貰っていたから、聞いてみるのもいいわね!』
「セコイアさんが……」
ペガサスを洗った後、ハイエルフは早速セコイアに聞いてみることにした。
「なに?サチから貰った『シャンプー』と『コンディショナー』を使いたいだと?」
「は、はい……ペガサス様も大変気に入っていたので……どんなものか確かめたくて……」
「うむ……」
セコイアは考える。
彼女は他種族を軽蔑する癖があるので、人間の幸から貰った物には懸念していた。
だが、彼女は幸の作った料理に絆されて、あの程度は了承することができるようになっていた。
だからこれも、凄い物なんだなと思っていた……なので―――
「……分かった。今日、洗浄場にこれらを設置してみるから、使っていいぞ」
「本当ですか!ありがとうございます!」
そうして、ハイエルフの風呂場に薬用石鹸類を置くことになった。
作りはシンプルで、木で出来た大きめな樽に水を入れ、魔法で温度調節するような形だった。
木で作られているため、火の加減に注意しなければならないが……長年魔法を扱う者だから大丈夫だろう。
「では早速……」
ハイエルフは身体を清めた後、早速シャンプー等を使ってみることにした……
「ふわぁぁ……頭がすっきりする~!」
「なにこれ!?髪が艶々してきた!」
「かゆかった身体がスッキリした!」
ハイエルフは初めての感覚に驚きつつも満喫する。
そして、風呂から上がった時には―――
「お待たせしました」キララーン……
「誰ぇ!?」
そこには髪が美しくなびいたハイエルフの姿がいた……
『あら~見違えるかのような見た目ね!』
「はい!シャンプーっていいですよね!これなら毎日洗いたいぐらいです!」
それを見たハイエルフ達は早速シャンプー等を使い始め、圧倒的なサラサラヘアーを獲得したのだった。
……後日、数週間で使い切ってしまった薬用石鹸を再び幸に連絡を入れるのはここだけの話。




